独立行政法人通則法(平成11年法律第103号)第30条第1項の規定により、独立行政法人海洋研究開発機構が中期目標を達成するための計画(以下、「中期計画」という。)を定める。
前文
独立行政法人海洋研究開発機構(以下、「機構」という。)は、海洋に関する基盤的研究開発等を通じて、国民と社会の要請に応え、以下の使命を果たす。
○ |
海洋が大きく関わる地球環境の変動を把握し、人類の持続的な発展を実現することに貢献する知見、情報を提供する。 |
○ |
海底地殻変動による災害から国民の生命と財産を守り安全安心を確保することに資する知見、情報を提供する。 |
○ |
海洋生命圏の理解、基盤技術の開発等により社会と経済の発展に資する知見、情報を提供する。 |
○ |
海洋を中心とする地球についての知識の深化・拡大を図り、人類の知的資産を豊かにする。 |
これらの使命を達成するため、以下の基本方針に沿って業務を遂行する。 |
○ |
国内外の機関と連携・協力を図り、海洋を中心とした地球を一つのシステムとしてとらえ、研究及び開発(以下「研究開発」という。)を学際的、総合的に進める。 |
○ |
提供するサービスの向上と研究開発による成果の社会への還元を図る。 |
○ |
広報、普及、啓発等を通じ、国民の理解と支援を得ることに積極的に努める。 |
○ |
人材、資金等を有効に活用して、効率的に業務を遂行する。 |
○ |
業務遂行における安全性と信頼性を確保する。 |
Ⅰ 国民に対して提供するサービスその他の業務の質の向上に関する目標を達成するために取るべき措置
1 海洋科学技術に関する基盤的研究開発
(1)重点研究の推進
地球環境観測研究
太平洋、インド洋、北極海、ユーラシア大陸アジア域等において、研究船、ブイ等の観測施設・設備を用いて、海底堆積物を含む海洋・陸面・大気の観測を行う。
観測データの解析により、熱・水・物質循環過程とそれらの変動についての知見を得るとともに、海水温の変動や海洋が吸収する二酸化炭素量等地球温暖化の影響を検出し、数年から数万年の時間スケールでの地球環境変動についての知見を蓄積する。
収集した観測データは、適切な品質管理を行いすみやかに公開して研究、産業利用等に供する。
国際的な地球観測計画の策定・実施に貢献する。
(イ)気候変動観測研究
海洋上層を広域・継続的に観測する観測システムを開発して、海洋を主体とする数年〜数10年規模の気候変動のメカニズムの解明研究を行う。具体的には、
a |
西太平洋の熱帯域と東部熱帯インド洋(10°N〜10°S、90°E〜160°Eの海域)に設置する海面係留ブイネットワークおよび主に北西太平洋に投入する自動昇降型漂流ブイ(Argoフロート)からなる総合観測システムにより、海洋上層の水温・塩分を広域的・リアルタイム・継続的に測定する。 |
b |
「エルニーニョ・南方振動」の予測精度を高め、「北太平洋10年規模変動」、「インド洋双極変動」等の仮説を検証するために、観測データの解析を行う。 |
c |
観測システムを国内外の関係機関と連携して展開する。 |
(ロ)水循環観測研究
アジア・太平洋域の海洋・陸面の熱源域・冷源域等において、日変化から経年変動にいたる時間スケールで海洋・陸面・大気を観測して、水循環についての知見を蓄積し、その物理過程の解明研究を行う。観測データを気候モデルの開発、水循環予測の検証等に供する。具体的には、
a |
インドネシア多島海を中心とする熱源域において、対流活動と水循環の時空間変動についての知見を蓄積するため、高層ゾンデ等を用いて、水蒸気量、降水量、同位体組成等を観測するとともに衛星データを解析する。 |
b |
ユーラシア寒冷圏を中心とする冷源域において、大気・陸面間の水・エネルギー循環過程についての知見を蓄積するとともに気候モデルの開発に貢献するため、雪氷量、降水量、蒸発量等の観測と衛星データの解析を行う。 |
c |
パラオ周辺の熱源域と中国梅雨前線帯において、雲・降水システムの3次元構造と発達過程についての知見を蓄積するとともに雲解像大気モデルの開発に貢献するため、ドップラーレーダー、高層ゾンデ、ウインドプロファイラー、GPS、マイクロ波放射計等を用いて、風向・風速、水蒸気量、降水量等を観測する。 |
(ハ)地球温暖化観測研究
海氷変動に地球温暖化の兆候が現れるとされる北極海、海洋の二酸化炭素吸収が大きく栄養塩が豊富な深層水の湧昇により生物生産が世界的に高い太平洋高緯度海域において、地球温暖化に関係する海洋の構造と炭素循環等についての知見を蓄積するため、海洋・海氷の観測研究を行う。海底堆積物により過去数10万年までの気候変動の再現をめざし、地球環境変動の予測向上に資する。具体的には、
a |
北極海アムンゼン海盆・ナンセン海盆等において、海氷下の熱輸送についての知見を蓄積するために、漂流ブイ等により水温、塩分、気温、気圧等を観測する。また、西部北極海主要水塊の空間分布と循環の知見を蓄積するため、北極海のカナダ海盆等において、船舶、係留系により水温、塩分、化学トレーサー等を観測する。 |
b |
北西太平洋の地球環境制御能力、特に生物が関与する環境制御能力についての知見を蓄積するため、係留系により生物活動に伴う沈降粒子等を1週間〜1か月の時間分解能で観測する。 |
c |
北太平洋を中心に、人為起源ではない自然の気候変動に対する海洋の役割・応答についての知見を過去に遡って蓄積するために、海底堆積物により、海洋古環境の表層水温、生産量、中・深層循環等の変動を解析し、南半球の古環境変動との比較を行う。 |
(ニ)海洋大循環観測研究
太平洋を中心として、海洋大循環、特に子午面循環による南北方向の熱・水の大規模な輸送とその変動特性、表層・深層循環による熱・物質輸送に関する知見を蓄積するため、貯熱量、溶存物質量と表層・深層循環による熱輸送の10年スケールの変化について観測研究を行う。また、我が国周辺の黒潮およびその続流の様々な時間スケールにわたる流量・流路や熱輸送等の変動が大洋スケールでの熱・物質輸送に及ぼす影響についての知見を蓄積するため、水温、塩分の分布や流向・流速等を観測する。具体的には、
a |
太平洋の過去に観測が行われた世界海洋循環実験(WOCE)測線等で、研究船「みらい」等を用いて、水温、塩分、化学物質濃度等を観測する。ウェーク島通路等の海盆間をつなぐ深層水通路で、係留系により、水温、塩分、流向・流速を観測する。 |
