平成14年7月17日
海洋科学技術センター

 

深海巡航探査機「うらしま」が駿河トラフ縦断に成功
〜132kmの自律航走に成功。また、次期動力源の閉鎖式燃料電池が世界で初めて完成、秋に搭載。〜

 

 海洋科学技術センター(理事長 平野拓也)において、平成10年度より開発を進めてきた深海巡航探査機「うらしま」は、6月下旬に静岡県沖で、内蔵したコンピュータにより自律して駿河トラフを縦断する航走試験を実施した。23日午前9時、御前崎沖南80kmの位置で、支援母船「よこすか」から発進し潜航を開始した。巡航速力2.5ノット、深度800mを自動保持して駿河トラフに沿って北上し、翌朝4時に駿河湾に入り、8時に松崎沖で目標としていた航続距離100kmを越えた。更に航行を継続し午後2時15分に清水沖の目標点で自動停止した。この後バラストを投棄して浮上し、「よこすか」に無事、揚収された。自律航行距離132.5kmを達成し、航行時間は約29時間であった。このような自律航走距離が100kmを越える性能を持つ本格的な“無人潜水ロボット“は我国で初めてである。

 また、現在の「うらしま」はリチウムイオン電池を動力源として搭載して海域試験を行ってきた。これと並行して更に長距離を航走させるために必要な燃料電池の開発も行い、性能試験を実施してきたが、目標とする性能を得ることが出来た。

  この燃料電池は、固体高分子電解質膜型で、定格出力は4kW(120V)である。発電部は外形約1mのチタン合金製の耐水圧容器に収められている。燃料の水素ガスは世界最高レベルの貯蔵性能を持つ水素吸蔵合金に貯蔵する方式で、酸素は高圧ガスボンベを用いている。大気中で使用する自動車用燃料電池とは異なり、水素ガスや酸素ガスに含まれる微量の窒素や二酸化炭素等の不純物と、発電の際に発生する生成水を簡単に外部に放出できない。「うらしま」の最大使用深度は3,500mであるが、この深度の水圧は350気圧で、「うらしま」の燃料電池内部の気圧は、約2気圧である。上記した不純物や生成水を350気圧の外部に放出するには大きなエネルギーを必要とする。また生成水を放出すると中性浮力を保てなくなる。このため「うらしま」では、これらの不純物や生成水を内部に蓄積する閉鎖方式を採用している。上述したように閉鎖式燃料電池は大気中で使用する開ループの自動車用に比べ技術的に難しく、実用開発は世界で始めてのことである。

  「うらしま」の今後の予定は9月に今年度最後の海域試験を行い、自律性能の確立を目指す。また燃料電池は更に性能試験を継続する。今秋から年度末にかけて、動力源を現在のリチウムイオン電池から燃料電池へ搭載替えする工事を実施する計画である。工事が順調に推移すれば平成15年春には、世界で初の燃料電池を搭載した無人潜水機が登場することとなる。夏以降に海域試験を実施し、更に長距離を航行する試験を実施する予定である。

 

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