「人・自然・地球共生プロジェクト」課題2第16回研究連絡会議議事録

日時:平成16年1月26日(月) 14:00-16:00
場所:海洋科学技術センター横浜研究所 (横浜市金沢区昭和町 3173-25)
小会議室

議事次第:

1. 開会挨拶

2.進捗状況報告

1)Developing a New Dynamic Global Vegetation Model (DGVM) for Global Changing Prediction (佐藤 永)

開発を進めている全球動的植生モデル(DGVM)について、その基本設計と作業の進捗状況を報告した。このDGVMは、陸域炭素循環モデルSim-CYCLEに、LPJ-DGVMの植生動態コンポーネントを組み合わせたもので、さらに林分の空間構造を明示的に組み込み、木本を個体ベースで扱うという拡張を行っている。これらの拡張によって、モデルのパラメーター推定に個体群生態学のデータ(木本密度、サイズ分布、樹齢構成分布など)をそのまま用いることが可能となり、さらに木本間の競争過程が妥当に表現される。これらの特長から、気候変動に伴った植生変動の速度を、既存のどのDGVMよりも最も的確に予測できることが期待される。現時点までに、一林分での計算のみを行うプログラムコードの開発が完了し、コードチェックも終了しつつある。今後は、ベクトル化、パラメータ推定、調整を行い、新年明け早々までには全球グリッドでのシミュレーション結果を得る計画である。

2)温暖化・大気組成変化相互作用サブモデル:エアロゾル計算導入作業進捗報告など (須藤 健悟)

統合モデル中の「温暖化・大気組成変化相互作用」のコンポーネントでは化学過程とエアロゾル過程の結合(エアロゾルの化学的生成/不均一反応)、海洋・植生からの気体放出過程との結合を当面の目標におき作業を進めている。現在特に、化学・エアロゾル相互作用サブモデル用に、CHASER と SPRINTARS(簡略版)の結合作業を行っている。対象エアロゾル種のうち特に硫酸塩についてはその生成過程が化学場に敏感に応答するため、将来予測においては化学との同時計算が必要である。
硫酸塩の生成過程については CHASER でオンラインで計算されるが、現状では雲水pH を雲水中の NO3(-) と SO4(2-) のみの関数として簡単化して表現しているため、構築中のサブモデル中ではさらにアンモニウム(NH4+) と土壌粒子 dust (Ca2+) による中和過程も導入中である。この際 NH4(+) の計算には硝酸塩エアロゾル NO3(-) の計算が必要であるので、熱力学平衡モジュールを用いた NO3(-) 分布の計算も導入予定である。その他のエアロゾルについては SPRINTARS を基本とするが、OC(有機炭素)については CHASER の NMHCs (炭化水素類)の酸化過程と結合させる方針である。
(dust については↑の硫酸塩の計算に反映させる) エアロゾル種の湿性沈着過程では間接効果スキームと整合的な方法に改良することが望まれるが、これについては竹村さんと相談中(というかお願いしている)。
一方、K-1 のC20再現実験の一貫として対流圏オゾンの過去トレンドの再現実験を行ったが、地表付近のオゾン計算量は過去の観測に比べてかなり過大であった。
これについては特に自然起源の過去の emission の妥当性を中心に検討中である。
今後の予定としては、今年度中に化学・エアロゾル相互作用サブモデルの完成・テストランを行い、来年度に陸域・海洋コンポーネントとの結合を行えば、あとは成層圏の化学反応を導入してサブモデルとしては完成の筈である。

3)その他サブグループの進捗状況

  • 陸域炭素循環モデルサブグループ (市井 和仁)
    現在は、C4MIP対応のための、土地利用変化によるCO2収支のサブモジュールの導入を検討中。タイムラグ等を考慮しなければならず、多量のメモリが消費されることになりそうなので、慎重に検討している。