b |
黒潮域およびその続流域を中心とした北太平洋において、観測機器係留、観測船、ボランティア船等により、水温、塩分、流向・流速等を観測する。 |
(ホ)海洋・陸面・大気相互作用総合研究
地球の気候システムにおけるエネルギーと水の最大の供給源であるインドネシア多島海(海大陸)が気候形成・変動に果たす役割についての解明研究を行う。具体的には、上記(イ)と(ロ)の課題で得られる海大陸に関する観測成果を総合して、「エルニーニョ・南方振動」、「アジア・オーストラリアモンスーン」等の現象を、日変化から年変動までの時間スケール、個々の積雲から2,000
km〜3,000 kmの大きさを持つ雲群までの空間スケールでとらえ、現象間の相互作用について解明研究を行う。
地球環境予測研究
「エルニーニョ・南方振動」等、海洋が大きな役割を果たす自然の気候変動や地球温暖化等の人間活動に起因する地球環境の変動の予測をめざして、気候、水循環、大気組成、生態系、地球温暖化の各要素毎に現象と過程について研究を行うとともに要素毎のモデルを開発する。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)において平成19年までにとりまとめられる第4次評価報告書作成等に貢献するため、これらをまとめた温暖化・気候変動予測モデル、地球環境システム統合モデル等を開発し、数値実験を行う。
(イ)気候変動予測研究
太平洋、インド洋、北極海、ユーラシア大陸アジア域等における気候変動および海洋・大気中に生起する関連現象についての知見を蓄積し、モデルを開発して数値実験を行う。具体的には、
a |
季節変動を含む数年スケールおよび10年〜数10年スケールの海洋・大気現象を過去の気候データ等を基に解析する。 |
b |
重要な気候変動現象の予測可能性、気候変動が世界各地に及ぼす影響を研究するため、「地球シミュレータ」を用いて複数の大気海洋結合モデルにより数値実験を行う。 |
c |
国際的な連携の下、アジア・太平洋域の気候変動の特徴と予測等についての研究と近年急速に増大してきた観測データやモデル出力を簡便に利用するための基盤的研究を行う。 |
(ロ)水循環変動予測研究
観測データに基づき、水循環変動の諸物理過程の解明研究を行い、プロセスモデルを開発する。これを基に流域・地域スケールから全球スケールまでの水循環モデルを開発する。具体的には、
a |
過去数10年にわたる海洋・地面・植生からの蒸発散、降水、積雪、融雪、河川流出等の観測データにより、全球スケールでの水循環変動と、それらに関わる陸域の水循環過程、広域雲・放射過程、大気境界層過程等の物理過程の研究を行う。また、モデルを用いて、地域から全球の空間スケール、季節変化から経年変動の時間スケールでの水循環を研究する。 |
b |
大気モデル中の水循環過程を研究するため、雲粒、雨滴、雪片の形成とその放射への効果等を取り込み、10km〜数10kmの空間スケールを持つ対流雲モデルを開発する。 |
c |
凍土、半乾燥地域のような特徴的な気候を持つ地域固有の水循環の素過程についての知見を蓄積し、これを基に陸面水循環モデルを開発する。 |
(ハ)大気組成変動予測研究
アジア域における温室効果ガスおよび大気汚染物質の放出量の増加が気候、環境に与える影響を把握するため、海洋・大気間の物質移動等を取り入れて、大気質変動と気候変動との相互作用の研究、北半球を中心とする全球規模大気汚染の研究、温室効果ガスの排出・吸収推定に関する研究を行う。具体的には、
a |
エアロゾルの生成プロセスを化学輸送モデルに取り入れて、エアロゾル、オゾン等による大気質変動と気候変動の相互作用を研究する。オゾンの温室効果ガスとしての重要性を評価するため、1900年〜2100年の放射強制力を計算する。 |
b |
北半球の長距離越境大気汚染の検討に基礎データを提供するため、全球化学輸送モデルを用いて、オゾン、一酸化炭素、エアロゾル等の大陸間輸送過程を研究する。 |
c |
京都議定書に基づく地球温暖化対策の検討に基礎データを提供するため、大気モデルに二酸化炭素等の観測データを取り込んだ輸送過程の逆計算を行い、排出・吸収の分布を算出する。 |
d |
中央アジア域、東アジア域の大気汚染物質の観測データを取り込み、排出目録を基に大気汚染物質の季節変化、輸送・化学的変質、領域規模収支を評価する。 |
e |
都市スケールから全球スケールまで化学輸送モデルを結合して、オゾン等による大気汚染を予測するシステムを開発する。 |
(ニ)生態系変動予測研究
アジア・太平洋域を中心に気候・環境の変動が海洋・陸域生態系の機能・構造に与える影響と、逆に、生態系の変化が気候や環境に及ぼす影響を予測・評価するモデルを開発する。また、モデル開発のため生態系の広域分布に関する観測データを解析し、パラメータ化する。具体的には、
a |
地球温暖化、気候変動への海洋生態系の寄与を評価することをめざし、海域の生態系・炭素循環モデルの開発を行う。 |
b |
全球規模での温室効果ガスの変動等への陸域生態系の寄与を評価することをめざし、陸域の生態系・炭素循環モデルの開発を行う。 |
c |
全球規模での気候変動が、植生の分布や多様性の変動に及ぼす影響を評価することをめざし、個体レベルに基づく全球植生変動モデルの開発を進める。 |
d |
衛星データ、地上観測データを解析して海洋・陸域の生態系の機能と構造の広域分布についての知見を蓄積し、その成果をパラメータとしてモデルに取り込む。 |
(ホ)地球温暖化予測研究
地球温暖化のメカニズムを理解し、予測するため、気候モデルを開発して、「地球シミュレータ」等を使って地球温暖化実験、古気候再現実験等を行う。その結果をIPCC第4次評価報告書に反映させる。また、地球温暖化が顕著に現れる北極域の環境の変動について研究する。具体的には、
a |
海洋、大気それぞれ水平格子25km、100km程度の解像度の気候モデルを開発し、地球温暖化実験を行う。 |
b |
地域的変化を表現し得る水平格子20km程度の解像度の大気モデルを用い、得られた数値実験結果を解析する。 |
c |
古気候のメカニズムを研究するとともに気候モデルの性能評価を行うため、最終氷期や最適気候期等の古気候を気候モデルで再現する数値実験を行う。 |
