平成17年3月8日
海洋研究開発機構
インドネシア技術評価応用庁
海洋調査船「なつしま」によるインドネシア・スマトラ島沖緊急調査
(前半:平成17年2月18日〜3月4日)結果について(速報)

1.概要
 独立行政法人海洋研究開発機構(理事長 加藤康宏)は、インドネシア技術評価応用庁(BPPT)と共同で、同機構が有する海洋調査船「なつしま」(1,739トン)及び無人探査機「ハイパードルフィン」等を用いて、平成17年2月18日から3月4日までの18日間(前半)、インドネシア・スマトラ島沖の震源海域周辺において、スマトラ島沖地震の震源域海底を中心とした調査を行った。海底調査は、船に搭載された高精度音響測深器による海底地形図の作成、「ハイパードルフィン」による海底の直接観測による海底地形変動探査及び海底地震計を用いた余震分布観測を実施した。
 本調査は、文部科学省の平成16年度科学技術振興調整費緊急研究制度(課題名:スマトラ島沖大地震及びインド洋津波被害に関する緊急調査研究)により実施している。

2.現場海域での調査前半(平成17年2月18日〜3月4日)の内容
1) 海洋研究開発機構及び東京大学地震研究所所有の短期設置型海底地震計17台、東京大学地震研究所所有の長期設置型海底地震計2台の設置を行い、震源域近傍において余震観測を開始した。地震計の回収について短期設置型は調査の後半最終日(3月22日)前を予定し、長期型は別途、機構の調査船等にて4ヶ月程度を目途に回収する予定である。
(別紙1観測地点図参照)
2) ハイパードルフィンに搭載された超高感度ハイビジョンカメラを使って、世界で初めて震源域の近傍での海底観察を行い、斜面崩壊による亀裂の発見や崩壊した崖、その下流側に発達する海水の濁りの層等を視認し、今回の地震によって規模の大きな斜面崩壊が生じたことを明らかにした。(別紙2)
3) 今回の地震で海底面が最も大きく変位した海域で、約3,000平方kmにおよぶ精度の高い海底地形図を作成すると同時に、シングルチャンネル反射法地震波探査(*)を行い、この海域での海底変動の様子を確認した。
4) 震源近傍に棲む底棲生物の死滅をはじめとして、巨大地震や大津波による海底表層での様々な環境変動を理解する、海底地震発生後の海底面観測データを世界で初めて得ることができた。
 
*シングルチャンネル反射法地震波探査:
エアガンにより発信した音波(地震波)が比較的浅い海底や地層境界で反射され、海面に戻った音波を「なつしま」から曳航している受信ケーブルで受信し、その記録を解析することにより海底下の構造を調査する方法。

3.現場海域での調査後半(平成17年3月10日〜3月22日)の予定
  調査の後半では、調査前半で得られた様々な結果に基づき、引き続き「なつしま」及び「ハイパードルフィン」等を用いて、断層等の地殻変動の特定を目指すとともに、海底地形図の作成、海底地形変動探査及び余震分布観測を実施する。調査海域は海溝側の外縁隆起帯を中心に、スマトラ地震を引き起こした主地震断層と様々な海底変動の様子を調査する。
  なお、日々の調査報告については、当機構のホームページにおいて報告することとしている。

4.現場海域での調査結果に基づく詳細な分析・解析
  現場海域での調査終了後、調査によって得られた観測データ等に基づき、当機構において、以下の項目に関する詳細な分析・解析を行う予定。
1) 今回設置した海底地震計により、震源近傍でしか求めることができないマグニチュード3クラス以下の微小地震を含む余震の分布を求めることができるものと考えている。この余震分布を詳細に分析することにより、今回の地震を引き起こした地震断層面等の形状を詳しく把握できるとともに、マグニチュード9を超える巨大地震における断層破壊伝播のメカニズムの解明に特に有用なデータを提供できるものと考えている。
2) 今回の現場観測により精度の高い海底地形データが得られることで、今後起こりうるスマトラ島中・南部での巨大地震時の津波の伝播と波高に関するハザードマップ作成に寄与する。同時に、津波の波形解析等から求める海底面変動シミュレーションモデルと、今回の精度の高い海底地形の調査から求める海底面の変動とを比較することで、今回の津波の発生メカニズムをより確かなものにすることができると考えている。

問い合わせ先
  海洋研究開発機構
   地球内部変動研究センター
   海洋底ダイナミクス研究プログラム 木下
     TEL046-867-9323
   総務部普及・広報課 高橋、五町
     TEL046-867-9066
     FAX046-867-9055
   ホームページ http://www.jamstec.go.jp/