別紙
研 究 の 概 要

1.テーマ
 メキシコ湾における堆積物中の間隙水圧上昇機構および流体移動過程の解明

2.概要
 地殻を構成する堆積物や岩石内部には、流体*が様々な状態で存在している。この流体の圧力(間隙水圧)が上昇すると、堆積物や岩石の強度が著しく下がることが知られており、流体は斜面安定性や地震発生機構に大きな影響を与えると考えられている。また、流体の移動は、地殻下部からの熱の伝搬や物質移動の役割を担うため、この移動プロセスやその要因を探ることは、石油、天然ガス等の炭化水素の移動メカニズムや、流体移動により供給されるエネルギーに依存した地殻内微生物生態系の解明につながる。このため、流体はメタンハイドレートや石油資源の利用、地殻内微生物生態系等の解明のための重要な鍵であると考えられている。
 本研究航海では、メキシコ湾の2地域において、掘削・各種計測を行う。 Brazos-Trinity地域は、帯水層(粒子間の隙間が多く、流体に満たされた透水性の地層)の上に、透水性の低い泥質層が堆積している。この地域において、泥質層の厚さすなわち上載荷重の異なる地点における流体挙動等を分析するため、4地点において掘削を行う。もう1つのUrsa地域においては、巨大な地すべり岩体が発達しており、その活動年代や、斜面の安定性等を分析するため、2地点において掘削を行う。この2地域の掘削において具体的には、堆積物、流体および微生物試料を連続的に採集し、各種物性測定や堆積・地質構造の記載、流体に含まれる炭化水素成分の解析、微生物学的検討を行う。また、間隙水圧、温度、応力等の原位置測定(孔井内で行われる試験)を併せて行うことにより、総合的に地質の流体移動に与える影響を評価する。
 これらの研究により、大陸棚斜面の安定性、湧水の特徴やメタンハイドレート形成のプロセス、そして地殻内部の流体移動などを支配している要因が明らかになると期待されている。

*ここでいう流体とは、地層内に存在する水、石油、天然ガス等の液体および気体を表す。