d |
地球温暖化予測を向上させるため、国際的な連携の下、海氷生成、海氷藻類による炭素循環等の北極域に特有な環境変化過程について知見を蓄積して大気・海洋・海氷結合系モデルや海氷域生態系物質循環モデルを開発する。 |
(へ)分野横断型モデル開発および総合研究
(イ)〜(ホ)の研究課題で得られた成果を総合し、海洋・大気・陸面・植生・雪氷等を統合した先端的な地球環境システム統合モデルを開発する。
地球環境変動にともなう集中豪雨等の気象変化をより詳細に表現することをめざし、「地球シミュレータ」を活用して、解像度を飛躍的に向上させた大気モデル、海洋モデルを開発する。
海洋観測データを基に、海洋モデルを介して解析するデータ同化システムを開発する。具体的には、
a |
IPCC 第4次評価報告書に貢献するため、気候モデルを基に、陸域と海洋の炭素循環モデルを統合した全球炭素循環モデルやさらに海洋・大気の組成、生態系変動を加えた地球環境システム統合モデルを開発する。モデルにより気候変動が炭素循環に与えるフィードバック効果を含んだ地球温暖化実験を行う。 |
b |
地球温暖化実験や気候変動予測のため、海洋、大気とも水平格子100 km程度の解像度を中心に種々の解像度の、主として物理過程を扱う海洋・大気・陸面結合気候モデルを開発する。 |
c |
全海洋を対象とする水平格子10 km以下の渦解像世界海洋循環モデルの原型版および水平格子5 km以下の全球雲解像大気モデルの原型版を開発する。 |
d |
人工衛星、ブイ等による海洋観測データを基に、モデルを介して相互に矛盾のないデータを作成する4次元データ同化システムを開発する。 |
e |
全球雲解像大気モデル、全球炭素循環モデル等について解像度や再現性等の性能を検証するため、衛星による全球降水分布の3時間間隔観測、二酸化炭素濃度の全球分布観測等のデータを利用する手法等について研究を行う。 |
地球内部ダイナミクス研究
日本列島周辺海域、西太平洋域を中心に地震・火山活動の原因、島弧・大陸地殻の進化、地球環境変遷等についての知見を蓄積するため、地球深部探査船「ちきゅう」、深海調査システム、海底地震計・海底磁力計等により、地球中心から地殻表層にいたる地球内部の動的挙動(ダイナミクス)に関する調査観測と実験を行う。これらの結果に基づき、「地球シミュレータ」等を用いてマントル・プレートの動的挙動の数値モデルを開発する。
(イ)地球内部構造研究
地震・電磁気観測等に基づき、マントル対流の上昇・下降域に関する研究を行い、マントル対流モデルと結びついた地球内部構造モデルを開発する。具体的には、
a |
全地球、西太平洋、日本列島の各スケールで、分解能の異なるマントル・コアの地震波速度分布モデル等を開発するため、観測等により得られた地震波データを用い、3次元構造解析を行う。 |
b |
マントル下降流の温度分布等に関する知見を蓄積するため、西太平洋域において広帯域海底地震計、海底磁力計を用いて地震・電磁気観測を行う。 |
c |
マントル上昇流とホットスポット火山とのつながりに関する知見を蓄積するため、ポリネシア地域において広帯域海底地震計による地震観測を行う。 |
d |
マントル・コア対流に上部・下部マントル境界およびマントル・コアの境界が果たす役割に関する知見を得るため、数値実験と室内実験を行う。その成果と3次元構造解析の結果を取り込んだマントル対流モデルを開発する。 |
(ロ)地球内部物質循環研究
プレート沈み込み・マントル深部物質上昇等による地球内部の物質移動についての知見を蓄積するため、地球深部起源マグマの化学的・岩石学的解析、地球内部の超高圧下での物性実験等を行う。具体的には、
a |
島弧の進化過程・大陸地殻の形成過程におけるマグマ活動の役割についての知見を蓄積するため、島弧地殻の発達程度が異なるサンギヘ弧、伊豆マリアナ弧、東北日本弧等のプレート沈み込み帯の火山岩等を採取し、地球化学的・岩石学的解析を行う。 |
b |
深さ2,900 kmまでのマントルの化学的特徴についての知見を蓄積するため、南太平洋・南大西洋域のホットスポット火山について、火山岩等を採取し、地球化学的・岩石学的解析を行う。 |
c |
ダイナミクスを規定する内部物質の物性についての知見を蓄積するため、温度3,000℃、圧力130 GPaでの物性実験法を開発し、下部マントル構成鉱物の物性実験を行う。 |
(ハ)プレート挙動解析研究
プレートの運動による海溝型地震や地殻変動等の動的過程を理解するため、プレート沈み込み帯の構造を探査する。この結果とプレート境界域の物質研究等に基づき地殻活動モデルを開発する。具体的には、
a |
南海トラフにおける巨大地震発生過程を規定する構造要因の抽出および伊豆小笠原弧域等のプレート沈み込みに関わる知見の蓄積のため、制御震源を用いた反射法や屈折法構造調査等により、南海トラフ周辺のフィリピン海プレートについて深さ約30
kmの範囲で、伊豆・小笠原弧域等について深さ約20 kmの範囲で、地殻構造を探査する。 |
b |
温度数10〜600℃、圧力数10〜800 MPa程度のプレート境界域の岩石の物性、力学的挙動、物理化学過程について研究を行う。 |
c |
a およびb の結果を反映して広さ約600 km×300 km、深さ約50 kmの範囲で地殻構造を数値化し、「地球シミュレータ」を用いてプレート挙動に関する数値実験を行う。この成果を用いて、時空間スケールの異なる現象を扱うプレート挙動モデルの開発を進める。 |
(ニ)海洋底ダイナミクス研究
地震、津波と関連する海底変動、海底下深部からの物質や熱の挙動および循環等、さらに、島弧・海洋地殻の成長過程を把握するために、観測研究を行う。具体的には、
a |
断層活動、地殻内流体移動の把握に適した現場環境下で、深海底長期現場観測、掘削孔内観測、試料採取等による研究を行う。 |
b |
南海トラフ、台湾チェルンプ断層等において、熱・歪み・物性の測定等の掘削研究を行う。 |
c |
島弧海溝系、マントル上昇域において、海底地形、重力、地磁気等の地球物理的観測、試料採取・解析等を行う。 |
(ホ)地球古環境変動研究
地球内部、表層環境および生命圏が一体となった変動に関する知見を蓄積するため、地層記録解析と現在の堆積過程の観測等を行い、地球環境の過去の変遷過程を研究する。具体的には、
