人為起源CO2の排出による地球温暖化が進行している。最近の研究では、今世紀中に大気中のCO2濃度を一定濃度に安定化することができたとしても、その後百年以上にわたって地球温暖化とそれに伴う海面の上昇が続くと言われている。また、地球温暖化が進めば、CO2を吸収する海面の条件や、森林や土壌といった陸域生態系、栄養塩やプランクトンに関する海の生態系にも影響を与えるため、人為起源CO2排出量だけに注目していたのでは、CO2の安定化は達成できない可能性がある。本課題では、地球システム統合モデルを使用して、西暦2300年までの地球温暖化予測実験を行い、CO2安定化シナリオの下での、長期的な地球環境の変化を予測する。また、大気中のCO2濃度を安定化させる上で許容される人為起源CO2排出量を評価する。地球環境変化予測の結果を用いて、予測の不確定性の評価・低減のための実験や、自然災害分野への影響評価を行う。
地球システム統合モデルを改良し、西暦2300年までの地球温暖化予測実験を行う。このモデルは、従来の気候モデル(大気海洋結合気候モデル)に、大気-海洋-陸域炭素循環フィードバックや、大気化学-エアロゾルフィードバックといった生物・地球化学過程を組み合わせたものである。全球植生動態モデルの導入や、炭素循環モデルやエアロゾル輸送モデルの高度化、氷床モデルの改良などが計画されている。地球温暖化予測実験の結果を用いて、CO2安定化シナリオの下での、長期的な気温や海面高度の変化や、大気中のCO2濃度の変化を予測し、CO2濃度を一定値で安定化させる上で許容される人為起源CO2排出量を評価する。
詳細はこちら気候は植生の構造や機能を強く制約するが、植生の構造や機能もまた、炭素循環・水循環・太陽光エネルギー収支の変化を通じて、気候にフィードバック的な影響を与える。本課題では、このような過程を気候変動予測に含めるために、陸上生態系の機能(炭素や水の循環など)や構造(植生の分布や構成など)における短期的・長期的変化を予測する全球植生モデルを開発する。そしてモデルの信頼性を十分に検証した後に、このモデルを地球システム統合モデルへと結合することで、植生-気候間の相互作用が未来の地球環境に何をもたらすのか、計算実験を行う。
詳細はこちら従来の気候モデルによる気候予測において、最も不確定の大きな要素は「雲」のふるまいである。従来の気候モデルに比べて解像度を格段に向上した新しい数値モデル「全球雲解像モデル」により、雲の不確定性を低減することを目標としている。地球全体を数kmメッシュ(格子)に分割し、特に熱帯の積雲対流を直接シミュレートすることで、雲スケールから地球スケールのマルチスケール擾乱を同時にシミュレートする。これにより、雲のフィードバック効果を精緻化し、モンスーンや台風の将来予測の精度向上にも貢献することが期待される。
詳細はこちら地球温暖化予測には必ず不確実性が伴う。IPCC第4次評価報告書でも、CO2濃度シナリオ毎に予測値の幅を報告し、この点について注意を払っている。しかし、例えば予測幅の上限近くまで昇温する確率がどの程度あるかなど、具体的な確率を予測するまでにはいたっていない。そのような予測を行うためには、設定を少しずつ変えて非常に多数のシミュレーション実験を行う必要があり、コンピュータの計算能力や実験結果を整理する統計手法に高い水準が要求されるためである。本課題では、大気海洋結合気候モデルに加え簡略気候モデルも併用し、高度な統計手法を用いながら、確率的地球温暖化予測手法の確立を目指す。
詳細はこちら本研究は、2300年頃までの気候変動・海面上昇の長期予測結果を用いて、世界全 体の沿岸災害リスクを予測することを目標とする。ここでいう沿岸災害リ スクとは、世界規模の水没及び高潮氾濫によるリスクと特にアジアのメガデル タ・メガシティにおける複合的災害リスクである。このような沿岸災害リス クは、水没・氾濫予測域の面積、人口、資産(土地利用)などの指標を用いて行 う。本研究では、沿岸災害リスクの長期予測を行うことで、世界全体が地球 温暖化・海面上昇にうまく適応していくための施策検討の一助となることを目指 す。
詳細はこちら世界の主要穀物の中で、とりわけトウモロコシおよびダイズは、
中国、アメリカ、ブラジルなどに生産地域が局在している。
このような状況で、将来の気候変動に伴って発生する気象災害(とくに干ばつ)
は、これらの生産量にどのような影響を及ぼすのか、今後も安定した生産供給は
可能であろうか。
本研究は、気象災害影響予測モデルを作成し、最新の気候変化予測を利用して、
異常気象の発生場所と頻度の変化に基づいて、世界同時不作の可能性などに
ついて解析することにより穀物供給システムの安定性について予測評価を行う。