「人・自然・地球共生プロジェクト」課題2第11回研究連絡会議議事録

日時:平成15年7月24日(木) 14:00−16:00
場所:海洋科学技術センター横浜研究所 (横浜市金沢区昭和町 3173-25)
交流棟2階小会議室

議事次第:

1. 開会挨拶

2.進捗状況報告

1)気候物理コアモデル改良サブグループ (渡辺 真吾)

長年CCSR/NIES AGCMで顕著だった対流圏界面から下部成層圏にかけての低温・湿潤バイアスは、hybrid鉛直座標と、新しい放射コードの導入により、共生第一課題(住グループ)で用いるT106L56fullに関してはほぼ解決された。
今後は、共生第二課題の地球システム統合モデルの解像度であるT42L60と、中解像度結合モデル用物理過程セットを組み合わせたときのバイアスの解消に取り組む必要がある。

2)統合モデル用のCHASERの高速化&簡略化
大気化学サブグループ(須藤 健悟)

「温暖化・大気組成変化相互作用」サブテーマでは統合モデルの枠組みにおいて対流圏・成層圏オゾン、メタン、およびエアロゾルのシミュレーションの結合を目指している。この際、ベースとして全球化学モデル CHASER を使用する予定であるが、現状(対流圏化学のみ)でも必要とされる計算機資源が大きいため統合化に向けての懸念要素となっている。今回は化学モデル CHASER の高速化および簡略化について幾つか作業を試みたのでその結果について議論を行った。先の第9回連絡会議でも報告したように現状では地球シミュレータ上での実行のため、ベースAGCM のバージョンを 5.6 から 5.7b へ変更しさらに、化学反応過程にリストベクトル手法を導入することで全体で 35% の計算時間の短が行われている。今回は更なる高速化のため、計算化学種および反応系の削減を試み、 CHASER の Box(Point)版モデルを使用し評価を行った。オリジナルの CHASER の設定からトレーサー種 7 つ、 ラジカル種2つを間引いて簡略化を行った場合の計算では、境界層および上部対流圏の汚染された条件下や植物起源炭化水素の影響の強い条件下でもオリジナルのものとほぼ同等の結果が得られることが確認された(オゾン、NOx、OH、H2O2 について)。これにより全体で約 20 % の計算時間の削減が見込まれ、トータルの実行時間としては一年積分に 6 時間(地球シミュレータ上 8 PE 使用、T42 L32 の場合)と見積もられる。使用node 数を増やした場合の実行性能については現在テスト中であり、結果が出しだいご報告する予定だが、大雑把な見積もりでは上記簡略化された CHASER にエアロゾルモデルSPRINTARS(簡略版)を結合する場合、100 年積分に約 30 日必要である
(ES 32 PE、T42 L60の場合)。
今後は、硫酸以外のエアロゾル種の導入(硫酸は CHASER 内で計算)をメインの作業として予定しているが、この際、硝酸エアロゾル(nitrate)も可能ならば考慮したい。
また、現状の AGCM の気象場では、成層圏から対流圏へのオゾン流入フラックスが過大評価傾向にあるので、この問題を解消する意味でも、新放射スキーム(MSTRN-X)の導入、 HYBRID 鉛直座標の導入、重力波抵抗の扱いの見直しについてそれぞれ検討していきたい。

3)陸域生態系モデルサブグループ (佐藤 永)

Sim-CYCLE・ALFRESCO結合モデル(Point version)はプログラム的には完成した。
高緯度地域の植生変動予測や、それに伴う物質循環の予測に対して適用するのであれば、これが現時点で最良のモデルであると考える。実際に運用するためには、パラメーター推定や調整等の作業が不可欠であるが、全球に適用できる植生変動モデルを作って欲しいという要望が強いので、先に全球のバイオームに適用可能な個体ベース植生動態モデルを構築する。
このモデルでは、個体の各樹冠レイヤーに横方向から入射される太陽光線を明示的に組み込む。
これによって、高緯度帯の木本の光合成環境を、より的確に捉えられるはずである。なお、枝先レベルで光環境を計算させる詳細なモデルもあるが、これらはDGVMで使うには精緻すぎるし、まだまだinmatureでもある。
モデリングするのは、光を巡る個体間競争とDisturbance generatorのみである。なぜならば、全球のバイオームにおいて、同じモデルで表現可能な動態制御機構は、主にこの両者のみだからである。従って、このモデルでは捉えきれない動態パターンも有るはずである。そのような動態パターンについては、バイオーム毎に特異的なパッチプログラム(ALFRESCO的な)をあてることで対応させる。
この個体ベース植生動態モデルが動くようになり、ある程度妥当性が検証されたならば、これをSim-CYCLEに結合させ、全球の植生動態変動をシミュレーションする。プログラム的には難しくないと思われるが、各種パラメーターの推定や調節に時間がかかるだろう(なにしろ全球なので)。またSim-CYCLEとの結合に際しては、Sim-CYCLEと個体群動態モデルの計算タイムステップの違い等を、いかに摺り合わせるかの問題を先に検討しておく必要がある。植生帯の移動を予測するためには、上の作業に加えて、現在の詳細な植生分布の情報と、種子拡散に関するモデリングとが必要不可欠だが、これらについての検討は今後の課題とする。

3.連絡事項

  • 炭素循環モデルについて。海陸とも予想より開発が遅れているが、来年2月の共生成果発表会までには何としてでも結合モデルのランを済ませておく必要がある。炭素循環モデルのコード開発は今年度中に区切りをつけ来年度からは化学コンポーネントの移植に入りたい。

  • L系の資源割当については、増加の交渉を続けている。

  • 海洋炭素循環でL系を5,000ノード時程度使いたい(今四半期の割当は8000ノード時)。と会議中は伝えたが、ちょっと勘違いがあり実際は3000ノード時程度で済むかも知れない。

  • 以前シミュレータセンタからメイルがあったように、シミュレータのユーザ管理が厳しくなってきている。3ヶ月全くログインしなかったり、初期パスワードを変更していないユーザは警告の後アカウントを抹消されるので、各自注意すること。

4.閉会


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