「人•自然•地球共生プロジェクト」課題2第24回研究連絡会議議事録
1.日時:平成16年12月8日(水) 14:00−16:00
2.場所:海洋研究開発機構横浜研究所(横浜市金沢区昭和町 3173-25)
交流棟2階 小会議室
議事次第:
1. 開会挨拶
2.各グループからの進捗状況報告等
(1) 海洋生物地球化学モデリング 石田 明生(生態系変動予測研究プログラム)
海洋大循環-生態系結合モデルに、炭酸系を組み込んだモデルによる数値実験の進捗について報告する。海洋大循環モデルは、東大気候センターで開発された海洋モデルCOCOの水平解像度1度x1度の全球モデルで、海洋生態系モデルは、PICES (North Pacific Marine Science Organization)のモデルワークショップで開発されたNEMURO (North pacific Ecosystem Model Used for Regional Oceanography)である。炭酸系にはOCMIP(Ocean Carbon-Cycle Intercomparison Project)で議論、まとめられた式、データを用いている。
1948年から2002年の経年変動再現実験では、1970年代の気候シフトに伴う海面水温、混合層深度などの物理場の変動を再現している。それにほぼ対応して、北太平洋中西部における生物基礎生産は1970年代中期以降に減少しており、観測結果と一致する。この結果はEcological Modelingに投稿中である。
OCMIP Phase 3では、海洋生態系の経年〜10年規模の変動が中心テーマであり、風などの海洋循環モデルの境界条件データをOCMIPグループ間で共通化して実験を進めている。現在、いくつかのグループから結果出された段階であり、例として、熱帯太平洋における大気海洋CO2フラックスの経年変動についての途中結果を紹介する。
(2) Chemistry and aerosol modeling in the Kyousei-2(須藤 健悟)
本発表(前半)ではCHASER/SPRINTARS による化学・エアロゾル結合サブモデルのKISSME への組み込み状況について簡単に現状報告を行った。基本的に前回報告したCHASER-SPRINTARS の結合サブモデルとの違いはないが、CO2 のトレーサーNo. の扱いの変更や乾性沈着過程における植物気孔抵抗をMATSUSIRO で計算されているものを使用できるようにするなどの変更を加えた。今後は鉛直hybrid座標&新放射スキームの導入、さらに成層圏ハロゲン化学の導入が課題となる。
発表後半ではCHASERも参加しているIPCC第4次報告書の7.3章「Atmospheric chemistry, air quality and climate change」の化学モデル相互比較プロジェクトについて紹介した。このプロジェクトは実験1と2に分かれ、オゾン前駆気体の将来の emission 変化が及ぼす影響については実験2で重点的に扱われ(GCMと結合された化学モデルを使用しているグループは気候変動の影響も計算)、実験1については、過去→現在→将来の気候変動および成層圏オゾン変動がどのように対流圏化学過程に影響するかについて議論がされる予定である。発表では実験2でCHASERを用いて計算した結果について簡単に報告した。
(3) DGVMの開発状況について(佐藤 永)
・モデルの仕様書(AppendixとTable含む)が完成した。関係者には、後にPDFファイルで配布し、全体的なチェックをお願いしたい。
・パラメータの調整作業を進行している。現在までに、寒帯性と温帯性の常緑性木本については、大雑把な調整が完了した。落葉性木本については、モデルの挙動が不自然であるので、その原因を調査している。また熱帯性の木本については、調整のための植生動態データを収集中である。
・NEP(Net Ecological Product)の挙動が不自然であると指摘された。プログラムのバグである可能性もあるので、調査を開始する。
(3)その他サブグループの進捗状況
•大気-陸域結合炭素循環モデルの開発進捗状況 (加藤知道)
C4MIP実験のための安定した初期値を得るために、Sim-CYCLEの1000年オフラインスピンナップを行っている。現在は、現実的な炭素収支を再現させるためのパラメータの調整を行っている。
•海洋生物地球化学モデル (河宮 未知生)
結合炭素循環モデルによる温暖化予備実験が2050年頃まで終了。AGU(12月13-17日)のついでに開催されるC4MIP informal meeting用に結果を解析中。ただし、(おそらくは初期化の問題で)陸域の炭素貯蔵量が減ってきており、「予備的」結果以上のものではない。しかし海の方は比較的まともなので、こちらの解析結果も見せながらC4MIP全体での海洋解析方針について提案をしたいと考えている
•成層圏化学過程 (滝川雅之)
来年春の成層圏過程導入に向けて、他の統合モデルの化学過程に関して文献を調査している。KISSME モデルでは対流圏光化学モデル CHASER の成層圏への拡張を予定しているが、たとえば Max Plank の MESSy モデルなどは成層圏、対流圏、海洋接地境界層などの各々の領域に応じたサブ化学モデルを用意しているようなので、同様の取り扱い方も考慮しつつ、モデルパフォーマンス等に応じてどちらを採用するか検討したい。
•温暖化−雲・エアロゾル・放射フィードバック精密評価(久芳奈遠美)
開発したパラメタリゼーションについては論文にしたので投稿の準備中。CReSS およびNICAMへの雲微物理モデルの導入は進行中だが、めだった進捗はない。
•寒冷圏モデル (阿部 彩子)
•気候物理コアモデル改良 (渡辺真吾)
前月に引き続き、T213L250 AGCMの重力波の解析を進めつつ論文を執筆している。南極大陸付近での地形性重力波の発生に関して新しい結果が得られたので、別途解析して論文にする予定である。
温暖化領域と協力して、新放射コードをK1の最新のコードに組み込み直し、鉛直hybrid座標系に関しても出力時のp面補間に関して一部修正を行った。
3.連絡事項
・地球シミュレータ利用報告会(1月7日)
10月上旬にあった「中間報告会」の資料を基本的には流用する。
温暖化予備実験の結果についてはアップデートする。
・EU-Japan Workshop on Climate Modelling (1月20-21日)
共生2のメンバーから何人か発表予定。共生2全体の発表は河宮が担当する。
・ハワイの共生ワークショップ(2月24-26日)
去年あったのと同じもの。登録締切2月10日、ホテル予約締切1月31日
・共生成果発表会(3月11,12日)
共生2の発表は12日。要旨集の締切は1月31日。要旨集のページ数は共生2全体で10ページ程度。
・NICAMグループへの割当を24,000ノード時から14,000ノード時に減らし、残りの10,000ノード時を共生2本体で使うこととした(NICAMへの陸面過程モデル、エアロゾルモデルの組み込みがはかどっていないため)。具体的な割当は別途メイルでお知らせがいく。
4.閉会
|