マイティーホエールは、三重県度会郡南勢町の五ヶ所湾湾口で、1998年から発電実験を行っています。幅30m、長さ50m。3台の発電機を搭載しています。波の進入に対して直角に空気室が並ぶターミネーター型です。アテニュエーター型の「海明」よりも、波エネルギーから空気エネルギーへの変換効率が高くなります。


 地球温暖化を促進する温室効果ガスを排出しないクリーンな、そして再生可能なエネルギーには、太陽光、風力、波エネルギーなどがあります。その中でも波エネルギーは、太陽光の20〜30倍、風力の5倍ものエネルギー集積度があると言われ、新エネルギーとして有望です。また、全世界の波エネルギーは1〜10tW(テラワット)と見積もられており、これは全世界で消費される電力量に相当するほどです。
 JAMSTECでは、1978年から大型浮体式波浪発電装置「海明」の発電実験を開始しました。波エネルギーを空気エネルギーに変え(一次変換)、さらにタービン発電機によって発電(二次変換)します。1979年には、国際エネルギー機関(IEA)の国際共同研究として、「海明」で発電された電力を海底ケーブルによって、世界で初めて陸上の商用電源へ供給する試験も行いました。この電力は一般家庭で消費されました。大型浮体式波浪発電装置「海明」。長さ80m、幅12m。「海明」は、1978年8月から1986年3月まで山形県鶴岡市由良沖3kmの海上で発電実験を行いました。写真は第2期の発電実験のようすです。波は、船の形をした発電装置の前方から打ち寄せます。波の進入方向に空気室を連ねたアテニュエーター型です。
 「海明」の実験を踏まえ、実用化を目指したプロトタイプとして、沖合浮体式波力装置「マイティーホエール」が建造されました。1998年9月より三重県度会郡南勢町五ヶ所湾湾口沖合いに係留設置され、実海域での発電実験が行われています。マイティーホエールの発電方法は「海明」と同じですが、波エネルギーから空気エネルギーへの一次変換効率は、12%から50%へと大きく向上しました。陸上への送電だけでなく、沿岸海域の環境浄化のためのエネルギーとして使うことも期待されています。しかし、発電コストが高いという問題を抱えています。もう一つの大きな問題は、波が穏やかだと発電ができないことです。太陽光発電も組み合わせて、常時一定の発電ができるようにすることも考えられています。
 マイティーホエールは、波エネルギーを吸収することによって後ろの海域を静かにさせる「消波作用」があります。マイティーホエールを沖合いに設置することによって、波が荒くて利用しづらい湾を、養殖や海洋レジャーなどが可能な波の穏やかな海域にすることができます。海上空港などとして注目されている、海に浮かぶ巨大構造物「メガフロート」の周囲に設置するという構想もあります。波エネルギーを吸収することで、メガフロートの端の揺れを抑えることができます。陸上から送電しなくても電力を自給できるという利点もあります。
 海洋エネルギーを使った発電は世界中で注目されています。2001年、世界初の民間による商業波浪発電がイギリスで始まりました。自然地形を利用した海岸固定式の発電装置です。潮の干満による落差を利用した潮汐発電はフランスやカナダ、ロシアで実用化されています。海水の温度差を利用した発電方法なども研究・開発されています。


大型浮体式波浪発電装置「海明」。長さ80m、幅12m。「海明」は、1978年8月から1986年3月まで山形県鶴岡市由良沖3kmの海上で発電実験を行いました。写真は第2期の発電実験のようすです。波は、船の形をした発電装置の前方から打ち寄せます。波の進入方向に空気室を連ねたアテニュエーター型です。
マイティーホエールで発電された電力は、海域の環境浄化のためにも使われます。また、消波作用によって静穏化した沿岸は、養殖やレジャーに活用することができます。
マイティーホエールによる発電のしくみ
1 沖からの波によって前面にある空気室内の水面が上下します。
2 空気室内の空気が、空気室上のタービン部を通じて出入りします。このとき、空気の流れによって空気タービンが回転します。
3 空気タービンに連結された発電機が回転し、これによって発電が行われます。