a |
氷期/間氷期古海洋、大陸縁辺古海洋、無酸素古海洋等の特徴的、代表的な古環境下で堆積した地層を解析する。 |
b |
氷期/間氷期古海洋、大陸縁辺古海洋、無酸素古海洋と類似した環境の海域における現行堆積過程の観測を行い、生物が関与する堆積・物質循環システムを研究するとともに、生物遺骸等の過去の環境をあらわす指標を新たに提案する。 |
c |
a およびb の成果に基づいて地球古環境の変遷過程をモデル化する。 |
(へ)地球内部試料データ分析解析研究
地球内部ダイナミクス研究に必要となる分析解析手法の開発およびデータベースの開発を行う。具体的には、
a |
太平洋域の地震・地球電磁気・測地学的観測点を活用し、得られたデータからデータベースを開発する。「地球シミュレータ」を用いた計算によって得られる周期5秒以上の地震波形の記録に基づいてデータ解析手法を開発する。 |
b |
制御震源を用いた反射法や屈折法構造調査データの処理解析精度を向上させる新たな手法を開発し、観測データからデータベースを開発する。 |
c |
マントル上昇流の発生深度に関する知見を得るため、海台地域等で採取された岩石中の元素濃度等を、地球化学的手法を用いて解析する。また、鉱物粒子単位の極微量元素分析法等を開発する。 |
d |
堆積岩、生物源試料に記録された地球環境変遷に関する温度、年代等のデータを得るため、化合物レベルの同位体分析法等を開発する。 |
海洋・極限環境生物研究
海洋の多様な生物、生態系が有する特殊・固有な機能を把握するとともに、その産業応用等により社会と経済の発展に資するため、研究船、海底観測システム、地球深部探査船「ちきゅう」等により、海洋中・深層、海底の熱水域・冷湧水帯、深海底、海底地殻内等で生物の探索、特徴的な生態系の調査を行う。これらの成果と実験、シミュレーションにより、生物の機能、環境と生物の相互関係、生物の多様性と進化についての研究を行う。
さらに、生物機能を利用した有用物質生産等の産業応用を推進する。
(イ)海洋生態・環境研究
a |
海洋生物進化研究
化学合成生物群集等における共生関係を対象に、海洋環境への生物の適応機能を例証して、共生が生物進化に与えた影響に関する知見を蓄積するため、共生生物のゲノムの解析等を行う。
|
b |
海洋生態系変動研究
海洋生態系において深海生態系が果たす役割の理解をめざし、中・深層以深の深海生態系における生物生産、食物連鎖、物質循環に関する知見を蓄積するため、試料採取・解析等を行う。特に熱水噴出孔や冷湧水域等の環境が生物群集構造に及ぼす影響を評価するため、生物群集中の生物種・生物量等を調査・解析する。
|
(ロ)極限環境生物展開研究
深海底等の極限環境が生物に与える影響と生物の機能解明をめざし、極限環境生物の探索・調査、現場環境を再現した実験、ゲノム・プロテオーム解析等による研究を行う。さらにシミュレーション等による極限環境生物の適応機能の予測等の研究を行う。
これらの成果を基にした産業応用等のため、極限環境生物を利用した有用酵素の生産等についての研究開発を行う。
(ハ)地殻内微生物研究
地殻内の微生物の生息環境・種類・量についての知見を蓄積するため、深海底熱水域、プレート沈み込み帯等の活動的地殻内環境で微生物の探索・調査を行う。
微生物の多様性と過去の地球環境の関係を把握するため、堆積層から遺伝子をとりだし、その構造を解析して古環境の微生物相を研究する。
(2)重点開発の推進
海洋に関する基盤技術開発
地球環境観測研究、地球内部ダイナミクス研究等の推進のため、高機能の海底探査機、自律型探査機、海底観測システム等の技術開発を行う。海洋科学技術の推進だけでなく、他の研究開発分野や産業への応用等もめざし、先進的な基盤技術の研究開発を行う。
(イ)高機能海底探査機技術開発
新規有用生物の発見が期待される世界最深部の生命圏の理解、これまで困難であった世界最深部における海底地殻変動の把握等をめざし、水深11,000
mの大深度下で調査観測等が可能な海底探査機を開発し、高機能化を図る。具体的には、
a |
「かいこう」ビークル漂流事故調査委員会報告を踏まえ、大深度用ケーブルおよび引留部の構造の改良を行う。また、海中機器の持つ限られた搭載能力の中で安全対策にとって重要なトランスポンダ機能に冗長性をもたせるため、容積・重量を1/2に小型化したトランスポンダを開発する。 |
b |
製造工程における安全衛生上の規制強化のため、現在製造されていない水深11,000 m級の浮力材を新たに開発する。 |
c |
水深11,000 mの世界最深部においてハイビジョンテレビ画像による生態系観察や現場観測等を可能にする、耐圧レンズ等の大深度用光学機器および大深度で使用可能な光コネクタの開発を含む高速光通信システムの開発を行う。 |
(ロ)自律型無人探査機技術開発
地震・津波等の自然災害による被害の軽減することをめざし、有人調査が困難な熱水噴出域、落石・衝突等の可能性のある海域においても、精密な海底の観測が可能な自律型無人探査機の技術開発を進める。具体的には、従来、研究船で行っていた海底の観測期間を大幅に短縮するため、燃料電池を動力源とする自律型無人探査機の300
km以上の連続自律航行を実現する。さらに、観測に供しながら研究に必要な性能の向上を図るとともに、航行距離の長大化等に関する研究を行う。
(ハ)総合海底観測ネットワークシステム技術開発
地震・津波等の自然災害による被害の軽減をめざし、プレート境界域における地震等の地殻変動および深層流・地下水等の深海底環境変動を海中・海底において広域にわたり観測するため、ケーブルで結んだ多数のセンサーからなるリアルタイム長期総合海底観測システムの研究開発を行う。具体的には、将来の海底ネットワーク基盤技術となりうるケーブル給電技術、データ電送技術、同期技術等およびシステムに接続するセンサー類の開発を行う。
掘削孔を利用し、長期間継続して海底地殻を観測する独立型システムの開発を行う。
(ニ)先進的海洋技術研究開発
海洋研究のための機器開発に共通的に必要なだけでなく、将来の産業応用につながる技術の開発をめざし、情報通信、材料等の先端技術を取り入れて先進的な基盤技術の研究開発を行う。具体的には、
a |
