大陸間をわたるオゾン汚染

-東アジアの大気汚染物質放出が地球温暖化を促進-

平成13年11月8日  
宇宙開発事業団   
海洋科学技術センター

 地球フロンティア研究システム(宇宙開発事業団と海洋科学技術センターの共同プロジェクト)の大気組成変動予測研究領域の秋元 肇領域長とオリバー・ワイルド゙研究員は全球三次元化学輸送モデルを用いて、東アジア・北米・ヨーロッパの北半球各大陸より放出される大気汚染物質から生成するオゾンが、大陸間を長距離輸送されることを明らかにした。
 その結果、特に東アジアから放出される大気汚染物質から生成するオゾンは対流圏上部に輸送され、偏西風に乗って容易に北米、ヨーロッパにまで到達し、温室効果を促進することが判明した。一方、地表に着目した場合、東アジアにはヨーロッパからオゾン汚染の影響がもたらされることが判った。
 この成果は、11月16日発行のアメリカ地球物理学会誌「Journal of Geophysical Research」に掲載される。

背景
 「気候変動に関わる政府間パネル(IPCC)」の2001年報告書では、対流圏オゾンが地球平均でメタンと同程度の放射強制力を持ち、北半球の大半の地域では大気の質の目標達成が脅かされかねないと述べられている(注1)。 また北半球については対流圏オゾンはCO2に次いで第2の温室効果ガスであり(注2注3)、さらにオゾンの放射強制力は地域によって大きく変わり、CO2のような長寿命の温室効果ガスと比べて排出量の変化に素早く応答する。
 しかし、これまで対流圏オゾンの北半球全域にわたる大陸間長距離輸送のメカニズムについては知られていなかった。

成果
 全球三次元化学輸送モデル(注4)を用いて、東アジア、北米、ヨーロッパの各大陸からの窒素酸化物、一酸化炭素、炭化水素の放出量をそれぞれ10%増加させたとき、大気中で生成されるオゾンが対流圏内のどこでどれだけ増加するかを明らかにした(図1)。

それによると東アジアの大気汚染物質を増加させた場合には、増加したオゾンは上空に効率よく運ばれ、偏西風に乗って北米、ヨーロッパに容易に輸送され、大きな温室効果をもたらすことが判った(図2注3)。一方、ヨーロッパの大気汚染物質を増加させた場合は、増加したオゾンは比較的低空を輸送され、東アジアの地表付近のオゾンを増加させることが判った(図3)。

問合せ先
地球フロンティア研究システム 合同推進事務局
担当:秋庭 Tel:045-778-5684(直通)
HP: http://www.jamstec.go.jp/frsgc/jp/index.html

宇宙開発事業団 広報室 Tel:03-3438-6107〜9  HP: http://www.nasda.go.jp/

海洋科学技術センター 総務部 普及・広報課 Tel:0468-67-9066