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概要

MAT TOOLBOX 2018

す。さらに重要なのは、我々の現実的な熱力学を組み込んだ数値シミュレーションでは、流体力学と整合的な温度も求まっている点です。これにより、例えばH2Oがどの場所でどういった形態(固体あるいは気体)で存在するか、といった情報も得られます。逆に、こういった物性は熱力学量を通して流体力学に影響を及ぼしています。つまり、温度を通して流体力学と化学が密接に結びついているわけです。このように原始惑星系円盤の流体力学を化学的見地からも解析することで、海洋・地球・生命の起源へと迫ります。衛星における海洋生命の起源へ実は、地球の衛星である月、あるいは土星や木星など巨大ガス惑星の衛星も、原始惑星系円盤に比べるとスケールは小さいですが似たような状況、すなわち誕生しつつある惑星の周囲に形成された回転ガス円盤(周惑星円盤)で形成されたと考えられています。そして、我々が現在行っている原始惑星系円盤を対象とした数値シミュレーションは、パラメータを変えて実行することで周惑星円盤を対象とすることが可能です。そうしたシミュレーションを行うことで、それぞれの衛星がいつ、どのような材料をもとに作られたのか、その際内部に溜め込まれた熱エネルギーはどれくらいか、といった問題に答えることができると考えています。これにより、JAMSTECも注目しているエンセラダスやエウロパにおける海洋生命の可能性にもアプローチする計画です。原始惑星系円盤の乱流原始惑星系円盤は内側ほど速い差動回転をしているが、その自由エネルギーは、通常コリオリ力が邪魔をして利用することはできない。ところが、自己重力や磁場との相互作用があると、それを通して定常的に自由エネルギーが取り出せるようになる。これにより、図2のような乱流が維持される。ガスと磁場の相互作用電離したガスは、ローレンツ力を通して磁場と相互作用する。高温のため電離する熱的電離では、その度合いが温度に非常に敏感である。他に、X線や宇宙線によって非熱的に電離される場合もある。図2(上右)では、この非熱的電離によって円盤表面だけが磁場と相互作用し、乱流となっている。Keywords原始惑星系円盤の重力不安定原始惑星系円盤中の音波の分散関係式は、回転と重力によって修正を受ける。CsΩ/πGΣで定義されるToomreパラメータが1以下の場合、音波は軸対称短波長近似のもとで不安定化する(重力不安定)。ここで、Csは音速、Ωは回転角速度、Gは重力定数、Σは面密度。ガスの熱力学量データベース熱力学平衡計算から求まる熱力学量データベースは、公開されているものがいくつもある。しかし、原始惑星系円盤ガスの幅広い温度領域(外端の数Kから内端の数十万Kまで5桁以上に渡る;図2の色を参照)に対応するものは存在しない。我々の作成したデータベースは計算コードと共に公開予定である。ガス不透明度図2原始惑星系円盤において、中心星からの距離が0.04天文単位(上左)、1天文単位(上右)、50天文単位(下)の位置で実現される局所的な流れの構造(色はガス温度を表す)。それぞれ、対流不安定(SH, MNRAS, 448, 3105, 2015)、磁気回転不安定(SH & Turner, ApJL, 732, L30, 2011)、重力不安定(SH& Shi, MNRAS, 469, 561, 2017)が特徴的な乱流を駆動する。光子がガス中を進むときの(ガス単位質量あたりの)衝突断面積を不透明度と呼ぶ。この衝突を通して、ガスの熱エネルギーと輻射のエネルギーは交換される。例えば、ガスの熱エネルギーの方が大きい場合、その分が輻射に渡され、結果としてガスは冷却される。廣瀬重信Hirose Shigenobu役職主任研究員E-mail shirose@jamstec.go.jp所属学会日本天文学会ほか専門分野天体物理学MAT Toolbox 2018 23