探査機の軽量化により、多くの観測機器の搭載、大量の試料採取を可能にするため、チタン合金に対して比強度30%増の新素材の研究開発を行う。 |
b |
深海の現場環境において試料採取を行わず、直接pH測定等が可能になるセンサーの研究開発を進める。 |
c |
水中動力源としての燃料電池、水中音響技術、慣性航法装置、人工衛星通信システム等について先進的な研究開発を行う。 |
シミュレーション研究開発
地球環境予測研究、地球内部ダイナミクス研究等の推進のため、「地球シミュレータ」用プログラムを開発する。
海洋科学技術の推進だけでなく、他の研究開発分野や産業への応用等もめざし、データ処理技術等の開発を行う。
(イ)計算地球科学研究開発
海洋・大気変動のシミュレーションを実現するための研究開発を行い、エルニーニョ、黒潮蛇行等の海洋・大気の現象を「地球シミュレータ」上で精緻に再現するために全球海洋大循環モデルプログラム、全球大気大循環モデルプログラム、全球大気海洋結合モデルプログラムを開発する。
コア・マントルの地磁気変動、地殻変動、さらには地球規模の地球内部研究を推進するため、全球規模のコア・マントル変動、プレート運動、日本列島域の地震破壊過程の再現に必要なシミュレーションプログラムを開発する。
(ロ)シミュレーション高度化研究開発
a |
大量のシミュレーション出力を効率よく解析するため、大規模なデータファイルから任意に特定の領域を切り出すデータ処理技術、リアルタイムに近い形で可視化する超高速画像処理技術、3次元仮想現実可視化処理等の高度可視化技術を開発する。 |
b |
海洋・大気結合系等の複雑・非線形・非定常な系での時間積分を、できる限り自然に忠実な方法で長期間・安定・精緻に行うため、新たな計算理論と「地球シミュレータ」に最適なプログラムを開発する。 |
c |
シミュレーション手法の産業応用促進をめざし、民間企業等との共同研究および特許の共同出願を行う。 |
(ハ)連結階層シミュレーション研究開発
システムとしての地球等、多様な階層からなる系について、階層毎のシミュレーションを連結し、全体として効率よく精緻なシミュレーションを可能とする計算理論および計算機システム構成の研究開発を行う。
(3)研究開発の多様な取り組み
独創的・萌芽的な研究開発の推進
独創的な次期プロジェクトの萌芽となることをめざす研究開発を、競争的な環境の下に推進する。
共同研究および研究協力の推進
国内外の大学、企業、研究機関等との連携により有益な成果が期待できる場合に共同研究等を積極的に実施する。また、国際研究開発プログラム等に積極的に応募・参加・貢献する。国際北極圏研究センター(IARC)、国際太平洋研究センター(IPRC)で地球環境観測研究、地球変動予測研究を行う。
海外の主要な海洋研究機関等と研究協力協定を結ぶ等、国際的な研究協力・交流を積極的に進める。
統合国際深海掘削計画(IODP)の推進
統合国際深海掘削計画(IODP)は、地球環境変動、地球内部ダイナミクス、海底地殻内微生物等の研究を飛躍的に推進するため、文部科学省と米国科学財団の主導の下、平成15年から開始された国際的な科学掘削計画である。研究提案に基づき掘削計画を作成し、ライザー掘削が可能な我が国の地球深部探査船「ちきゅう」と米国のライザーレス掘削船を中心に海底地殻を掘削し、掘削で得られる地殻コアの解析、掘削孔を利用した計測等により、これまで得られなかった地殻内部のデータを取得し、地球科学、生命科学等の多様な分野で画期的な研究成果を上げることが期待されている。
機構は、IODPに研究課題を積極的に提案し、地球深部探査船「ちきゅう」を用いて地球内部ダイナミクス、地殻内微生物についての研究を行う。また、我が国におけるIODPの総合的な推進機関として計画に参画する。
外部資金による研究の推進
文部科学省等の政府機関、日本学術振興会、科学技術振興機構等の独立行政法人、公益法人等が実施する公募型研究に研究課題の提案を積極的に行う。
海洋科学技術に関わる広範な研究開発について、国、民間企業等から受託を積極的に受ける。
2 研究開発成果の普及および成果活用の促進
(1)研究開発成果の情報発信
研究開発の成果を基に論文を年間270報以上(平成14年実績:223報)発表する。研究開発の水準を一定以上に保つため、査読論文の割合を7割以上とする。
得られた成果を積極的に社会へ情報発信するため、国際シンポジウム、研究成果発表会等を5年間で50件以上(平成10〜14年度の実績:43件)開催する。
地震、津波による災害の軽減に資するため、ケーブル式総合海底観測システムの観測データを気象庁等に配信する。
(2)普及広報活動
広報誌、インターネットホームページ、施設公開、プレス発表等を積極的に行う。速報性を有する情報を掲載した刊行物を年12回、また、研究成果等の詳細情報を掲載したものを年6回発行する。施設・設備の公開で見学者を1年あたり22,000人(平成13年4月〜15年12月の平均:20,000人)以上受け入れる。ホームページを週1回以上更新し、年間アクセス450万件以上(平成14年12月〜15年11月実績:445万件/年)の閲覧を確保する。また、科学館等と連携して、セミナー等を行い、広く学習機会の提供に努める。
機構の他の業務に支障を来たさない範囲で、緊急の深海探索等の社会への直接貢献を行うことにより、研究開発成果の普及と活用の促進を図る。
(3)研究開発成果の権利化および適切な管理
知的財産の質を確保しつつ増大させることに努め、国内外を合わせて5年後には年間30件以上(平成14年度の実績:11件)の特許出願を行う。取得特許等については一定期間毎にその実施可能性を検証し、維持の必要性を見直す等効率的な維持管理を行う。
経済社会活動の発展や国民生活の質の向上をめざし、菌株・DNA等の貴重なバイオリソースの保存・管理を行い、適切な取り決めの下、提供する。具体的には、深海底をはじめとする極限環境から得られた微生物等を中期目標期間最終年度までに4,000株以上保管する(平成15年4月実績:2,000株)。
また、機構の有する研究開発成果の産業応用をめざし、様々な分野において民間企業と共同で研究開発等を行うため、5年後には民間企業と年間25件以上(平成15年4月〜平成16年2月の実績:21件)の共同研究を行う。
