1.概要 海洋科学技術センター(理事長 平野拓也)と東京大学地震研究所(所長 山下輝夫)は、全国の大学・関係機関と共同して、鳥取沖から四国にいたる西南日本において海陸を統合した大規模な深部構造探査を実施し、フィリピン海プレートの沈み込み形状や地震発生帯深部構造の解明を行う。今回の測線は、1999年に海洋科学技術センターと東京大学地震研究所が中心となって実施した海陸統合構造探査測線と四国域で重複する。このため、99年の探査データと合わせ、海陸域で発振される人工地震波と稠密な地震計展開により四国域から鳥取沖に至る詳細な深部構造のイメージングを目指す。また、大規模な海陸統合探査によるフィリピン海プレートの沈み込み構造を明らかにすることにより、プレートの沈み込みシステムの研究にとっても大きく貢献することが期待される。 2.研究の目的
3.観測内容
4.観測スケジュール
5.背景と研究の詳細 陸域部の探査では“地震予知のための新たな観測研究計画”の一環として、全国共同利用研究所である地震研究所が、全国の研究者と連携して実施する。また、本探査は、千葉大学が科学研究費補助金(代表:千葉大学教授 伊藤谷生)で計画している中央構造線深部構造探査とも密接な連携を取って実施する。 陸域部では、地震研究所が共同利用研究所の機能を活用して約1200台(予定)の地震計を設置し、高知県から鳥取までの測線上で行われるTNT火薬(500kg:3発破、300kg:2発破、100kg:3発破、50kg:1発破)発破を観測する。 一方海域部では、海洋科学技術センターが海洋調査船「かいよう」(3,176トン)を投入し、海底に向けて大容量エアガン(約200リットル、140気圧)を用いた音波(エアガン波形)を発して、鳥取沖に設置した35台の海底地震計により地殻内部で反射・屈折して捉えられる音波を観測する。尚、鳥取沖の海底地震計の設置にあたっては、海洋科学技術センターとの共同研究相手先である気象庁の「清風丸」の協力の下で行う。 本探査において、陸域部の発破については海底地震計により、また、海域部のエアガンによる発振波は陸上観測点においてもそれぞれ観測が行われる。 このような海陸共同観測により、深さ50-60kmまでのプレート沈み込みの詳細なイメージを得ることを目指す。このような、陸域と海域にわたる大規模かつ高密度な深部構造探査は、世界的にも例が少なく、1999年6月四国において初めて実施した海陸境界域探査では、四国沖南海トラフの詳細構造が明らかにされた。また、2001年8月に実施した東海沖から中部日本に至る大規模構造探査でも、現在東海地震震源想定域での深部構造と地震活動関係について解析が行われている。 東京大学地震研究所を中心とした大学研究グループは、地震予知計画の下で、陸域において東北日本弧深部構造や北海道における島弧-島弧衝突構造を明らかにしてきた。今回の実験で得られる詳細な内陸地殻構造結果は、地震予知研究の推進に大いに寄与すると期待される。海洋科学技術センターの深部構造研究グループでは、平成8年度後半から、海溝域で発生する地震研究を進めており、1946年南海地震の発生・破壊過程に関係すると考えられている海山の沈み込み構造を発見している。今回の探査によって得られる深部構造データを数値モデル化し、同グループが開発を進めている地殻活動のシミュレーションを行うことによって、このような海溝域で起こる巨大地震のメカニズム解明と今後の地震発生の長期予測モデルの構築に、一歩近づくことが出来ると期待している。 尚、8月22日午後2時より徳島県美馬郡脇町において、また、8月27日午後2時より香川県さぬき市において現地説明会を行う予定である。 【用語説明】
【添付資料 一覧】
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