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日本の梅雨の周期を解明 -梅雨前線の年々変動に及ぼす西太平洋の 大気海洋相互作用のメカニズム- |
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概要 独立行政法人海洋研究開発機構(理事長 加藤康宏)の地球環境フロンティア研究センター水循環変動予測研究プログラムの冨田智彦研究員(熊本大学理学部兼任)、吉兼隆生研究員及び安成哲三プログラムディレクター(名古屋大学水循環研究センター兼任)の共同研究チームは、気象衛星データをもとにした過去約25年の全球降水量データより、アジアモンスーンの一部である、日本付近の梅雨前線の活動には顕著な2年周期があり(図1)、これには、フィリピン東方沖の海水温の2年周期変動と密接な関わりがあることを明らかにした。また、この解析データ(注1)から、1990年代に入って日本付近の梅雨前線の活動が全般的に活発化していることが分かった(図2)。 この成果は、近日中にアメリカ気象学会のJournal of Climateに掲載される。 背景 梅雨期の降水は、日本の夏の水資源にとってなくてはならないものであり、同時に甚大な自然災害をももたらす。梅雨前線の年々変動特性、及びそのメカニズムを解明することは、水資源の管理、防災の観点からも極めて重要な課題である。今回の研究では、梅雨前線の年々変動に関する周期性の特徴、そしてその周期変動に関する西太平洋での大気と海洋の相互作用のメカニズムを、特に西太平洋の海水温とそれに伴う大気の南北方向の鉛直循環(子午面循環)の変動に着目して解明した。 成果 梅雨前線の活動には活発(不活発)な年の翌年は不活発(活発)になりやすいという2年周期的な傾向がある。近年では去年の多雨、今年の少雨の記憶が新しい(参考1)。この2年周期的特性は、BO(Biennial Oscillation)モードと呼ばれ、日本付近で降水量が多い状態をBOプラスと言い、降水量が少ない状態をBOマイナスと定義する。BOモードは、フィリピン東方沖の海水温の変動と対流活動、そしてその地域を中心とした南北方向の循環と密接に関係している。BO モードがプラスの時は、フィリピン東方沖の海水温は低く、そこでの対流活動も不活発で、日本付近での高気圧性の循環(下降流)が平年より弱まるため、梅雨前線の活動が活発になる。BOモードがマイナスの時はフィリピン東方沖の海水温は上昇し、対流活動が活発化され、日本付近での下降流が平年より強まるため、梅雨前線の活動は不活発となる(図3,参考2)。 また、近年の梅雨前線のより継続的な活発化は、シベリアの温暖化や太平洋の海水温が上昇傾向(エルニーニョ的な状態の持続)にあることから暖冬が続き、日本付近の海水温が冬から夏まで高くなっていることに関係していることが考えられる。 これらの結果は、梅雨前線の活動に代表される日本の初夏の天候の予測には、日本付近から西部熱帯太平洋にいたる地域での冬から夏にかけてのモンスーン活動と大気海洋相互作用のリンクの解明が重要であることを示している。 注1:使用した解析データ
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