さらに、民間企業と共同研究等を行った結果として、5年後には民間企業と共同で国内外を合わせ年間7件以上(平成15年4月〜平成16年2月の実績:5件)の特許出願を行う。
3 学術研究に関する船舶の運航等の協力
研究船「白鳳丸」、「淡青丸」の運航等を行い、大学および大学共同利用機関における海洋に関する学術研究に関し協力を行う。具体的には、
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東京大学海洋研究所と緊密に連携協力を図り、学術研究の特性に配慮して運航計画を作成する。 |
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適切な運航体制の下、既存の研究船と連携した効果的な運用を図るとともに、運航管理の外注、研究設備の共有等により、上記運航計画に基づいて研究船を効率的に運航する。 |
4 科学技術に関する研究開発または学術研究を行う者への施設・設備の供用
施設・設備を整備し、自ら有効に活用するとともに、基準を定めて外部研究者等の利用に供する。
(1)研究船、深海調査システム等の試験研究施設・設備の供用
研究船「みらい」、「かいれい」、「よこすか」、「かいよう」、「なつしま」、有人および無人深海調査システム、プール等の試験研究施設・設備を整備し、効率的に運用して、研究開発等を行う者の利用に供する。
船舶等の安全かつ円滑な運航を促進するため、技術開発部門と運用部門の連携を一層充実する。
(2)「地球シミュレータ」の供用
「地球シミュレータ」を整備し、効率的に運用して、研究開発等を行う者の利用に供する。
シミュレーション研究開発の進展とともに増大する処理要求に対応して処理能力を向上させるとともに、2.5Gbpsの高速ネットワークに接続することにより外部利用者からのデータアクセスを高速化して利便性を向上させる。
民間等による「地球シミュレータ」の有償利用については、多様な研究開発・産業分野の利用ニーズの調査、広く民間企業、大学、公的機関等を対象とした共同研究の推進、利用環境の改善等を行うことにより推進する。
(3)地球深部探査船の供用等
IODPを推進するため、世界初の科学ライザー掘削船である地球深部探査船「ちきゅう」の建造・運用等を行う。具体的には、
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水深2,500mの海域において、海底下7,000mの掘削をめざす地球深部探査船「ちきゅう」を建造する。 |
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「ちきゅう」の運用管理システムおよび研究用データベースを構築する。 |
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機構の適切な指揮および管理の下に運用を外部委託する等、徹底した経費の効率化を図りつつ、運用組織・体制を整備し、慣熟訓練を経てIODPによる国際運用に「ちきゅう」を供する。 |
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安全な掘削を行うため掘削予定海域の事前調査を行う。 |
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高知大学海洋コア総合研究センターを高知大学と共同で運営する。関連する科学掘削計画と連携を図る。 |
5 研究者および技術者の養成と資質の向上
研究者等を国内外の研究機関、大学等に一定期間派遣し、在外研究等を行わせる。他の研究機関からの研究員を積極的に受け入れる。
独立行政法人日本学術振興会等の流動研究員制度や連携大学院制度を活用し、博士号を取得した若手研究者や大学院生を積極的に受け入れ、機構の研究活動に参加させることにより、将来の研究人材の育成に資するとともに、機構の研究活性化を図る。
産業界等と研究者・技術者の人材交流を積極的に行う。機構が有する潜水技術を活用し、主として警察、消防等の公的機関の職員を対象に潜水従事者の研修を行う。人材養成のための講師派遣等に積極的に応ずる。
船上・陸上で研究支援を行う技術員の養成および技術の向上を図る。
6 情報および資料の収集・整理・保管・提供
海洋科学技術に関する情報および資料を広く収集し、図書館機能の充実、ホームページによる情報発信等を行う。
機構の研究開発で得られた多様なデータの品質評価・管理を行い、データベースの開発、データ公開を進める。
7 評価の実施
柔軟かつ競争的で開かれた研究開発環境の実現や経営資源の重点的・効率的配分に資するため、外部の専門家等の評価者により事前・事後に研究課題評価を実施する。5年以上の研究開発期間を有する課題等については、中間評価を実施する。また、外部の有識者等により、研究船等の施設・設備の費用対効果も含めた機構の運営全般について定期的に評価を実施する。
評価結果は公表するとともに、研究開発組織や施設・設備の改廃等を含めた予算・人材等の資源配分に反映させる等、研究開発活動等の活性化・効率化に積極的に活用する。
8 情報公開
独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律(平成13年法律第145号)に則り、積極的に情報提供に努める。
II 業務の効率化に関する目標を達成するために取るべき措置
1 組織の編成および運営
(1)組織の編成
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理事長の意思を適確に反映し経営企画機能を担う組織を構築し、機構の経営や研究戦略の策定、人的資源を含めた要求や配分の総合調整を行う。 |
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国内外の研究機関や大学、産業界等の連携、協力を積極的に行うための組織構築を行う。 |
 |
事務の重複や非効率な業務を排除し、機動的・効率的業務を行うため、柔軟な組織・体制の構築を行う。 |
 |
業務遂行における安全性と信頼性を確保するための組織構築を行う。 |
(2)組織の運営
 |
理事長のリーダーシップの下、意志決定の迅速化を図るため、権限と責任を明確にした組織運営を行う。 |
