図1の解説

図1a. アリューシャン低気圧(AL)の勢力が強い年の典型的な海面気圧の分布図

210日~312日の平均)

AL_ILシーソーに伴い、ALが強く、ILが弱い冬の様子。例えば、1980年初めから半ばにかけての典型的状態。発達したALが大陸からの寒気を強く引き出して北西季節風が強く、我が国は寒冬傾向。

図1b.アイスランド低気圧(IL)の勢力が強い年の典型的な海面気圧の分布図

210日~312日の平均)

図1aとは逆に、ALが弱く、ILが強い冬の様子。例えば、1990年前後の典型的状態。ALが弱く、大陸からの寒気の引き出しも弱いので、我が国は暖冬傾向。ヨーロッパは、海からの風が強まり、やはり暖冬傾向。一方、北米西岸は海からの南よりの風が弱まって寒冬傾向。

図1c.「大気の架け橋」の形成過程模式図

北太平洋上でアリューシャン低気圧(AL)の強弱に対応する循環偏差が1月にまず現れると(この図は平年より弱い場合で高気圧性偏差)、その影響が上空の大規模な波動(ロスビー波)として北米大陸に及ぶ。これに伴い、カナダ西部上空に低気圧性の、米国南部上空には高気圧性の偏差が各々形成される。2月になると、後者から別な波動が現れて、北大西洋(グリーンランドの南)に低気圧性偏差、ヨーロッパ上空に高気圧性偏差がそれぞれ形成される。北大西洋上空の偏差は発達して、海上のIL勢力を変化させる(この場合は強化する)。これにより、太平洋から大西洋への「架け橋」が完成する。

地上では「架け橋」に沿って、我が国周辺では北西季節風が弱まって暖冬傾向、ヨーロッパも海からの南よりの風が強まってやはり暖冬傾向。

ALが強くILが弱い場合は、偏差の符号(平年比で高気圧性か低気圧性か、あるいは、暖かいか寒いか)が全て反転する。ただし、太平洋の変動の影響が「架け橋」によって大西洋に及ぶ構図は同じ。