平成18年7月24日
独立行政法人海洋研究開発機構

地球深部探査船「ちきゅう」の今年度の試験運用計画について

   海洋研究開発機構(理事長:加藤康宏)は、平成19年秋からの国際運用開始を目指し、昨年7月以来、地球深部探査船「ちきゅう」の試験運用を行ってきておりますが、このたび関係機関との調整の結果、今年度の試験運用計画が決まりましたのでご報告します。

1.下北半島東方沖掘削試験
    「ちきゅう」は、下北半島東方沖(水深約1,200m)(別添-1)において掘削予定深度(海底下)約2,200mを目指し、本船として初のライザー掘削を実施するため青森県八戸港を8月7日に出港し、掘削海域において、残されていた以下の5項目のシステム総合試験および「ちきゅう」システムの操作習熟訓練を実施する予定です。

【システム総合試験】
(1)ライザーパイプ及びBOP(噴出防止装置)の降下と海底面への設置
(2)ライザーパイプ・BOPの緊急離脱試験
(3)ケーシングパイプの設置とセメンチング
(4)「ちきゅう」コア採取システム(3種類のコア採取装置)の実海域試験
(5)物理検層(ワイヤーラインロギング)のシステム試験

【主な操作習熟訓練項目】
(1) ヘリコプター、サプライボートを使用した人員・物資の輸送方法の検証・習熟
(2) ライザー掘削による堀屑の処理、廃泥水処理の検証
(3) 船上・陸上の安全保安管理システムの確認・最適化
(4) 研究区画におけるコア試料処理手順、試料の品質管理手順の最適化
(5) 物理検層データの船上処理手順の構築 等

【日程】(時期については、荒天などによる遅延が発生することもあります。)
8月中旬   ケーシングパイプ設置及びセメンチングユニット試験
8月中・下旬 ライザーパイプ及びBOP(噴出防止装置)の降下並びに海底設置試験
8月下旬頃  ライザーパイプ及びBOPの緊急離脱システム(EDS)性能試験
9月上旬   試料(コア)採取システム性能試験
9月中・下旬 物理検層(ワイヤーラインロギング)及びシステム性能試験
9月下旬頃  海底下約2,200mへの到達

別添-2に試験掘削孔の概念図を示します。

2.下北半島東方沖掘削試験以降の計画
    下北半島東方沖掘削試験以降の試験運用計画については、来年8月までの試験運用期間中に出来る限りの掘削技術の蓄積を行うために関係機関と具体的計画を協議しておりましたが、大深度科学掘削技術の蓄積と我が国への技術移転を目的として、オーストラリアの資源開発会社(ウッドサイド社)からノルウェーの掘削事業者(シードリル社)を経由して、当機構が受託する掘削作業において実施することと致しました。

(1)

時期:平成18年11月頃から平成19年8月頃まで
下北半島東方沖掘削試験が終了後回航
来年秋からの国際運用開始に間に合う時期に日本帰港。

(2) 海域(別添-3)及び掘削深度:(掘削深度、掘削孔数は変更される場合があります) ㈰ケニア沖  水深約2,200m 掘削深度2,500m ㈪ケニア沖  水深約2,200m 掘削深度3,900m ㈫オーストラリア北西沖 水深約1,000m 掘削深度3,400m ㈬オーストラリア南岸沖 水深約1,500m 掘削深度4,400m
※ 各海域の詳細な掘削孔計画は今後検討・調整されることになります。
(3) 各海域の特徴と試験運用上の位置づけ
     今回の計画は、今後、「ちきゅう」により大深度科学掘削を着実に推進していく上で必要となる様々な地質条件、海域条件下での掘削など、我が国周辺海域では得ることが困難な掘削技術の蓄積と我が国への掘削技術の移転を目的として実施します。また、今回の試験により、国際運用時の本格ライザー掘削が円滑に実施されることとなります。
   ケニア沖では水深2,000m級の大水深ならびに強潮流のある海域でのライザー掘削ならびに砕屑岩(さいせつがん)、炭酸塩岩、泥質岩など様々な地質構造における掘削、オーストラリア沖では海底下4,000mを超える大深度のライザー掘削ならびに炭酸塩岩、泥質岩、砂岩、火砕岩など様々な地質構造における掘削に必要な技術が蓄積されることが期待されます。
お問い合わせ先:
独立行政法人海洋研究開発機構
(「ちきゅう」試験運用計画について)
地球深部探査センター
企画調整室長 田中 武男 TEL:045-778-5640
(報道について)
経営企画室
報道室長  大嶋 真司 TEL:046-867-9193


参考

シードリル(Seadrill Offshore AS)社概要

経歴  船舶運用会社“Smedvig”としてノルウェー Stavanger に設立
1972 年 掘削コントラクター部門設立
1973 年 最初の海洋掘削リグ”West Venture” 建造
2004 年 「ちきゅう」プロジェクトに掘削コントラクターとして参画
2006 年 ”Seadrill”社と合併し、”Seadrill Offshore AS”に社名変更
概要  事業拠点:ノルウェー Stavanger 市(本社所在地:バミューダ)
従業員数: 4,500 名
売上: 42億クローネ(800 億円)2005 年
保有リグ:
ジャッキアップ型 6  セミサブ型 2
ドリルシップ型 1   テンダー型 12
合計 21 基
主な稼動地域:
北海(ノルウェー、英国領)
アフリカ
東南アジア

ウッドサイド(Woodside Energy Ltd.)社概要

設立  1953年
国籍  オーストラリア(本社 パース)
概要 ・ 豪州で最大の石油・天然ガス探査・生産会社
・ 出資者:シェル 34.27%など
・ 資本金:260億豪ドル(2兆3千億円)
・ 職員数:3000人以上
・ 海外事務所:英国、日本(内幸町)、韓国、米国、中国、ケニア等
・ 豪州最大の天然ガス生産(6千万バーレル/年(石油換算))
・ 天然ガスや油田の探査・生産会社としては世界有数の技術力を保有
・ 主な取引先:東京ガス、大阪ガス、中部電力、東京電力など日本企業が多数
・ 豪州北西大陸棚におけう天然ガス田開発においては、三菱商事及び三井物産のコンソーシアム等と共同出資プロジェクトを実施

ページトップへ