「人・自然・地球共生プロジェクト」課題2第13回研究連絡会議議事録
日時:平成15年9月24日(水) 14:00-16:00
場所:海洋科学技術センター横浜研究所 (横浜市金沢区昭和町 3173-25)
三好記念講堂
議事次第:
1. 開会挨拶
2.進捗状況報告
1)成層圏化学モデルについて (滝川 雅之)
成層圏化学サブモデルに関連して、おもに計算時間の観点から検討を行なったのでその結果について報告した。鉛直層数に関しては、メタン破壊速度が最大になるのは高度50km程度であるため、この程度の高度までは最低限それなりに現実的な化学種の分布になっていることが望ましい。
層の切り方に関しては高解像度大気海洋結合モデルの56層、および高解像度中層大気モデルの67層などが参考になると思われる。次に化学種に関して、
対流圏光化学モデルCHASERに成層圏化学を組み込む場合、メタン、N2O、フロンおよび塩素系化合物までを含めると化学種の数はおよそ40%、反応の数は50%程度増加する。BOXモデルで計算時間を比較すると現状のCHASERの2.1倍程度になる。同様に、臭素系化合物まで含めた場合は計算時間は現状のCHASERの2.3倍程度である。計算速度的にそれほど差異がなく、また成層圏におけるオゾン破壊等には塩素系-臭素系のリンクが重要であるため、まずは臭素系化合物まで含めた詳細版成層圏化学モデルの導入を検討することとした。
また最後に、移流スキームにおける鉛直移流での問題について、簡易版ながら修正を施した結果について報告した。ヒマラヤの風下に現れる非現実的なパッシブトレーサーの分布が改善されることが確かめられた。
2)陸域統合モデルへの結合を念頭にした植生動態モデルの構築
(設計と進捗状況の報告) (佐藤 永)
現在作成中の植生動態モデルの設計と、その進捗状況について発表した。
この植生動態モデルでは、木本の樹形生成に関する素過程モデルの殆どを、LPJ-DGVMで用いられているものから流用しているが、その「組み上げ方」を変えることによって林分の三次元構造を明示的に扱っている点に最も大きな特徴がある。
Sim-CYCLEとの結合に際しては、Sim-CYCLEの「炭素収支Module」と「生物季節Module」 とを、このモデルで入れ替える形とする。基本的に、植生動態モデルで扱う過程(個体群動態、資源分配、およびフェノロジー)は年1回または月1回ペースのcomputation、Sim-CYCLEで扱う過程(光合成、呼吸、およびGrass layer過程)は日1回ペースのcomputationを行う。
シミュレーションでは、30m×30mの林分を1グリッド当たり10個同時に計算し、その平均値をグリッドの代表値とさせる。小さな林分を複数計算させる理由は、攪乱等によって機会的に大きく変動する単一の林分をもって、グリッドの代表とさせることは適当ではないからである。
この植生動態モデルは、現在、幾つかのModuleを除いてほぼ完成している。今後Sim-CYCLEとの結合、およびパラメータ調整を行った後、今年度末か新年度初頭までには全球計算を行う予定である。
3)その他サブグループ進捗状況
- 陸域炭素循環グループ:作業進捗 (市井和仁)
- (1)AGCMとMATSIRO-Sim-CYCLEカップリング作業(第一段階)を行った。
次は、各モデル間での整合性を取る(植生分類、水循環)
- (2)Sim-CYCLEの評価として、温暖化シナリオに即した炭素収支の変動をシミュレートした。現在、伊藤が論文にまとめている。
さらに、今後の単体実験計画を試案中。
- 海洋グループ進捗状況 (河宮未知生)
海洋単体の炭素循環モデルを結合モデル(MIROC)中解像度版に移植中。
MIROCで海洋のトレーサ数を増やすとモデルが落ちるというバグに対処していたが、あるループのベクトル化を禁止するとモデルが動くことを確認。これによるパフォーマンスの低下はベクトル化率で0.5%減(98.8%->98.3%)、計算速度で2割減。当面「動くモデル」の開発を優先し、このループのベクトル化の問題は棚上げとする。
- 大気組成変化相互作用モデル (須藤健悟)
8 月は化学モデル CHASER を用いた将来予測実験について1つ論文(GRL)を投稿した。
ハンブルクの地球システムモデリングのワークショップに行き、個人的なモチベーションが上がったり下がったりした。CHASER への硫酸以外のエアロゾルの導入作業は来月から取り掛かる予定(?)。
- 温暖化-雲・エアロゾル・放射フィードバック精密評価 (久芳奈遠美)
GCMに 雲粒数密度のパラメタリゼーションとして新スキーム(Ghan et al.,(JGR, 1997) Abdul-Razzak et al., 1998)を入れて実験している。
さらにこのスキームの代わりにフロンティアで開発したスキーム(Kuba et al.,2003, Kuba and Iwabuchi, 2004) を入れた実験も並行して行っている。また、これは層雲系用のパラメタリゼーションであるため、積雲系のパラメタリゼーションの開発に着手した。
- 寒冷圏モデルグループ (阿部彩子)
氷床モデルについては、現在SX 6への移植およびモデルのさらなる開発にとりくんでいる。氷床力学の部分はこれまでの3次元力学温度計算するものだが、これをGCMと結合するのを容易にするためのカプラーの構築およびコードの効率化が主な作業であり、10月中完成めどにすすめている。
- 気候物理コアモデル改良 (渡辺真吾)
モデル改良に関しては、新放射コードの完成待ち。
重力波の解析を中心に行っている。
T63L250オゾン・力学・放射の相互作用やSAO/QBOの様子を見るためのランをK-1の資源で行っている。
3.連絡事項
- ハンブルグ国際会議報告では、共生2関連で松野・須藤(口頭)・市井・河宮(ポスター)が発表。ポスター手渡しバージョン35枚が午前中だけでなくなるなど概ね反応はよかったといえる。
- ハンブルグ会議開催中開かれていたC4MIP(Carbon Cycle Climate Change Model Intercomparison Project)のミーティングで、地球フロンティアとして参加の意思を表明した。
- 10月22,23日に共生1,2,4の合同運営委員会が開催される(共生2は23日午後)。講演予定の人には、前回5月の運営委員会以降の進捗報告をお願いしたい。
- 11月からESのスクリプトの書き方が変わる。10月は移行期間として資源割当に関わり無くES 320ノードが使えるので、積極的使用を勧める。
- 次回は11月上旬に開催。10月中の開催は気象学会、運営委員会等で負担が重いため。メイルで日程調整を行う。
4.閉会
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