平成17年3月28日
海洋研究開発機構
インドネシア技術評価応用庁
海洋調査船「なつしま」によるインドネシア・スマトラ島沖緊急調査結果について

1.概要
 独立行政法人海洋研究開発機構(理事長 加藤康宏)は、インドネシア技術評価応用庁(BPPT)と共同で、同機構が有する海洋調査船「なつしま」(1,739トン)及び無人探査機「ハイパードルフィン」等を用いて、地震直後の海底変動について、震源近傍の海底調査を行った。
 調査航海は、二つに分けられ、前半(シンガポール〜ペナン)2月18日から3月5日まで、後半(ペナン〜バリ)3月10日から3月19日までの計26日間に渡って、インドネシアアチェ州沖の海域にて調査を行った。この航海では日本、インドネシアの乗船研究者をはじめ、ドイツ、米国からの研究者を含め国際的な調査航海となった。
 海底調査は、船に搭載された高精度音響測深機(マルチナロービーム)による海底地形図の作成、「ハイパードルフィン」による海底の直接観測による海底地形変動探査及び海底地震計を用いた余震分布観測を実施した。
 本調査は、文部科学省の平成16年度科学技術振興調整費緊急研究制度(課題名: スマトラ島沖大地震及びインド洋津波被害に関する緊急調査研究)により実施している。

2.背景
 2004年12月26日スマトラ沖を震源とするマグニチュード9.0の地震が起こり、それに引き続いてインド洋周辺各国を襲う巨大津波が発生した。これによってこれまでに約30万人を越える犠牲者とインドネシアをはじめとする地域で大きな被害を被った。この地震と津波は、今回の災害の原因究明と復興を願う国際的な枠組みのなかで、調査検討がなされている。

3.調査内容
 調査航海(別紙1:調査海域、別紙2:調査航跡図)では、
1)マグニチュード9クラスのスマトラ地震の地震発生や破壊伝播のメカニズムの理解のため、震源近傍で最も大きく海底が変位したと推定される場所での地震直後の海底変動についてハイパードルフィンによる直視観察
2)その周辺海域での高精度の余震分布の調査を目的とし、マルチナロービームを用いた海底地形調査、海底地震計による観測、ハイパードルフィンによる海底直視観察等
が行われた。


4.成果
今回の調査により
1)ハイパードルフィンのハイビジョンカメラにより、震源域の海底下の広範囲で、崖の崩落や地滑り等を世界で初めて発見(2月22日、3月19日(別紙3別紙4))した。
2)今回の地震で海底面が大きく変位したと推測される海域において精度の高い海底地形図を作成(約4,000平方km)した。
3)短期観測(約2週間)用の海底地震計(17台)により、約3,000回の余震を観測(3月13日)(長期観測(約4ヶ月程度)用は別途機構の調査船等により回収する予定)
4)海底地形調査によって得られた海底地形図等の分析により、大規模な亀裂(別紙3:最大幅約40m、落差約15m)や崩落が、水深約2,300mにおいて、約45kmにわたって断続的に繋がっていることを確認(3月22日)した。

5.今後の予定
 今後、現地調査によって得られた海底地形図、余震データ、画像データ等の分析を行い、地震を起こした断層の場所・大きさ・傾き、開放エネルギーの大きさ、変形破壊プロセス及び周辺地形に及ぼした影響等を明らかにし、今回の地震が引き起こされたメカニズムの解明に貢献するとともに、さらにはアジア地域における津波被害軽減システムの構築や、我が国の防災科学技術の推進にも貢献していきたい。


             問い合わせ先
              海洋研究開発機構
              地球内部変動研究センター
               海洋底ダイナミクス研究プログラム 木下
                 TEL046-867-9323
               総務部普及・広報課 高橋、五町、立田
                 TEL046-867-9066 FAX046-867-9055
              ホームページ http://www.jamstec.go.jp/