「人・自然・地球共生プロジェクト」課題2第11回運営委員会議事録

1. 日時
平成18年3月14日(火) 14:00-16:30

2. 会場
海洋研究開発機構横浜研究所(横浜市金沢区昭和町3173-25)
交流棟2階 小会議室

3.議事次第
1) 委員長挨拶
2) 文部科学省挨拶
3) 進捗状況報告

発表者:松野太郎

大気海洋結合炭素循環モデルにおいて、特に陸域炭素循環モデルのパラメータ値の調整をし直して温暖化再実験を行い、気候変化と炭素循環との間に有意な強さのフィードバックがあるという結果を得た。この結果は「炭素循環気候結合モデル相互比較プロジェクト(C4MIP)」に提出され、IPCC第4次報告書にも掲載される可能性が高い。また同報告書作成に向け大気化学分野で組織された、大気組成変化予測プロジェクトにも参加し平成16年度中に結果を提出してあったが、こちらの結果も掲載される可能性が高い。植生動態モデルの開発については、全球スケールでの実験を行い結果についてまとめた論文を提出した。
統合モデルのモデル上端を成層圏上部まで引き上げる作業に着手し、準二年振動に似た振動を再現するなど成層圏においても現実的な結果が得られることを確認した。氷床−気候結合モデルも完成し、全球雲解像モデル開発グループとの協力関係も継続中である。

4)総合討論

(遠藤)
温暖化による海表面pCO2の変化の図について説明してほしい。

(河宮)
海表面pCO2を決める主要因には温度・全炭酸・アルカリ度がある。
温暖化による変化というと温度によるものを連想しがちだが、海洋環境の変化による全炭酸・アルカリ度の変化も無視できないということを図は示している。

(中澤)
酸素は入っているのか。

(河宮)
現段階では入っていない。入れること自体は技術的には難しくない。

(中澤)
海から酸素がどれだけ出ているかは、CO2の収支計算に関わってくるので大事。また、発表スライド中で80年代のモデル結果をHoughton et al. (2003)のデータと比べていたが、彼らのデータは90年代に対応するものだったと思うので、確認が必要。

(江守)
南極の氷床モデル実験のスケジュールはどうなっているか。

(阿部)
今のところ目処がたっていない。南極氷床は取り扱いが難しいが、世界的にも取り組むべき課題であるとの認識が定着している。

(安岡)
窒素、メタンを導入する計画はあるか。

(河宮)
Sim-CYCLEに窒素循環を導入する計画はフロンティアで進んでいる。

(佐藤)
SEIB-DGVMでは、光合成速度のパラメタリゼーションの中で、ごく簡単な形で窒素制限を考慮する予定である。より機構ベースで複雑な窒素制限モデルは全球スケールのシュミレーションに組み込めるほど成熟していないと考えるからだ。

(安岡)
共生プロジェクト終了後の展開にとっても、窒素の動態を考えることは重要。

(松野)
メタンに関する具体的な問題は何があるのか。

(佐藤)
嫌気的環境における有機物の酸化や永久凍土の融解によるメタンの放出などが考えられる。

(安岡)
共生第3課題からDGVMへのインプットとしては何が有用か。

(佐藤)
具体的な項目を指摘するのは難しい。普段観測をしている人も含め多くの人がモデルを使うような雰囲気を作るところが出発点。

(安岡)
モデルの感度解析などから、観測で力点を置くべき個所についての提案があるとよい。

(佐藤)
感度解析は行っていく。観測との関連も考える。

(甲山)
IGBPの委員会に先日出席したが、そこでもcommunityレベルのデータ整理は重視されていた。

(阿部)
IGBPのコアプロジェクトAIMESでは、システム論的な地球科学へのアプローチが重要視されている。観測とモデルの連携はここでも強調されている。また古気候研究を盛り上げていこうとする雰囲気がある。

(松野)
古気候のプロキシデータで、物理環境と生態系応答とのタイムラグの議論はされているのか。

(阿部)
現在のところ、充分な精度をもってそうした議論ができる段階ではない。
議論の力点は平衡応答にある。

(河宮)
来年度は統合モデルを用いた20世紀気候再現実験や温暖化予測実験を行う予定である。実験に関して提案があればいただきたい。

(松野)
DMS放出過程を組み込まないと自然状態のエアロゾルが再現出来ないのではないか。

(河宮)
クロロフィル濃度も考慮に入れたパラメタリゼーションは提案されている。SPRINTARSでは太陽光入射量の関数としてパラメタライズされていたと思う。

(江守)
温暖化以前の自然の雲核となるエアロゾルに関しては、植生からのVOCなど、陸起源のエアロゾルが大事だという印象をもっている。

(高橋)
アマゾンのVOCに関しては、CCSR中島研の学生が取り組んでいる。

(松野)
成層圏化学過程の導入はどうなっているか。

(滝川)
不均一反応以外の部分については作業がすすんでいる。不均一反応についても、参考になるコードは存在する。

(松野)
甲山先生とともに、私もIGBPの委員会に出席した。IGBPの実行計画書の日本語訳などあればよいと思った。TOGAの際にそうした例があった。統合モデルを開発している研究機関の国際ネットワーク構想についても議論があり、FRCGCにも呼びかけが来るだろう。また、IPCC第5次報告書(AR5)へ向け統合モデルをどう使っていくかを議論するワークショップが9月ころAspenで開催されるという話だ。

(江守)
そのワークショップに招待されている。日程は7月30日から8月5日。

(阿部)
AIMESの委員会でも、AR5はWCRPとIGBPが協力して作るという話になっている。

(溝部)
つまり、AR5はWCRPとIGBPが組織(プロジェクト)としてコミットするということか。

(安岡)
そうではない。AR5の作成に両プロジェクトからバランスよく人材を供給するということだ。IPCCは科学研究そのものを推進することはないという前提なので、WCRPやIGBPが明示的な形でコミットすることはできない。

以上



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