陸上植物の機能の評価と予測:気候調整機能と生物多様性

陸上の植物は海洋とともに大気中の二酸化炭素を吸収し、温暖化を緩和する役割を担っています。また、地域社会に対して様々な生態系サービスを提供しています。持続可能な社会の実現のためには、陸上植物を適切な環境で保全し、その生態系機能を上手に利用することが重要です。JAMSTECでは大きな環境変化が起こっている北極周辺に注目し、陸上植物の現状分析と将来予測の両面で研究を進めています。特にアラスカや東シベリアでは、観測タワーで気象と生態系変動の長期的な観測を行うとともに、人工衛星データを用いて植物の状態やその生育に重要となる水分などの情報を収集しています。これらの観測データは、温暖化が永久凍土の融解や乾燥化、林野火災に与える影響を評価するために利用します。また、日本や東南アジアの自然林や植林地も研究対象とし、生物多様性の指標である植物の着葉期間や資源量の変化を広域的にモニタリングするとともに、それらの変化を予測するシミュレータの開発を進めています。そして、生態系の機能やサービス等の価値を明らかにすることを通じて、地域社会における将来の土地利用や保全などの施策に貢献します。この取組では、2030年頃までに確度の高い環境情報を提供し「SDG13気候変動に具体的な対策を」「SDG15陸の豊かさも守ろう」に貢献することを目指しています。 

アラスカの観測タワーによる温室効果ガスフラックスモニタリングの様子
東シベリアの植物環境変化のシミュレーション(上段1996~2005年の平均、下段2091~2100年の平均)
マレーシア・ボルネオ島の熱帯林の観測の様子

地球環境部門 地球表層システム研究センター 物質循環・人間圏研究グループ
地球環境部門 北極環境変動総合研究センター 北極化学物質循環研究グループ