JAMSTECの取り組み JAMSTECの取り組み

「プラスチックをさらに知ること」と
「協力の環」を広げること

科学的知見を深めるためのデータ収集、そして、まだ見ぬ場所にある海洋プラスチックを見つけること。今求められていることを踏まえて、JAMSTECも日々活動を行っています。私たちの使命は、科学的観点から研究を進めることだけではありません。協力の環をつくっていくことも、使命の一つです。私たちの取り組み、そして「これから」の展望を一緒に見ていきましょう。

より広く・深く
海洋プラスチックを知るために

調査航海
―研究船「よこすか」による
マイクロプラスチック航海の実施―

深海潜水調査船支援母船「よこすか」

分析のためには、海水や海底の堆積物などの「試料」が必要です。JAMSTECでは、試料を集めるための調査航海を行っています。2019年には、相模湾や伊豆小笠原海溝などのマイクロプラスチック分布を調べるために、研究船「よこすか」による調査航海を実施しました。

海面に浮遊するマイクロプラスチックは、プランクトン採取用の「ニューストンネット」を用いて採取。船舶でネットを引っ張って、海の表層に浮かぶ0.3mm以上のプラスチックを集めました。

ニューストンネット

また、表面だけでなく深海の底に沈んだ海洋プラスチックの調査も行っています。深海では、深度6500mまでは有人潜水調査船「しんかい6500」、さらに深い場所(6500m~9200m)は独自開発した「フリーフォールカメラシステム」を駆使して、海底の堆積物を採取しました。

しんかい6500
フリーフォールカメラシステム

技術開発
―より効率的な
マイクロプラスチック分析技術の開発―

採取した海水や堆積物内のマイクロプラスチックをより効率的に分析するために、JAMSTECでは文部科学省からの委託事業(海洋資源利用促進技術開発プログラム「マイクロプラスチックに関わる情報取得のための技術開発」)により「ハイパースペクトルカメラ」を用いた自動分析技術の開発も行っています。

■自動分析システムの構想図

「ハイパースペクトルカメラ」は、プラスチックの材料によって異なる「光の波長」を捉えます。その後、AIやデータベースによる自動選別・画像解析により、分析試料内のマイクロプラスチックの材質・サイズ・数などを自動で分析できるような仕組みを構築しています。

ハイパースペクトルカメラ

理論研究
―海洋プラスチック問題を物理の視点で体系化する―

海という自然界でプラスチックがどのように壊れ、広がり、沈んだり、生態系に取り込まれるかを体系的に捉えるための理論を構築しています。海洋プラスチックの環境影響評価に貢献するとともに、より広い自然科学を探求します。

破壊シミュレーション

理論モデル

破壊の衝撃の強さに応じて、どの大きさのマイクロプラスチックがどのくらい生成されるかを表す理論モデルを提案しました。このモデルに基づいて、破壊の詳細プロセス、気象現象(波や風)と破壊の関係を調べつつ、より現実に近い分散シミュレーションの開発を進めています。

海洋プラスチックの物理学的理解について、詳しくは

民間の皆さんとの協働
―「日本-パラオ親善ヨットレース」における観測―

さまざまな法人や企業との協働による研究調査も進めています。2019年12月~2020年1月にかけて開催される「日本-パラオ親善ヨットレース」において、関係機関との協力のもと、競技参加艇「トレッキ―号」および伴走船「みらいへ」に調査設備を搭載し、連続観測を行います。

競技参加艇「トレッキ―号」
伴走船「みらいへ」

「みらいへ」にはJAMSTECの研究者などが乗船して調査や分析を行うほか、同乗するパラオ共和国の青少年向けに海洋環境や生態系に関する普及教育活動を実施します。

日本-パラオ親善ヨットレースについて、詳しくは

データ発信
―「深海デブリデータベース」の公開―

深海底のデブリ(ごみ)映像を発信する取り組みも行っています。それが、2017年に公開を始めた「深海デブリデータベース」です。「しんかい6500」や「しんかい2000」などで30年以上にわたり集めたデブリに関する映像を、誰でも見ることができます。

駿河湾の映像

マリアナ海溝の映像

駿河湾(水深2400m)にて大量のレジ袋が海底付近を漂う映像や、マリアナ海溝(水深1万900m)にてプラスチック片が佇む映像など、約3200の映像を公開中です。世界初のデータベースとして注目されており、研究はもちろんのこと、より皆さんに深海デブリを知っていただくために活用しています。

深海デブリデータベースについて、詳しくは

協力の環を広げる取り組み

教育―「海洋ごみ」
学習・体験コンテンツの展開―

沖縄にあるJAMSTECの拠点「GODAC(国際海洋環境情報センター)」では、県内全域で幅広い年代の方を対象にしたセミナーの開催や、学習テキストの制作を行っています。

GODACについて、詳しくは

年に4回JAMSTECの最新の研究成果を学ぶ「GODACセミナー」では、2018年に「マリンデブリってなんだろう?」と題して、海洋プラスチックの特性を座学や実験を通して学びました。また、沖縄県内どこにでも出張して行う「おでかけ教室」でも、海洋プラスチックに関する教室を実施しています。

プラスチックの特性を実験や工作も交えながら学習

普及―マリエント
「ちきゅう」たんけんクラブへの協力―

市民の皆さんを交えての調査もあります。青森県にある八戸市水産科学館(マリエント)との取り組みでは、海ごみの採取を『マリエント「ちきゅう」たんけんクラブ』の会員の方が行い、その後にJAMSTECの地球深部探査船「ちきゅう」のラボ内で、プラスチックの分析を行いました。

「ちきゅう」のラボで行った、海洋プラスチックの比重分離実験(提供:八戸市水産科学館マリエント)
「北西太平洋岸におけるプラスチック海洋汚染の状況への取り組みの様子」として発表(提供:八戸市水産科学館マリエント)

海洋プラスチックに興味を持たれた皆さんは、恵比須浜での海洋プラスチック調査を行い、「JpGU(日本地球惑星科学連合大会)」での発表も行いました。JAMSTECでは、発表練習や質疑応答へのアドバイスなどもさせていただきました。

これからの課題・展望

2019年に日本で開催された「G20大阪サミット」では、海洋プラスチックごみによる新たな汚染を2050年までにゼロにすることが目標として設定されました。これを機に、海洋プラスチックに対する科学的知見への期待は、さらに高まっています。

例えば、調査の面。未観測の場所などでの観測網の充実は、さらに求められていくことでしょう。一方で、海表面や沿岸でのプラスチックの分布実態のデータは集まりつつあります。これらの情報に世界中の人がアクセスして知見を高めていけるように、国際的なデータベースなどの構築も期待されています。

また、さらにマイクロプラスチックの実態に迫るためには、より細かなものを採取できる技術や方法も必要となってきます。もちろん、より効率よく分析していく方法も必要です。

プラスチックを集め、分析するだけではなく、プラスチックがどのように流れ出て、どのように砕け、どこへ漂っていくかを知り、それらが将来どうなるかを予測するための研究も必要ですし、生物たちの体内に入った時の影響や、生物の暮らしをどう変えてしまうのかを探る必要もあります。課題は山積みです。

しかし、「海洋プラスチック」と切り離さずに、地球や海の問題として観測を行っていくこと。そして、立場を超えた協力があれば、この問題にはまだまだ立ち向かっていけます。