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各部署において迅速な意志決定と柔軟な対応を実現するために、各部署への権限委譲を推進する。 |
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業務全般を見直し、可能かつ適切な業務については、外部委託を着実に実施する。 |
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職員の能力を最大限に引き出し、実力をいかんなく発揮させるため、研究者をはじめとする職員の業務に関する評価を、多様な観点から適正に行う。業績評価に見合った公平で透明性のある資源配分と職員の処遇を行う。 |
 |
柔軟な組織編成や人員配置等を実現するため、業務上必要とされる知識・技術の取得ができるように、自己啓発や能力開発のための研修を行う。 |
2 業務の効率化
 |
機構の業務を効率的に実施するため、契約等各種事務手続きの簡素化・迅速化および電子化をより加速し、経費節減や事務の効率化および合理化を図る。 |
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業務運営全般に係る経費の見直しを行い、その節減に努めるとともに、国において実施されている行政コストの効率化を踏まえ、中期目標期間中、一般管理費(人件費を含み、公租公課を除く。)について、平成15年度に比べその15%以上を削減し、その他の業務経費については中期目標期間中、既存事業の徹底した見直しを行い、毎事業年度1%以上の業務の効率化を図る。
また、受託事業収入で実施される業務についても業務の効率化を図る。 |
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特に、地球深部探査船「ちきゅう」の運用に多額の経費を要することから、効率的な運用体制の構築、外部委託の活用、国際資金の効果的な活用等により、経費の節減を図るとともに、既存事業の徹底した見直しを行い、業務の効率化を図る。 |
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東京大学海洋研究所と海洋科学技術センターの研究船の運航業務が統合されたことを踏まえ、運航業務の効率化に努め、その実績を毎年度公表する。 |
III 予算(人件費の見積りを含む)、収支計画および資金計画
1 予算(中期計画の予算)
平成16年度〜平成20年度 予算
(単位:百万円) |
区分 |
金額 |
収入 |
|
運営費交付金 |
151,372 |
施設費補助金 |
16,515 |
事業等収入 |
16,509 |
受託収入 |
785 |
計 |
185,181 |
支出 |
|
一般管理費 |
8,277 |
(公租公課を除いた一般管理費) |
5,258 |
うち、人件費(管理系) |
3,649 |
物件費 |
1,608 |
公租公課 |
3,019 |
事業経費 |
159,604 |
うち、人件費(事業系) |
12,538 |
物件費 |
147,066 |
施設費 |
16,515 |
受託経費 |
785 |
計 |
185,181 |
|
[注1]上記予算額は運営費交付金の算定ルールに基づき、一定の仮定の下に試算されたもの。各事業年度の予算については、事業の進展により必要経費が大幅に変わること等を勘案し、各事業年度の予算編成過程において、再計算のうえ決定される。一般管理費のうち公租公課については、所用見込額を試算しているが、具体的な額は各事業年度の予算編成過程において再計算のうえ決定される。
[注2]各欄積算と合計欄の数字は四捨五入の関係で一致しないことがある。
[人件費相当額の見積り]
期間中総額16,187百万円を支出する。但し、上記の額は、役員報酬並びに職員基本給、職員諸手当、超過勤務手当、休職者給与、退職手当及び社会保険料等に関わる事業主負担分等に相当する範囲の費用である。
[運営費交付金の算定ルール]
毎事業年度に交付する運営費交付金(A)については、以下の数式により決定する。
A(y)= |
{(C(y)−T(y))×α1(係数)}+T(y)}+{(R(y)
+Pr(y))×α2(係数)}+ε(y)−B(y)×λ(係数) |
|
|
R(y)= |
R(y-1)×β(係数)×γ(係数) |
C(y)= |
Pc(y-1)×σ(係数)+E(y-1)×β(係数)+T(y) |
B(y)= |
B(y-1)×δ(係数) |
P(y)= |
Pr(y)+Pc(y)={Pr(y-1)+Pc(y-1)}×σ(係数) |
各経費及び各係数値については、以下の通り。
B(y): |
当該事業年度における自己収入の見積り。B(y-1)は直前の事業年度におけるB(y)。 |
C(y): |
当該事業年度における一般管理費。C(y-1)は直前の事業年度におけるC(y)。 |
E(y): |
当該事業年度における一般管理費中の物件費。E(y-1)は直前の事業年度におけるE(y)。 |
P(y): |
当該事業年度における人件費(退職手当を含む)。P(y-1)は直前の事業年度におけるP(y)。 |
Pr(y): |
当該事業年度における事業経費中の人件費。Pr(y-1)は直前の事業年度におけるPr(y)。 |
Pc(y): |
当該事業年度における一般管理費中の人件費。Pc(y-1)は直前の事業年度におけるPc(y)。 |
R(y): |
当該事業年度における事業経費中の物件費。R(y-1)は直前の事業年度におけるR(y)。 |
T(y): |
当該事業年度における公租公課。 |
ε(y): |
当該事業年度における特殊経費。重点施策の実施、事故の発生、退職者の人数の増減等の事由により時限的に発生する経費であって、運営費交付金算定ルールに影響を与えうる規模の経費。各事業年度の予算編成過程において、当該経費を具体的に決定。ε(y-1)は直前の事業年度におけるε(y)。 |
α1: |
一般管理効率化係数。中期目標に記載されている一般管理費に関する削減目標を踏まえ、各事業年度の予算編成過程において、当該事業年度における具体的な係数値を決定。 |
α2: |
事業効率化係数。業務の効率化等を勘案して、各事業年度の予算編成過程において、当該事業年度における具体的な係数値を決定。 |
