「人•自然•地球共生プロジェクト」課題2第28回研究連絡会議議事録

1.日時:平成17年5月24日(火) 14:00−16:00
2.場所:海洋研究開発機構横浜研究所(横浜市金沢区昭和町 3173-25)
交流棟2階 小会議室

議事次第:

1. 開会挨拶

2. 各グループからの進捗状況報告等

成層圏化学過程関連の最近の研究動向について (滝川雅之)

PDF File (takigawa_05.5.24.pdf 5,341KB)

太陽変動の化学種分布への変動に関連する研究を中心とした、成層圏化学関連の最近の研究動向についてレビューを行なった。衛星および地上観測等から、成層圏における塩素化合物の濃度増加は鈍化しつつある。この結果、オゾントレンドについても今後回復傾向に向かうであろうことが予想される。
ただし、今後のオゾントレンドの予測トレンドについてはモデル間で大きな差異はないものの、オゾントレンドに影響を与えうるさまざまな要因、たとえば水蒸気、塩素化合物、気温等の各々がどの程度寄与しているのか、といった定量的な理解はまだ十分ではないようである。また、太陽変動があたえる影響に関する研究例を二例ほど紹介した。このうち Egorova et al. (2004) は太陽変動の結果引き起こされるオゾン変動が気象場を通して対流圏にまでその影響を及ぼし得る、という結果を示していた。同様の数値実験が統合モデルを用いても可能かどうかについても今後検討してゆきたい。


(2) 動的全球植生モデルSEIB-DGVMの開発状況(佐藤永)

PPT File (sato_05.5.24.ppt 3,129KB)

sato_warm.avi 2,084KB | sato_water.avi 3,044KB

・SEIB-DGVMの研究開発について、進捗状況と、今後の作業手順について発表した。
・パラメーターの調整作業は、ほぼ完了させた。
・寒帯・温帯・熱帯域の各一地点において、森林火災後の植生変動(遷移・炭素収支・水収支)をシミュレートした。その結果、例えば流出水の量を過大評価する傾向があったり、NEPが森林火災後の僅かな期間で正の値になるなど、現実とは一致しない部分もあるものの、全体的にはリーズナブルな結果と言えた。
・今後は、全球シミュレーションを開始する予定である。参考のため、パラメーター調整前に試験的に行ったシミュレーションの結果を発表した。
・この全球シミュレーションの結果がリーズナブルな範囲に落ち着くのなら、その時点でモデルの開発作業を一端休止し、論文を完成させ投稿する。
・論文投稿後は、SEIB-DGVMを地球統合モデルへ結合する際に必要とされる諸作業を開始する。
すなわち、土地利用変化モジュールの結合、農業生態系モジュールの結合、リスタート機能の付加を行う。


(3)その他サブグループの進捗状況

(1) 大気-陸域結合炭素循環モデルの開発進捗状況(加藤 知道)

    大気‐陸域結合モデルによるC4MIP実験結果を、比較検討するための、強制力データに一定値を与えるコントロールランと、土地利用変化を考慮しないランを、行っている。近く、土地利用変化等の全球炭素収支に与える影響度が判明する予定である。また、C4MIP以降の実験計画を立てるべく、文献等の収集を行っている。


(2) (須藤健悟)

    統合モデル内の放射過程 (mstrnX) については現在渡辺さん・関口さんが導入・コード整理を行っているが、この枠組みで CHASER の光解離定数計算に対応させる作業を検討中。エアロゾルとの平衡を解く熱力学平衡モデルの導入も続行中である。

(3) 寒冷圏モデル

    氷床モデルを用いたグリーンランドの温暖化実験を開始するために、氷床モデル単体を用いて初期条件の作成や感度実験を行った。その結果を用いて温暖化実験を開始する予定である。

(4) 気候物理コアモデル改良サブグループ:(渡辺 真吾)

    CFCsに対応した新放射コードの整備が概ね終了した。統合モデルの上端を成層圏に拡張し、各成層圏用サブルーチンの調整を行っている。CHASERを除いた状態で1年積分に必要な経過時間が大気:海洋=4:2ノード使用時に4時間以上かかっており、今後CHASERと合わせてプログラムの高速化が必要になる。

(5) (河宮 未知生)

    予備実験のときより現実的な結果を与えるパラメータセット温暖化実験をやりなおしている。
    さらなるパラメータチューニングも予定している。また論文執筆を視野に入れ、予備実験における海洋モデル結果の解析方法の検討を始めた。



3.連絡事項

    ・5月9日に共生2運営委員会があった。モデル結果の妥当性検証法や海外への情報発信等について議論が交わされた。
    ・今年度ES資源割当の共生2内での配分を別途メイルで連絡した。ご利用は計画的に。
    ・NHK「サイエンスZERO」から取材があった。「森林の効能」をテーマとした回の一部として取材内容を使う予定。6月4日放送。


4.閉会


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