「人•自然•地球共生プロジェクト」課題2第34回研究連絡会議議事録

1.日時:平成18年2月7日(火) 14:00−16:30
2.場所:海洋研究開発機構横浜研究所(横浜市金沢区昭和町 3173-25)
交流棟 2F 小会議室

議事次第:

1. 開会挨拶

2. 各グループ/サブグループからの進捗状況報告等

(1)地球環境統合モデルによる20世紀再現実験に向けて (野沢 徹)

PPT File (nozawa_06.02.07.ppt 1,800KB)

共生第1課題(K-1)で行った20世紀再現実験では、さまざまな気候変動要因を切り分けた複数の実験結果から、20世紀前半の昇温傾向は主として自然起源の気候変動要因に起因すること、20世紀後半の昇温傾向は人為起源の気候変動要因を考慮しなければ再現できないこと、20世紀中盤 (1940〜1980年) では炭素性エアロゾルによる気候影響を考慮することで長期気温トレンドの地理分布再現性が圧倒的に向上すること、などを統計的に有意に示すことができた。
一方で、上記成果の有意性を検定する際に は、コントロール実験における内部変動がどの程度現実的であるか、が大きな鍵となる。
全球平均気温で見る限り、K-1モデルの内部変動は観測とほぼ同程度であることが 確認されているが、ENSOのシグナルが小さい、一部エアロゾルによる気候影響を過小 評価している、(炭素循環や化学反応など)いくつかの重要な過程が実装されていない、などの理由により、空間分布をも考慮した内部変動の再現性はまだ不十分である可能性がある。
共生第2課題(K-2)で開発している地球環境統合モデルでは、CO2やオ ゾンなどの変動もインタラクティブに取り扱うことが可能となるため、より現実的な 内部変動の情報を得ることが可能であると考えられる。また、例えば、オゾンを介した太陽変動による気候影響なども陽に表現されることから、統合モデルによる20世紀 再現実験を行うことにより、「近年の温暖化傾向は人間活動に起因している」ことを、より高い確度で示すことが可能になると期待される。この他にも、森林・海洋に おけるCO2の発生・吸収源推定(インバージョン)や、全球〜亜大陸規模での大気環境 変数の長期変動解析などにも有用であるため、地球環境統合モデルによる20世紀再現 実験を戦略的に実行するべきであると考える。

(2)大気化学現状報告 (須藤 健悟)

PPT File (Sudo06.02.07.ppt 2535KB)

KISSME 中の CHASER の成層圏化学対応のため光解離定数計算の新放射スキームへの対応・ハロゲン系化学種の光解離反応の追加作業を行った。今年度は成層圏オゾン・ハロゲン化学の基本サイクルの導入を完了させ、来年度早期にオゾンホール化学 過程の導入を目指す。

3.その他サブグループの進捗状況

(1)動的全球植生モデルSEIB-DGVMの開発状況 (佐藤 永)

  • 木本の定着条件などを見直した結果、以前に比べ、全球の植生分布は現実に近いものが出力されるようになった。
  • 本格的な、全球シミュレーションの為の準備を行っている。コードにSpinupとRestartの機能(但し、引き継がせるのは土壌炭素だけという簡便なもの)を持たせ、また気候データとValidation用データを集めた。
  • 地球シミュレーターL系での実行のために、Job投入方式、および出力ファイルの形式が変更された。これに伴って、以前に作成した全球シミュレーション解析用ツールを再整備している。
  • なお、2本目の論文は、この全球runでの実験が中心となる。

(2)大気-陸域結合炭素循環モデルの開発進捗状況 (加藤 知道)

20世紀中の炭素収支と土地利用変化の影響について、引き続き結果を解析中である。また、21世紀ランの準備を進めているが、現在はオランダのRIVMに土地利用変化の予測データの提供を要請中である。さらに、SEIB-DGVMの結合モデルへの組み込みも徐々に進めている。


(3)寒冷圏モデル (齊藤 冬樹)

寒冷圏では on-line の氷床-気候結合-モデルによる温暖化実験を開始したが、積分途中(半年)で原因不明の理由により計算が終了した。現在調査中である。

(4)物理気候コアモデル改良サブグループ(渡辺 真吾)

プログラムの高速化に関して、マルチタスク並列化作業が完了し、実行テストに入っている。高速化の程度としては、L80の従来版で大気:海洋を4:2ノードで計算していたものと比べて、最新版の8:2ノード使用時の計算実時間は約2/3まで短縮できた。
その一方で、エアロゾル関係で最新版固有の不具合が見つかった。
これは従来の版には含まれないものであり、目下、更新してきたプログラムや、入力ファイル、namelistパラメーター等のチェックを行っている。

(5)海洋生物地球化学モデル (河宮 未知生)

温暖化実験の結果について解析を進めている。モデルは、観測に見られるような、エルニーニョにともなう大気中CO2濃度の変動を再現していることがわかった。
ただしエルニーニョ発生とCO2濃度変化との間のタイムラグは、観測が1年程度であるのに対しモデルでは2年程度と長い。
こうしたズレについて、今後原因を調べる。


(6)連絡事項

  • 来年度のES資源は3.35%の配分となった。17万ノード時にあたる。

  • 2月23−25日に、「共生プロジェクトに関する国際ワークショップ」がある。参加者は準備を怠りなく・・・。

  • 3月1,2日に成果報告会がある。それ用のスライドを4,5枚、2月10日までに河宮に渡して欲しい。

  • 3月14日に運営委員会があるので、なるべく出席のこと。

4.閉会


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