海洋研究開発機構(理事長 加藤 康宏)は、相模湾に海洋投棄されたマッコウクジラ遺骸に付く生物群集に関する総合調査を実施いたしました。その結果、マッコウクジラの肋骨に大量に付着しているゴカイの仲間がこれまで報告されていなかった新種である可能性が高いことが判明しましたのでご報告いたします。
概要
平成17年度無人探査機「ハイパードルフィン」潜航調査「NT06-01 leg2航海」(平成18年1月17日〜22日、首席研究者:極限環境生物圏研究センター 海洋生態・環境研究プログラム サブリーダー 藤原 義弘)では、相模湾の熱海市沖の水深900mに沈められたマッコウクジラの遺骸に棲息する生物群を詳細に観察しました。その結果、以下の研究成果を得ることができました。
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マッコウクジラの遺骸は、平成17年4月16日に沈められてからわずか9ヶ月の間にほぼ白骨化した。(写真1) |
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唯一大量に残っている軟体部は脳油器官を含む頭部の軟組織で、その周辺にエゾイバラガニが大量に集まっており、軟組織を摂食する様子が見られた。(写真2,3) |
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マッコウクジラの肋骨にはOsedax(俗称:ゾンビ・ワーム ※1)と呼ばれるゴカイの仲間(多毛類)が大量に付着していた。(写真4,5,6)
※1:「ゾンビ・ワーム」は2004年に初めてカリフォルニア沖の鯨骨から発見・報告された動物で、Osedax属の多毛類。Osedaxの仲間は現在世界で3種が報告されているが、いずれも鯨骨から発見されている。この動物は鯨骨中の脂肪分を分解する細菌を体内に共生させ、その細菌により養われていると考えられている。
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今回発見したOsedaxの仲間は、形態的特徴及び遺伝子解析の結果から、これまで3例報告されていたもの以外の新種の可能性が極めて高いことがわかった。 |
以上の成果については、近日中に論文発表の予定です。また、今回発見した
Osedaxの仲間は、2月中に新江ノ島水族館(館長 堀 由紀子、神奈川県藤沢市)において公開を開始する予定です。