β: |
消費者物価指数。各事業年度の予算編成過程において、当該事業年度における具体的な係数値を決定。 |
γ: |
業務政策係数。各事業年度の予算編成過程において、当該事業年度における具体的な係数値を決定。 |
δ: |
自己収入政策係数。過去の実績を勘案し、各事業年度の予算編成過程において、当該事業年度における具体的な係数値を決定。 |
λ: |
収入調整係数。過去の実績における自己収入に対する収益の割合を勘案し、各事業年度の予算編成過程において、当該事業年度における具体的な係数値を決定。
|
σ: |
人件費調整係数。各事業年度予算編成過程において、給与昇給率等を勘案し、当該事業年度における具体的な係数値を決定。
|
[中期計画予算の見積りに際し使用した具体的係数及びその設定根拠等]
上記算定ルール等に基づき、以下の仮定の下に試算している。ただし、平成16年度については、決定額を計上。
・ |
運営費交付金の見積りについては、ε(特殊経費)は勘案せず、α1(事業効率化係数)を各事業年度1%の縮減、α2(一般管理費効率化係数)を各事業年度3.2%(平成15年度予算額を基準額として中期計画期間中に15%縮減)の縮減とし、λ(収入調整係数)を一律1として試算。 |
・ |
事業経費中の物件費については、β(消費者物価指数)は変動がないもの(±0%)とし、γ(業務政策係数)は一律1として試算。 |
・ |
人件費の見積りについては、σ(人件費調整係数)は変動がないもの(±0%)とし、退職者の人数の増減等がないものとして試算。 |
・ |
自己収入の見積りについては、δ(自己収入政策係数)は据え置き(±0%)として試算。 |
・ |
受託収入の見積りについては、過去の実績を勘案し、一律据え置きとして試算。 |
2 収支計画
平成16年度〜平成20年度収支計画
(単位:百万円) |
区別 |
金額 |
費用の部 |
|
経常費用 |
|
業務経費 |
140,797 |
一般管理費 |
8,277 |
受託費 |
785 |
減価償却費 |
15,350 |
財務費用 |
0 |
臨時損失 |
- |
収益の部 |
|
運営費交付金収益 |
132,565 |
受託収入 |
785 |
その他の収入 |
16,509 |
資産見返負債戻入 |
15,350 |
臨時利益 |
- |
|
|
純利益 |
- |
目的積立金取崩額 |
- |
総利益 |
- |
|
[注1]退職手当については、役員退職手当支給基準及び職員退職手当支給基準に基づいて支給することとなるが、その全額について、運営費交付金を財源とするものと想定している。
[注2]厚生年金基金の積立不足額については、科学技術厚生年金基金において回復計画を策定し、給付の削減、掛金の引き上げ等の解消方法を検討した上で、必要な場合は、人件費の範囲内で特別掛金を加算し、その解消を図ることとしている。
[注3]各欄積算と合計欄の数字は四捨五入の関係で一致しないことがある。
3 資金計画
平成16年度〜平成20年度資金計画
(単位:百万円) |
区別 |
金額 |
資金支出 |
|
業務活動による支出 |
182,906 |
投資活動による支出 |
2,275 |
財務活動による支出 |
0 |
次期中期目標の期間への繰越金 |
0 |
資金収入 |
|
業務活動による収入 |
182,906 |
運営費交付金による収入 |
151,372 |
補助金収入 |
14,240 |
受託収入 |
785 |
その他の収入 |
16,509 |
投資活動による収入 |
|
施設整備費による収入 |
2,275 |
財務活動による収入 |
0 |
前期中期目標の期間よりの繰越金 |
- |
|
[注]各欄積算と合計欄の数字は四捨五入の関係で一致しないことがある。
IV 短期借入金の限度額
短期借入金の限度額は59億円とする。短期借入金が想定される事態としては、運営費交付金の受入れの遅延、受託業務に係る経費の暫時立替等の場合である。
V 重要な財産の処分又は担保の計画
なし
VI 剰余金の使途
決算において剰余金が生じたときは、重点研究開発その他の研究開発、設備の整備、広報・情報提供の充実の使途に充てる。
IV その他の業務運営に関する事項
1 施設・設備に関する計画
平成16年度から平成20年度に取得・整備する施設・設備は次のとおりである。
(単位:百万円) |
施設・設備の内容 |
予定額 |
財源 |
地球深部探査船「ちきゅう」の建造 |
14,240 |
船舶建造費補助金 |
研究所用地取得・施設整備 |
2,275 |
施設整備費補助金 |
|
[注] 金額については見込みである。
なお、上記のほか、中期目標を達成するために必要な施設の整備、用地取得、大規模施設の改修、高度化等が追加されることがあり得る。また、施設・設備の老朽度合等を勘案した改修等が追加される見込みである。
2 人事に関する計画
(1)方針
・ |
業務運営の効率的、効果的推進を図るため、優秀な人材の確保、適切な職員の配置、職員の資質の向上を図る。 |
・ |
研究の活性化、研究者の流動性の向上を図るため、若手研究者については原則として任期付研究者として採用することとし、また、任期の定めのない職員を採用する場合は、研究者としての能力が当該職務にふさわしい人材を選考する。 |
・ |
適切な処遇に配慮しつつ、国内外から幅広く優れた研究者を確保する。 |
・ |
研究の流動性向上を推進する目的で、任期の定めのない研究者および研究支援者・技術者について年俸制の導入に取り組む。 |
(2)人員に係る指標
業務の効率化を進め、常勤職員数(任期制職員を除く)については削減を図る。
(参考1)
期初の常勤職員数 331人
期末の常勤職員数の見込み 326人
(参考2)
中期目標期間中の常勤職員の人件費総額見込み 16,187百万円
ただし、上記の額は、役員報酬並びに職員基本給、職員諸手当、超過勤務手当、休職者給与、退職手当及び社会保険料等に関わる事業主負担分等に相当する範囲の費用である。
3 能力発揮の環境整備に関する事項
職員の資質向上を図るため、法令・知識の習得のための各種研修制度の充実を図る。職員が働きやすく自己の能力を最大限発揮できるように、職場環境の整備を推進する。
|