「人・自然・地球共生プロジェクト」課題2第8回運営委員会議事録

1. 日時
平成17年3月7日(月) 14:00―17:00

2. 会場
海洋研究開発機構横浜研究所(横浜市金沢区昭和町3173-25)
交流棟2階 小会議室

3. 議事次第

1)研究代表者挨拶

2)文部科学省挨拶

3)進捗状況報告
    今年度の課題2の成果として、以下の点について 松野研究代表者から報告があった。

    1.炭素循環モデルに関して
      ・陸域炭素循環モデルSim-CYCLEによる単体モデル実験の結果を解析した論文が2報発表された(Climate Dynamics 誌とJournal of Meteorological Society of Japan 誌)

      ・Sim-CYCLE を GCM に組み込み、パラメータチューニングを行って現実的な結果が得られるようにした。

      ・大気海洋陸域結合炭素循環モデルによる温暖化予備実験を行った。炭素循環を通じた温暖化へのフィードバックは弱いという結果が得られた。
      ・動的植生モデル(DGVM)については、一地点版による検証実験を経て全球版への拡張が完了した。

    2.大気化学モデルについて
      ・IPCC第4次報告書へ、大気化学モデルCHASERによる単体モデル実験の結果を提出した。

      ・統合モデル本体とCHASERとの結合作業完了

    3.雲・エアロゾル・放射フィードバック評価グループの活動について
      ・詳細な雲物理モデルから得られたパラメタリゼーションをGCMに応用することにより、雲核形成にかんする有機エアロゾルの重要性を示唆する結果が得られた。

      ・NICAMグループとの共同作業について、全球雲解像モデルによる水惑星実験に着手した。

    4.寒冷圏モデリングについて
      ・氷床−大気大循環結合モデルの開発を継続中。来年度には細部調整まで終了の見込み。

    5.物理気候モデル改良に関して

      ・重力波パラメタリゼーションの改善の過程で得られた知見を論文にまとめて投稿した(Journal of Geophysical Research 誌)。

4)総合討論

    (中澤) Hadleyなどのモデルとのフォーミュレーションの違いはどうなっているのか。

    (河宮) フィードバックの強さに関しては、土壌呼吸のパラメタリゼーションが重要であるといわれている。ただし光合成のパラメタリゼーションとの兼ね合いも重要ではないかと考えている。

    (溝部) 人為起源CO2海洋吸収に関して、南極海で観測とモデルに大きな差が見られるのはどういう理由か。

    (河宮) この海域における対流の深さなどがモデルと現実で違うことが原因の一つであろう。ただし観測に基づいた図も推定値であり、あまり細かく値の差に踏み入って議論する意味があるかどうかは疑問。

    (中澤) DGVMについて、C3とC4の交代はモデル化されているのか?

    (佐藤) 今のところモデルには入っていない。

    (山中) C4MIPのプロトコルというのはどの程度厳密に決まっているものなのか?

    (河宮) とくに大気海洋結合モデルについては、それほど厳密に決まっていない。いろいろなグループが自分でやった結果を持ち寄る場所という印象。

    (中澤) モデルの妥当性検証はどのようにするのか?

    (松野) 単体モデルの妥当性検証はそれぞれ行ってきている。全部結合したときにどうすべきかについては、方法論が出来上がっているわけではない。
    ダンスガード・エシュガーイベントなど、比較的短いタイムスケールの古気候現象は検証材料になりうる。

    (山中) 大気海洋結合モデルによる予備実験の初期化はどうしているか。

    (松野) それほど丁寧に行っているわけではない。とくに陸域炭素についてドリフトは残っている。

    (山中) 長いタイムスケールを問題にするとき、ドリフトは除いておいた方がよい。

    (松野) CO2排出のStabilizationを考える際には300年以上のタイムスケールを考える必要があるだろう。パラメータチューニングを更に行った後の実験ではドリフトを取り除くようにする。

    (溝部) 課題2から見た課題3というのはどういう位置づけになるのか。

    (河宮) 「安岡共生」についてはもとから Sim-CYCLE の改良をテーマにしているので連携がとりやすい。「日比谷共生」については連携は決して簡単ではないが、できるものについては海洋研の植松グループ、北大(及び共生2)の山中グループなどと議論を重ねている。

    (溝部) 共生プロジェクトの「終わり方」を考えるとき、課題3の成果がどのようにモデルに生かされているのかはきちんと整理しておく必要がある。
    課題3のテーマと他共生課題との対応をつけた「マッピング」を作ることとを検討しているがその際には研究者側の協力も仰ぎたい。

    (松野) 協力する。ただし課題3の結果のすべてを直接モデルに生かすのは至難の技である。次のモデル開発の出発点になるように成果の位置づけが出来ればよいのではないか、と考えている。

    (中澤) 9月にBoulderでCO2会議が開催される。共生2からも参加を勧める。

    (河宮) 参加したい。

    (秋元) この種のモデルの、他国での開発状況はどうなっているか。

    (河宮) HadleyやNCARを含む多数のグループが開発中である。コーディングレベルの話としては、フロンティアは比較的進んでいるほうではないか。

    (溝部) パラメタリゼーションの妥当性を検証するのに、モデルに入れてみて検証、という方法はありうるものなのか。

    (松野) ありうる。

    (溝部) とすれば、観測研究から得られたパラメタリゼーションを検証するためには、モデリングのプロジェクトと密接に連携をとる必要がある。課題3から何らかのパラメタリゼーションが提案された場合、必ず検証は行うようにして欲しい。

    (秋元) 課題3の我々のグループは、直接パラメタリゼーションの提案に結びつくものではない。が、妥当性検証の材料を提供するなどしてモデルの高精度化には貢献できると思っている。

    (井上) 観測を通じたモデル結果の検証について、エル・ニーニョと炭素循環の関係を調べることはよい検証材料になりうる。そういった形で観測研究とモデリング研究の協力ができることが望ましい。

    (田中) IPCC第「5」次報告書について具体的な話は出ているのか。

    (松野) IPCCのメカニズムが将来不変かどうかは分からない。ただこうした活動の必要性は不変であろう。

    (井上) IPCCの大まかな活動は変わらないと思う。ただし、いままでの「レビューのみ」という活動方針が「研究の方向付けも行う」という形に変わることはありうる。

5)その他
    統合モデルの名称について受ける感想・意見を外部委員から募った。 今後の対応検討の材料とすることとなった。

    以上



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