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概要

MAT TOOLBOX 2018

水の量赤:多い青:中程度黄:少ないすることが重要であることを明らかにしました。このように、今後どのような点に着目してデータを解析するべきかを示すということも数値計算の大事な役割の1つです。北海道南部における3次元温度構造北海道南部では沈み込む太平洋プレートの形状が大きく凸状に曲がっており、そこでの温度構造が周囲とは異なることが予想されます。実際この地域では特異な地殻熱流量や地震分布が報告されています。そこで有限要素法を用いて北海道南部の3次元温度構造がどのようになっているのかを調べた結果、熱伝導と熱の移流の効果によって周囲と比べて高温になる部分と低温になる部分の両方が生じ得ることがわかりました。ここで用いた数値モデルの長所は複雑なプレートの形状をうまく取り扱える点であり、今後は地震学から推定されたプレート形状をそのまま取り入れた計算を行うことで、世界中の沈み込み帯において観測とのより直接的な比較を行っていくことができると期待されます。プレートの沈み込み水の3次元的な移動の計算例。沈み込むプレートが膨らむ場所で水が集まり、そこでの水の量が増加します。水の移動速度遅い水の放出源西南日本やカスカディアにおける3次元的な水の移動西南日本やカスカディア(北アメリカ西部)では短期的スロースリップによるすべり速度が、沈み込むプレートが膨らんでいるような場所で大きくなっているように見えます。短期的スロースリップの発生には水の存在が重要であることを考えると、この観測は沈み込んだプレートの形状による水の3次元的な移動・分布を反映している可能性があります。そこでプレートの複雑な形状を考慮した計算を行った結果、プレートが膨らむ場所では水が互いに集まるように移動し、そこでの水の量や間隙水圧が増加することが分かりました。これまでの研究では、主に水が沈み込むプレート内のどこで放出されるかの議論に留まっており、放出後の水の振る舞いについてはほとんど考えられてきませんでした。しかし今回の発見は、沈み込み帯で起きる諸現象を理解するためには水の移動という新たな観点から観測を見直す必要性があることを示唆しています。またここで用いた固液2相流の数値計算手法は海洋底における熱水循環や中央海嶺におけるメルトの移動、さらに氷で覆われた衛星内の水の移動など、幅広い研究対象に応用することが可能です。速い固液2相流固体と液体の二つの相が混在した流れ。マントルの場合固体とは岩石部分、液体とは岩石の隙間に存在する水やメルトのことを指します。地震波速度異方性P波やS波などの地震波速度が伝わる方向によって変わる性質のこと。その原因の1つとして、マントルの流れによってマントル構成鉱物の向きがある特定の方向に揃っていくという仕組みが挙げられます。有限要素法モデル領域を多数の要素に分割して計算する数値解析手法。要素の形状として三角形や四面体を使うことができるため、複雑なモデル形状の問題を解く際に適しています。スロースリップスロー地震の一種で、プレート境界における非常にゆっくりとしたすべり。継続時間が比較的長い「長期的スロースリップ」と短い「短期的スロースリップ」とに分けられています。Keywords森重学Morishige Manabu役職ポストドクトラル研究員E-mail morishigem@jamstec.go.jp所属学会日本地震学会専門分野アメリカ地球物理学連合専門分野固体地球物理学MAT Toolbox 2018 13