「人・自然・地球共生プロジェクト」課題2第6回連絡会議議事録

日時:平成15年2月17日(月) 14:00−16:00
場所:海洋科学技術センター横浜研究所 (横浜市金沢区昭和町 3173-25)
交流棟2階三好記念講堂

議事次第:

1. 開会挨拶

2. 進捗状況

温暖化・大気組成変化相互作用モデル開発グループ
温暖化―雲・エアロゾル・放射フィードバック精密評価 (久芳奈遠美)

PCC2001のレポートにもあるように、対流圏エアロゾルの間接放射強制力の見積もりはいまだに不確定性の大きい問題であり、その主な要因はエアロゾルと雲の関係が不確定であることによる。エアロゾルの中で雲粒の凝結核(Cloud Condensation Nuclei:CCN)として働くものの粒径分布や化学組成雲の中の上昇流速度によって雲粒の粒径分布が決まり、雲の反射率や光学的厚さなどの光学特性や雨の降り易さなどの降水効率が変わり、ひいては気候変動予測の中では放射収支や水循環にきてくる。これらの因果関係を明らかにするためには詳細雲モデルによる数値実験が不可欠である。この共生プロジェクトでは大気大循環モデル(GCM)でエアロゾルが雲の光学特性に及ぼす影響を評価するためのパラメタリゼーションを開発する。
現状のGCMの例をあげると、まずCCSR/NIES の場合は放射計算に用いる雲粒の有効半径を雲粒数密度から計算し、その雲粒数密度はエアロゾル数密度から算出するようになっている。ここで使われる式はエアロゾルが少ない時はエアロゾル数密度に比例して、多くなると一定値に近づくという事を表す式で、おおまかな傾向はあっているが、CCNとならないものも全部含めたエアロゾルの数の関数であるということと、上昇流が考慮されていないことが問題といえる。また、Max Plank Institute の ECHAN GCMの場合は、雲粒数密度はエアロゾル数密度と雲内上昇流速度の関数になっている。雲内上昇流速度はグリッド内平均上昇流速度から求める。格子の中での雲の割合、雲内の上昇流速度の求め方が課題である。
雲粒数密度はどのくらい小さいCCNまで活性化されて雲粒になることができるかということに左右されるが、それは雲内の過飽和度の最大値に依る。その最大値は上昇流速度とCCN粒径分布に依存する。またLagrange 的な最大値であるためLagrange 的な計算が妥当である。
そこで、フロンティアでは、GCMよりずっと細かい詳細雲モデルを開発し、数値実験によって雲の光学的性質や雲粒数密度を予測するパラメタリゼーションを開発している。いろいろな条件での数値実験の結果を統合して、CCNの過飽和度スペクトルと雲底での上昇流速度の関数として雲の中の過飽和度の最大値を予測する式を開発した。また雲内の最大過飽和度で活性化することのできるCCNの数と雲底での上昇流速度の関数として雲粒数密度を予測する式を開発した。さらに予測した雲粒数密度と雲の鉛直積算雲水量から雲の光学的厚さを予測する式も開発した。同様に、雲内各層の雲粒の有効半径を雲粒数密度と 雲底からの高度の関数で表すことも可能である。また、精度は落ちるが、CCNスペクトルから直接、雲粒数密度を予測する方法も開発した。これを用い、衛星観測などから独立に得られた雲の光学的厚さと鉛直積算雲水量から雲粒数密度を予測して、雲底での上昇流速度とあわせてCCN数密度を逆算する事が可能である。この方法はエアロゾルではなくCCNの情報を全球的に長期的に観測するのに非常に有効である。
研究方針としては、GCMに組み込むための、エアロゾル(CCN)の気候への影響を評価できるパラメタリゼーションを開発するために、まず、すでに現時点でGCMで用いられているパラメタリゼーションを検討し、ここで開発した詳細雲モデルによる数値実験の成果と合わせて、より良いパラメタリゼーションを開発していく。この際にはGCMの予報変数からどのようにしてサブグリッドスケールの雲を表すか、即ちグリッド内の雲の占める割合、雲内上昇流速度、雲の鉛直積算雲水量の算出などが問題になるが、この点に関しては他のグループと連携して解決していく。
今年度はCCSR/NIES GCM と ECHAN GCMの検討にとりかかり、その問題点の洗い出しと、それらを使った計算結果の検討をした。問題点としては、グリッド内の雲の割合の算出方法、雲内の上昇流速度の算出方法、雲水量から雨水量への変換時定数のパラメータの計算式などがあがっている。そして方針として、以下のことが合意されている。
  • エアロゾルの影響はCCNと上昇流速度のセットで扱う。
  • エアロゾルの情報はCCNの情報に焼き直す(始めは(NH4)2SO4, NaClなどできるところから)
  • 上昇流速度の導出は当初は現状のECHAM-GCMに従い、必要なら改良する。
  • 雲粒数密度の診断式をまず作る。これを発生項として雲粒数密度を予報変数とする事をめざす。タイムステップの長さによっては診断式で充分なこともあり得る。
  • 雲氷量を必要があればカテゴリー分けする(重力落下速度が大きく異なるので)。層の厚さに依っては不要かもしれない。
  • GCMのサブグリッドスケールの現象である雲量・雲内上昇流・雲の鉛直積算雲水量などをパラメタライズするためには、高分解能能全球モデル(icosahedron non-hydrostatic model解像度10km以下)、高分解能領域雲解像モデル(解像度100m以下)を使うことが必要である。

3. 連絡事項

(1)共生成果発表会(3月6,7日)

発表者は松野・伊藤・河宮。炭素循環サブグループの動向を中心に発表する予定。大気化学サブグループからの結果も多く盛り込みたい。

(2)運営委員会(3月24日)

他のプロジェクト、特に共生3との連携を中心議題にする予定。共生2・3間でサブグループレベルでの会合はいくつか既に開かれておりまたこれからも持たれる予定であるので、そこでの決定事項を報告する。

(3)マックスプランク研究所の統合モデリング国際会議参加について (9月15−19日)

陸域と海洋の炭素循環モデルについて1つずつ、大気化学モデルの結果についても1つ、計3件の発表を行うことを目標にする。アブストラクトの締切は3月15日。なお会議の詳細については (http://www.mpimet.mpg.de/mpi-conference2003/)を参照のこと。

(4)以後の日程

3月13日(木)14:00−16:00

発表者 渡辺 真吾(従来決定通り)

次々回は4月中旬。細かな日程調整は後に行う。

4. 閉会


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