  • 海洋生物地球化学モデルサブグループ (河宮 未知生)
    CMIP版MIROCに組み込んだ炭素循環過程にバグがありそうだという報告を年末の連絡会議で行ったが、それについては解決した。このバージョンを用いて行った予備的実験の結果を3月の共生発表会では発表することになりそう。また最新版MIROCへの移植も進行中。1月中、遅くとも2月上旬には海洋炭素循環の組み込みが終わり、陸域炭素循環過程の組み込みに移る予定。

  • 成層圏化学サブグループ (滝川 雅之)
    ES L系を用いてパッシブトレーサを用いた成層圏の年代見積りのための数値実験を行なっている。t42/t63/t106 67層での各々10年程度の積分を行ない、成層圏ー対流圏、赤道ー中緯度物質循環の水平解像度依存性などについて調べる予定である。

  • 温暖化-雲・エアロゾル・放射フィードバック精密評価サブグループ (久芳 奈遠美)
    非静力学領域モデルに組み込むための雲微物理モデルとして1モーメントビン法および2モーメントビン法の2種類を開発した。これらと粒子法モデルとを条件を変えて詳細に比較しバグの検出をしている。NHMなどに組み込む作業を東北大学と協力して行う予定で3月に打ち合わせを行う。

  • 寒冷圏グループの進捗状況 (阿部 彩子)
    中解像度気候モデルによる温暖化実験をCO2 4倍まで延長して極域の温暖化の解析を行なっている。また氷床大気結合については同期、非同期の両方について、検討とプログラム構築をすすめている。

  • 気候物理コアモデル改良サブグループ (渡辺 真吾)
    ハワイの重力波に関する国際会議で発表し情報交換を行った。
    T213L250モデルの積分がもうすぐ1年間終了する。
    K1モデル最新版に合わせてhybrid鉛直座標のメンテナンスを行っている。
(4)連絡事項
  • 採決の結果、統合モデルの名前はKISSME --- Kyousei (K2?, Kawamiya?) Integrated earth SyStem Model on the Earth simulator --- に(仮)決定。インパクトは満点だが多少恥ずかしいのがこの名前の欠点なので、当日欠席した人の中から強い反対があれば勘案する。その場合は1月中に共生2メイリングリストにその旨投稿のこと。

  • 来年度から技術支援的な人員を一人増やすという話については、来年度予算の状況を見ながら慎重に話を進める必要がある。2月上旬に改めて検討を行う予定。

  • 共生2を含む地球フロンティアのメンバーが多く参加して翻訳した「植生と大気の4億年」(D.J.Beerling & F.I.Woodward) が京大学術出版会より無事出版された。

  • 2月6日の「物理化学タスクフォース」の際、IPCC報告書への貢献に向け共生2大気組成グループ(大気化学+エアロゾル雲放射)で何が出来るかを議論したいとCCSR中島氏から提案があった。(ただし中島氏は当日欠席。今須氏が議論に加わる。)具体的な議論の内容について、河宮がコンタクトをとって事前にメイルで情報交換をしておく。

  • 2月25-27日に、ハワイで共生関連のワークショップが開催される。共生2からは河宮が出席予定。

  • 3月8,9日に共生「1」のメンバーが Hadley Centre を訪問する予定。共生2からの参加も歓迎とのこと。共生発表会と重なっているので河宮は参加しないが、参加希望者がいれば大歓迎。特に陸域生態系から誰か・・・?

  • 3月9,10日に共生プロジェクト成果発表会がある。要旨集の原稿を現在各グループで手分けして作成中。内部締切りは2月3日。

  • 3月17,18日に三浦海岸のホテルで1泊2日の「地球温暖化予測勉強会」が開催される(添付ファイル参照)。講演をお願いしたい人には既に連絡がいっているが、それ以外のメンバーも参加希望があれば河宮まで連絡してほしい。

  • 3月23,24日の地球フロンティア成果発表会では、共生2としての発表に30分程度の時間が割り当てられる予定。

  • 5月末までに今年度の成果報告書を作成する必要がある。具体的な作業日程は後に知らせるが、分量が多め(A4で1人10項程度)なので今のうちから念頭に置いておいて欲しい。

3.閉会


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