インド洋のダイポール現象がインド・モンスーンとエルニーニョ/南方振動の相関に与えるインパクトを解明

  平成13年11月29日 
宇宙開発事業団   
海洋科学技術センター

 地球フロンティア研究システム(宇宙開発事業団と海洋科学技術センターの共同プロジェクト)の気候変動予測研究領域の山形 俊男領域長とアショック・カルムリ研究員、管 兆勇研究員は、最近発見され注目を浴びているインド洋ダイポール現象(平成11年9月ネイチャー誌掲載)が、インドの夏のモンスーンの経年変動に与える影響について1958年から1997年の観測データ(参考1)及び大気大循環モデルを用いて調べたところ、その影響はエルニーニョが、インド・モンスーンに与える影響と相補的であることを明らかにした(図1)。この発見は、12月1日発行の米国地球物理連合の機関誌学会誌「Geophysical Research Letters(地球物理研究レター)」に掲載される。

背景
 不順なインドの夏のモンスーン(全インド降水量で代表)の研究からエルニーニョの大気側の現象である南方振動が前世紀の初頭に発見された。しかし、最近このインド・モンスーンとエンソ(エルニーニョ/ 南方振動)の相関が弱まり、謎とされていた。そこで、インド洋ダイポール現象(IOD)がインドの夏のモンスーンの経年変動に与える影響について1958年から1997年の観測データに基づいて調査をした。

成果
 インドの夏のモンスーン(参考2)がエンソ(エルニーニョ/南方振動)エル・ニーニョ/南方振動)と相関が低い(高い)時には、必ずインド洋ダイポール現象(IOD)との相関が高く(低く)なる。1990年代は顕著なダイポール現象が起きており、これがインド・モンスーンとエンソ(エルニーニョ/南方振動)(エルニーニョ/南方振動)の相関を弱くしていたことが明らかになった(図1)。インド洋のダイポール現象は対流圏の東西循環のみならず、南北循環にも影響する(図2)。特に正のダイポール現象はベンガル湾を中心としたインド北部に正の降水偏差をもたらすことが、地球フロンティア大気大循環モデルのシミュレーションから明らかになった(参考3)。一般にエルニーニョ時は、インド・モンスーンに伴う降雨量が減少するが、正のダイポール現象はこれを打ち消す働きがある(参考4)。インド-太平洋域における、エルニーニョ現象とダイポール現象という二つの主要な現象が、インド・モンスーンに伴う降雨に相補的に影響を及ぼすメカニズムが初めて明らかになった。これはインドはもちろんアジア・モンスーン諸国の短期気候変動の予測を著しく高めることになる。

 

問合せ先

地球フロンティア研究システム
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