「人•自然•地球共生プロジェクト」課題2第27回研究連絡会議議事録

1.日時:平成17年4月20日(水) 14:00−16:00
2.場所:海洋研究開発機構横浜研究所(横浜市金沢区昭和町 3173-25)
交流棟2階 小会議室

議事次第:

1. 開会挨拶

2.各グループからの進捗状況報告等

(1)Past/present/future simulation of ozone and related species in the context of the IPCC-AR4:Impacts of changes in emissions, climate, and other factors(須藤 健悟)

PPT File (sudo_05.04.20.ppt 10,038KB)

化学気候モデルCHASERおよびエアロゾル気候モデルSPRINTARSの結合を行い統合モデル本体への組み込みも終了した。この作業では特に硫酸塩エアロゾルの液相生成過程について化学場とリンクさせた表現を導入し、より現実的な硫酸塩エアロゾルシミュレーションが可能になった。しかしながら、硫酸塩エアロゾルを含む各種エアロゾルの表現方法についてはSPRINTARS単体のものと一部異なるため、今回構築された統合モデルで計算されるエアロゾル分布と従来のSPRINTARSで計算される分布の間には有意な差異がある場合があることを確認している。エアロゾル濃度の計算は気候感度への影響も大きいと考えられるので今後も統合モデル中のエアロゾル計算の詳しい評価を続行していくとともに、放射過程・大規模凝結(雲/降水)過程を含めて再調整(チューニング)の検討も必要である。一方大気化学と地表面過程との結合に関して、平成16年度の作業では気相化学種の乾性沈着を一部陸面モデルMATSIROに依存させた計算などが導入されたが、今後はさらに植生からの炭化水素類のemission過程、オゾンの植生への影響過程、海洋からのDMSのemission過程もオンラインで計算することも検討中である。

CHASERモデルを用いてIPCC第4次報告書の大気化学関連のプロジェクトに参加し、過去・現在・将来についてのシナリオ実験を行ったが、この実験ではオゾン濃度場やメタンなどの関連化学種の変動過程にはオゾン前駆気体のemission変化のみならず、成層圏オゾンの変動、気候変動も同時に評価する必要があるという結論が得られた。H17年度では統合モデル本体の放射過程、鉛直座標・解像度の改良の上、CHASERコンポーネントにCCSR/NIES成層圏化学モデルを基本とする成層圏化学過程を導入する。


(2) ダスト−気候−海洋系のフィードバックと炭素循環モデリング進捗(河宮 未知生)

PPT File (kawamiya_05.04.20.ppt 6,147KB)

氷期-間氷期サイクルにおける大気中CO2濃度の増減は、海洋炭素循環の変動によるものとされる。そうした変動をもたらした要因の一つとして提案されている、ダストによる鉄輸送を介したフィードバック機構についてレビューを行った。「生物ポンプ」の働きによって海洋表層では深層に比べ全炭酸濃度が低くなっているが、氷期には 寒冷化→植生の減退→ダスト増加→海洋への鉄供給増加→生物ポンプ強化という過程で表層の全炭酸濃度が低くなり、それに伴って大気中CO2濃度も低下した、というのがこの仮説である。いくつかのモデル計算によれば、15-40ppmの減少分がこの仮説によって説明できる。80ppm 程度(陸域生態系からのCO2放出を考えればそれ以上)の氷期間氷期CO2サイクルの振幅を全て説明するものではないというのが、現在のところの認識のようである。

結合炭素循環モデルによる実験については、パラメータ調整を経てスピンアップが終了した。海洋の一次生産量は32PgC/y(少なめ)。陸域の炭素貯蔵量は植生900PgC,土壌2100PgC(ともに多め)。とりあえずこれで「本実験」を行う。後々再度パラメータ調整を行うかも知れない。


(3)その他サブグループの進捗状況

•大気-陸域結合炭素循環モデルの開発進捗状況(加藤 知道)

    大気−陸域結合モデルによるC4MIP実験は、終了した。現在は、結果の妥当性について他文献等の結果と比較して検討しているところである。また、C4MIP後の実験計画についても検討中である。


•動的全球植生モデルSEIB-DGVMの開発状況(佐藤永)

    ・コードの並列化が完了した。現時点ではグリッド間の相互作用を考えておらず、各グリッドを独立にシミュレートさせることができる。そのため、計算に用いるCPU数が2倍になると計算速度もほぼ2倍となり、大規模なシミュレートにおける計算効率が非常に高いものとなった。
    ・引き続き、選択地点におけるパラメーター調整を行っている。こちらは少々苦戦中ではあるものの、確実に進捗している。
    ・論文の執筆を進めている。現在までに、結果とディスカッションのみを残し、ほぼ全て英語で書き上がった。パラメーター調整と本番のシミュレーションを行った後に、これら残った部分を書き上げ、早めの投稿を目指す。
    ・ SEIB-DGVMの開発状況(佐藤永)
    ・全球シミュレーション用に、GrADSによるデータ可視化スクリプトを組んだ。
    ・コードの並列化に備えて、コードの改変を行った。

•寒冷圏モデル (阿部 彩子)

    氷床ーMIROCGCM結合オンラインとオフライン実験両用可能なコードがようやく仕上がりつつあり、オフライン実験について、以前行っていた手動実験がほぼ再現できることを確認した。グリーンランド氷床の温暖化時の融解と海面水準への影響を計算するためのGCM 出力を解析し、氷床モデル実験入力の準備を行っている。

•気候物理コアモデル改良サブグループ:(渡辺 真吾)

    K1マル高モデルの温暖化実験の重力波の解析を行った。温暖化に伴い対流圏界面が上昇する結果、二酸化炭素倍増時の下部成層圏の広範囲で重力波の運動量フラックスが2-4割程度増加することが分かった。これを投稿論文にまとめた。
    ・Hinesパラメタリゼーションのためのテスト積分を行った。計算開始高度をどのレベルにとるかで結果が大きく異なる問題があり、今後改良が必要となった。
    ・統合モデルの成層圏コンポーネントのマージ作業を行った。放射コードの整理が必要と判断されたため、そちらを優先的に行うことにした。5月には全部そろった形でテストできる見込み。


3.連絡事項

    ・発表会等

    ・今年度ES計算資源

      次世代グループとどの程度計算資源を共有することになるのか未だに不透明なのでノード時の絶対量はまだ伝えられない。(ただし共生2全体で最低8-9万ノード時は使える。)共生2内の各サブグループの相対割当をとりあえず次のように設定する。

      炭素循環 18%
      山中グループ 12%
      大気化学 7%
      寒冷圏 12%
      モデルコア 20%
      次世代 18%
      IARC 5%
      予備 8%

      (会議後寒冷圏グループから増加の申し出があったので、会議中に示した数字とは若干違う。)
      ・ノード数申請が必要なグループは忘れないように。

    ・各種報告書
      ESC(4月末締切)、FRCGC(5月末締切)、JAMSTEC(6月末締切)
      いずれも河宮の手元に既に集まっている材料をもとに提出する。

      ・3月にあった共生成果報告会の講評が届いた。評判は概ね悪くない。
      ・5月9日(月)に運営委員会が開催される。発表は須藤、渡辺、阿部、河宮が行う。今年度の予定を主な内容として発表する。

4.閉会

    参加者:(内部参加者)
    斎藤 冬樹、伊藤 昭彦、加藤 知道、河宮 未知生、佐藤 永、須藤 健悟、
    瀬川 朋紀、滝川 雅之、松野 太郎、吉川 知里、富田 浩文

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