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概要

MAT TOOLBOX 2018

生命を観て、触って、解析して理解する近年の観察技術と遺伝子工学の発展により、ミクロな生命は想像を超えるダイナミックな世界であることがわかってきました。最先端の観察、操作、解析技術の知を結集させて隠されたミクロな生命の解明に挑む最前線が今ここに明らかとなります。生命科学のフロンティア我々の身体は多数の細胞からできており、その細胞には核や小胞体といった細胞内小器官(オルガネラ)が詰まっています。更に、そのオルガネラはDNA、RNA、タンパク質、脂質といった数ナノメートルの分子から構成されています。静的な生命の姿は電子顕微鏡を利用することで、分子レベルまで見ることができるため、よく理解が進んでいますが、生き生きとしたダイナミックな生命の姿を見ることはできません。生命の動的な性質は生命が生きているという本質的特徴ともいえ、このような動的な生命現象を解明していくことは、生命の本質を理解するために必須です。生命のダイナミックな性質を観る強力なツールは光ですが、光には数百ナノメートルの解像度限界があり、それ以下の構造やダイナミクスを観ることはできません。数百ナノメートルというサイズは、生命ではオルガネラのサイズに相当します。よって、オルガネラ以下で起こっている現象の理解はそれ以外に比べて非常に遅れています。超解像度顕微鏡や間接的な可視化方法を利用して、オルガネラと分子がどのように結びついてダイナミックな生命現象が実現しているのか、それを解明していくことが21世紀の生命科学のフロンティアの一つといえます。図1人工脂肪滴の断面画像(岡田賢氏の協力の下取得)。スケールバーは20μm。私は、この問題に対して脂質を主成分とするオルガネラ(脂肪滴と生体膜)を対象とし、「観て」「触って」「解析して」、理解するという研究スタンスをとっています。ここでは、JAMSTECのファシリティーを用いて私が日々七転八倒している日々の一部を紹介します。紹介する題材は脂肪滴と生体膜、そしてそれらを模倣するソフトマテリアルですが、技術それ自体は生命に特化しているわけではないので、生命の研究をされていない方も一読いただくことで思わぬ発見があれば幸いです。生命を観る私が今、最も精力的に研究をおこなっているのは脂肪滴です。古くから存在は知られていましたが、ただの脂図2細胞内核と脂肪滴の蛍光画像。紫色は核、緑色は脂肪滴を表します。右図は100倍レンズで撮影された核。スケールバーは10μm。質の塊と思われており着目されてきませんでした。近年になり、脂質合成やタンパク質分解の場として機能していることがわかっており、飛躍的に研究が進んでいます。私はこの1μm程度のオルガネラの物理的な性質と生物的機能との関係の解明を目指しています。脂肪滴はソフトマター物理学の分野ではエマルジョンと呼ばれ、物理学の分野で確立された理論や実験及び解析手法を適用することで生産的に研究を進めることができる魅力的な対象でもあります。我々は2017年度にJAMSTECに導入された最新の電子顕微鏡を用いて脂肪滴の内部構造を可視化しました。人工的に作成した脂肪滴を液体窒素で瞬間凍結することで固定し、ガリウムイオンビームを用いて割断した断面を撮影することに成功しています(図1)。また、深海総合研究棟には高速共焦図3マイクロマニピュレータシステムを用いて人工脂肪滴に力学刺激(変形)を与えています。スケールバーは100μm。図4光刺激を人工脂肪滴(エマルジョン)の局所領域(丸で囲った領域)に与え褪色させた後の蛍光回復ダイナミクス。スケールバーは50μm。6非線形物理