平成18年6月14日
独立行政法人理化学研究所
独立行政法人海洋研究開発機構

理化学研究所と海洋研究開発機構が開発・利用で基本協定締結
−世界最速次世代スーパーコンピュータを目指し連携−

   独立行政法人理化学研究所(野依良治理事長)と独立行政法人海洋研究開発機構(加藤康宏理事長)は、文部科学省の「最先端・高性能汎用スーパーコンピュータの開発利用」プロジェクト(以下「本プロジェクト」という。)を推進するための、連携・協力に関する基本協定を6月14日に締結します。
   理研は、平成17年10月、文部科学省より「次世代スーパーコンピュータ」の開発主体として選定され、平成18年1月1日に野依理事長を本部長とする「次世代スーパーコンピュータ開発実施本部」を設置し、このプロジェクトに取り組んでいます。
   我が国では、過去にナショナルリーダーシップシステムとして、「数値風洞(開発期間平成元年〜平成5年)」(航空技術研究所(当時))、CP−PACS(開発期間平成4年〜平成8年)」(筑波大学)、「地球シミュレータ※1(開発期間平成9年〜平成14年)」(宇宙開発事業団、日本原子力研究所、海洋科学技術センター(全て当時))と開発を行ってきており、その完成時には世界トップの性能を示し、各分野の研究でブレークスルーを実現しました。次期ナショナルリーダーシップシステムの開発には、現在も世界トップクラスの性能である地球シミュレータ計画における開発経験及び運用経験を、十分に活かすことが重要です。
   海洋研究開発機構が運用している「地球シミュレータ」は、当初目的であった地球環境変動予測のみならず、産業の振興につながる研究にも貢献し、自動車の衝突シミュレーションを行うなど、幅広い分野でこれまでにない高度かつ高精度のシミュレーションを可能としました。この開発及び運用における知見を活用し、次世代スパコン開発の効果的、効率的な推進を目指すために、相互に両機関の研究開発能力や人材等を活かした連携・協力を行います。

協力内容

最先端・高性能汎用スーパーコンピュータの開発及び運用に関する情報交換、共同研究の実施、人材交流、人材養成、産業界及び他機関との連携・協力を実施するのに必要な事項等の実施を基本として今回の基本協定書を締結します。具体的な内容についてはその都度個別契約等を締結していきます。

協定期間

平成18年6月14日から平成22年3月31日

1.基本協定締結へ至った経緯

   理研では、文部科学省の「最先端・高性能汎用スーパーコンピュータの開発利用」プロジェクト(以下「本プロジェクト」という。)の開発主体として、平成18年1月1日から野依理事長を本部長とする「次世代スーパーコンピュータ開発実施本部」を設置し、次世代スーパーコンピュータの開発に取り組んでいます。スーパーコンピューティングの分野では、平成12年に分子動力学シミュレーション専用計算機が世界最速コンピュータとしてゴードンベル賞の「ピーク・パフォーマンス賞」を受賞し、その後もスーパーコンピューティングの研究開発を続け、平成16年には情報基盤センターが世界初となる異機種統合スーパーコンピュータ(理研スーパー・コンバインド・クラスタ)※2を開発し運用するなどの実績をもっています。
   一方、海洋研究開発機構は、国内最高性能のスーパーコンピュータである「地球シミュレータ」を運用しています。この地球シミュレータは、2年半にわたりLINPACK(リンパック)※3による世界最高性能を保持し、現在でもその実効性能は世界トップクラスです。また、運用面に関しても、産業界での利用も促進されており、スーパーコンピュータの供用についての経験を有しています。
   両機関が有するスーパーコンピュータの開発運用及びシミュレーション分野における知見を両機関が連携・協力して活用していくことは、本プロジェクトの推進に極めて有効であることから、今回の基本協定の締結をするに至ったものです。

2.基本協定の範囲

(1) 情報交換
(2) 共同研究などによる研究開発
(3) 人材交流や人材養成
(4) 産業界や他機関との連携・協力
(5) その他本協定の目的を達成するために必要な事項

3.「最先端・高性能汎用スーパーコンピュータの開発利用」プロジェクトについて

   本プロジェクトは、世界最先端・最高性能の「次世代スーパーコンピュータ」の開発・整備及び利用技術の 開発・普及を目的としています。
   長期的な国家戦略を持って取り組むべき重要技術(国家基幹技術)である「次世代スーパーコンピュータ」を平成22年度の稼働を目指して開発し、理論、実験と並び、現代の科学技術の方法として確固たる地位を築きつつ計算科学技術をさらに発展させ、今後とも我が国が科学技術・学術研究、産業、医・薬など広汎な分野で世界をリードし続けるため、

(1) 最先端・最高性能の「次世代スーパーコンピュータ」の開発
(2) スーパーコンピュータを最大限活用するためのソフトウエアの開発と普及
(3) 開発するスーパーコンピュータを中核とする世界最高水準のスーパーコンピューティング研究教育の拠点の形成

を文部科学省のイニシアティブにより、開発主体を中心に産学の密接な連携の下、一体的に推進しています。
参考資料:別紙参照

<報道担当・問い合わせ先>
   (問い合わせ先)
独立行政法人理化学研究所
次世代スーパーコンピュータ開発実施本部
企画調整グループ 川井和彦、内田紀子
TEL:048-467-9265 FAX:03-3216-1883
独立行政法人海洋研究開発機構
地球シミュレータセンター
研究推進室 小原孝文
TEL:045-778-5751 FAX:045-778-5490
(報道担当)
独立行政法人理化学研究所 広報室 報道担当
TEL:048-467-9272 FAX:048-462-4715
独立行政法人海洋研究開発機構 報道室 大嶋真司
TEL:046-867-9193 FAX:046-867-9199

<補足説明>

※1 地球シミュレータ
   宇宙開発事業団、日本原子力研究所、海洋科学技術センター(名称、全て開発当時)が開発したスーパーコンピュータ。開発後2年半にわたり世界最速(LINPACKベンチマークテストによる)を誇ったベクトル型並列スーパーコンピュータ。総プロセッサ数5120個、理論演算性能は40T(テラ)FLOPS。コンピュータ内に仮想地球を作り、大気や海水、地殻の状態を高速かつ高精度にシミュレーションでき、中長期的な環境変動や災害などの予測、解明を目的に開発、使用されている。また、バイオ、ナノ分野など先進分野でも利用されている。

※2 理研スーパー・コンバインド・クラスタ:RSCC
   理研情報基盤センターが導入したスーパーコンピュータシステムの名称。RSCCは、2048CPUのLinuxクラスタシステム(総演算性能 12.4TFLOPS)を中核に、単一プロセスで大量メモリが必要な計算用の大規模メモリ計算機(共有メモリ型ベクトル計算機NEC SX-7/32,主記憶256GB,282.5.GFLOPS)、利用窓口となるフロントエンド計算機、高速磁気DISK装置(20TB)、テープライブ ラリシステム(200TB)で構成されている。
   日刊工業新聞社が主催する「第34回 日本産業技術大賞」の日本産業技術大賞・文部科学大臣賞を受賞。

※3 LINPACK
   LINPACK とは、米国のテネシー大学のJ. Dongarra 博士によって開発された行列計算による連立一次方程式の解法プログラムであり、スーパーコンピュータの世界的な順位を示すTop500リスト(毎年6月と11月に発表)を作成するためのベンチマークとして用いられている。