1.全塩基配列が決定されたバチルスハロデュランスの研究成果と工業的応用
(1)バチルスハロデュランスは、ヨーロッパと日本の共同研究により、既にゲノムの全塩基配列の決定がなされた枯草菌と親戚関係にあるため、ゲノム全体の類似性が高いと予想されていましたが、増殖に必須な僅かな遺伝子を除き、ゲノム上の遺伝子配列はバラバラで、枯草菌と大きく違っていることが、初めて明らかとなりました。
(2)バチルスハロデュランスのゲノムには、これまで報告されたどの遺伝子にも類似性を示さない、本菌独自の遺伝子と思われるものが全体の約20〜30%も存在し、新しい遺伝子源、情報源として今後のゲノム解析に大きく貢献すると考えられます。
(3)バチルスハロデュランスは、その他にも木材に含まれるキシランを分解し、製紙工場でパルプの漂白に用いられているキシラナーゼ等も生産する。しかしながら、これら有用酵素の生産性が低いため未だに工業化には至らない有用酵素が数多く存在しており、好アルカリ性バチルス属細菌の酵素生産メカニズムの解明が待たれているのが現状です。今回、好アルカリ性バチルス属細菌の代表種であるバチルスハロデュランスのゲノムの全塩基配列が決定されたことにより、酵素生産メカニズムの解明への道が開け、バチルスハロデュランスの更なる有効利用はもちろんのこと、本菌と類縁性の高い他のバチルス属細菌の生産する有用酵素の工業化に向けても多大なる貢献をすることは確実であると思われます。