「人・自然・地球共生プロジェクト」課題1、2、4合同運営委員会 共生課題2分 議事録1. 日時平成15年10月22日(水)〜 平成15年10月23日(木) (共生2発表:23日 13:30〜16:30) 2. 会場 千葉県我孫子市我孫子1646 電力中央研究所 我孫子研究所 3. 議事次第 1)陸域炭素循環コンポーネント(市井 和仁)Current Status of Terrestrial Carbon Cycle Component for FRSGCIntegrated Earth System Model 共生2陸域炭素循環モデルグループの進捗報告をして以下の3点を説明した。 1)Sim-CYCLEのオフラインシミュレーション
2)AGCMへの組み込み
3)C4MIPに向けて
現段階のSim-CYCLEでは、Land use changeが入っていないので追加する必要がある。 2)陸域生態系変動コンポーネント (佐藤 永)陸域統合モデルへの結合を念頭にした植生動態モデルの構築(設計と進捗状況の報告)共生第2プロジェクトで開発している全球動的植生モデル(DGVM)について、その基本設計と進捗状況について報告を行った。DGVMは、陸上生態系の機能(炭素や水の循環など)や構造(植生の分布や構成など)における短期的・長期的変化を予測する事を目的としており、陸上生態系が気候変動に与える効果と、そのフィードバック作用を扱う際に必要とされる。
我々の開発しているDGVMの最大の特徴は、植生の空間構造を明示的に扱っている点である。空間構造のヘテロ性や複雑性は、陸上植生の動態を最も強く規定する要素の一つであるが、主に計算力の制約から従来のDGVMにおいて明示的にモデル化することはなかった。しかしながら先行研究によると、このような光環境を空間的に平均してしまうモデルでは、樹種の交代の様子が変化するだけでなく、総バイオマスも実際の森林の半分くらいになってしまうことが示されている。したがって我々のDGVMからは、従来のモデルと比較して、より的確な予測が出力されることが期待される。
3)海洋生物地球化学コンポーネント (河宮 未知生)前回の運営委員会(5月)以降、海洋単体モデルに組み込んだ炭素循環モデルのパフォーマンスチェックと結合モデルへの炭素循環モデルの組み込みに取り組んできた。海面駆動力に対するモデルの感度実験、人為起源二酸化炭素の海洋吸収量を計算する二酸化炭素漸増実験などを行ったところ、モデルの振る舞いに問題はなくほぼ既存の他のモデルによる結果と同様のものが得られた。結合モデルへの移植も相当程度完成しており、現在は海面CO2フラックスを大気に渡す方法を調査中である。また、9月にあったハンブルグでの国際会議においてC4MIP(Coupled Climate-Carbon Cycle Model Intercomparison Project) への参加を表明した。IPCC報告書への貢献を目指すにあたり重要なステップであると考えている。
4)大気化学コンポーネント (須藤 健悟)温暖化・大気組成変化相互作用モデル開発(大気化学コンポーネント)では、対流圏/ 成層圏オゾン化学およびエアロゾルを含めた気候・化学結合モデルの構築を行っている。現状では(対流圏)化学モデル CHASER の実行速度性能向上として化学過程にリストベクトル手法などを採り入れ、全体で約 35 % の高速化がなされているが、統合モデルとしてエアロゾル・成層圏化学の導入および鉛直層数の増加を考慮にいれると 100 年積分に地球シミュレーターL系で実時間で2ヶ月強を要する計算になり、実用的には MPMD などの別ノード計算による手法を導入する必要があるかもしれない。また、もう1つの高速化の可能性としてCHASER モデルの簡略化(トレーサー数、反応系の削減)を CHASER化学過程の 0 次元ポイントモデルを用いて検討した結果、全体でさらに 20 % の高速化が可能であることが確認された。また現在作業中のエアロゾルシミュレーションの化学過程との結合について、特に硫酸塩・硝酸塩・アンモニウム塩系を表現するエアロゾル熱力学モデルの組み込みについて方針を検討した。その他の課題として、新放射スキームの導入、成層圏化学反応の導入、および乾性沈着・植物起源炭化水素エミッションに関して地表・植生モデルとの結合が見込まれている。
5)気候物理コアモデル改良 (渡辺 真吾)CCSR/NIES/FRSGC agcm5.7bの対流圏界面付近の低温バイアスに関して、気象庁の予報モデルやHadley CenterのUnified Modelと結果の比較を行ったところ、agcmの紫外線加熱が特に小さいことが分かった。CCSRで開発中の新しい放射コードを用いることによって同領域の紫外線加熱が増加し、低温バイアスはほぼ無くなった。
一方、K-2の統合モデルのagcmは水平解像度がT42と粗いため、成層圏では重力波抵抗のパラメタリゼーションが必要となる。このパラメタリゼーションとしてHines(1997)のものを採用する。その入力パラメーターとして、重力波の伝播方位および摂動風速の全球分布が必要になるが、観測から得ることができないため、高解像度実験(T106L250)の結果を解析して入力値を求める試みを行っている。それらについて簡単な紹介を行った。
6)雲・エアロゾル・放射相互作用精密評価(久芳奈遠美)人為起源エアロゾルが雲凝結核(CCN)として機能することにより、雲の微細構造に影響を及ぼし、雲の光学的性質および降水形成効率を変え、ひいては放射収支や水循環をとおして気候に影響を及ぼす。この効果を温暖化予測のための全球モデルに的確に取り込むことが必要である。気候モデルに雲微物理モデルを搭載することは不可能であるため、雲物理過程パラメタリゼーションを開発する。
まず、CCSR/NIES GCMとエアロゾル輸送モデル SPRINTARS を組み合わせた。SPRINTARSの出力であるエアロゾル全球分布から雲粒数密度を計算するパラメタリゼーションとしてAbdul-Razzak et al. (1998) を用い、雲粒数密度・雲粒有効半径・雲水量・降水量の年平均値の全球分布を求め、産業革命以前との比較などを行った。
衛星データとの比較も行った。このパラメタリゼーションの他に、エアロゾルのCCNとしての機能(臨界過飽和度)に注目したパラメタリゼーションも独自開発している。このパラメタリゼーションをGCM に搭載する際の利便性の向上をめざしている。
これらのパラメタリゼーションに欠かせない雲底での上昇流速度の導出、雲量の正確な見積もりのためには、雲解像全球モデルが必要であるため、Nonhydrostatic Icosahedral Atmospheric Model (NICAM)を開発し、基礎実験をしている。また雲物理過程を導入するに際し、全球 3.5 km の解像度での試行錯誤は不経済であるため、一部集中格子の導入を決め、基礎実験をしている。NICAMに搭載する基底関数展開法による雲物理モデルの開発も行われ、基礎実験が行われている。
(7)寒冷圏モデル (阿部 彩子) |