4-4 気候物理コアモデル改良サブグループ


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4-4 気候物理コアモデル改良サブグループ

最終的な統合モデルの基礎となる全球大気モデルの開発を長期的な目標とするとともに、各サブグループ(部分統合モデル)のニーズに合わせた大気モデルの開発・提供を目的とする。

共生第一課題の大気モデルを基礎とし、中層大気(成層圏・中間圏)を含むように拡張し、特に上部対流圏-下部成層圏の力学場・温度場と水蒸気分布に関して改良を行う。現在の共生第一課題のモデルには、同領域に顕著な低温・水蒸気過多バイアスが存在する。 この解決は、対流圏界面付近の雲や水蒸気量が無視できない放射強制力をもつこと、冬季-春季の高緯度下部成層圏の水蒸気量がオゾン層破壊の原因となる極成層圏雲の発生に重要であることから、重要な課題である。

この件に関しては、放射過程の計算精度や鉛直波長の短い大気内部重力波の表現が重要であると考えられるため、モデルの鉛直解像度を100 m〜1500 mの間で、いくつか変えて実験を行い、それに対して、シミュレートされる重力波や温度場・水蒸気分布の応答を調べる必要がある。現在、モデル・トップ80 kmで、水平・鉛直解像度の異なる20セットほどの実験を地球シミュレーター上で行っている。

初期成果の一例として、水平解像度はT21(格子間隔550 km程度)と粗いながらも、鉛直解像度を、従来中層大気大循環モデルで用いられてきた1500 m程度から、200 mまで細かくしたときの、温度場の再現性の様子を図6に示す。これらの図の数値は、シミュレーションの結果から、観測データの値を引いたものであり、値が小さくなるほどシミュレーションの結果が良好であることを表す。

この結果から、鉛直解像度を高くすることによって、下部成層圏から対流圏界面付近(50-300 hPa)の低温バイアス(観測に比較して温度が低い)が改善されていくことが分かる。水平解像度の増加とともに、鉛直解像度の増加には大きな計算機資源を必要とするため、これらの実験は地球シミュレーターを用いて初めて可能となるものである。

図6: 6月の東西平均温度バイアス
 図6: 6月の東西平均温度バイアス:(a)鉛直解像度1500 m、(b)同 500 m、(c)同 200 m。(単位:℃)

今後は共生第一課題と協力してモデルの改良を行いながら、統合モデルとして適切な水平・鉛直解像度を見定めていく予定である。またサブグリッドスケールの重力波の散逸過程である、数値粘性(乱流拡散)の取り扱いに関しては、共生第三課題とも協力していきたい。なお、大気モデルの鉛直座標系を、従来のσ座標系から、σ-Pハイブリッド座標系に更新する作業も並行しており、これによって対流圏界面付近の力学場の再現性が向上することが期待される。



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