極端な気象現象の予測に貢献し、気候変動予測の信頼性を向上するための科学的知見を拡充

海洋研究開発機構(JAMSTEC)では、全球において雲を高解像度でシミュレートできる数値モデル「全球雲解像モデル」の開発を行っています。このモデルにより、台風に伴う豪雨のような局所的な現象から、全球の雲降水分布、それらの温暖化時の変化までを統一的に扱うことで、高精度の気候変動予測を目指しています(図1)。気候変動に対する具体的な対策を施す際の根拠となる、極端な気象現象の発生やその変動に関する科学的知見を拡充することは、喫緊の課題です。
雲・降水過程をより適切にシミュレートするために、物理過程などについてモデルの精緻化を進め、地球シミュレータ等のスーパーコンピュータを用いた大規模数値シミュレーションを行っています(図2)。
これらを土台として、台風発生の延長予測や温暖化予測に関する最先端の研究を行い、世界気象機関(WMO)による、季節内~季節予測プロジェクト(Subseasonal to Seasonal Prediction Project, S2S)など、国際的な延長予測への取組みに参与しています(図3)。
また、JAMSTECの主導する国際集中観測との連携により、観測地域における現象の理解や、観測データとの比較によるシミュレーション結果の評価に取り組んでいます(図4)。これらの取組みは、東南アジアなど観測対象域における災害予測の高度化への貢献にも繋がります。
2021年までに季節内振動が台風等に及ぼす影響に関する新たな科学的知見を提示し、2025年までに季節内振動や台風に関連する極端現象の発生確率予測システムを構築することで、極端な気象現象の変動メカニズムの理解およびその予測信頼性の向上に貢献し、SDGsの実現に資することを目指します。

図1 全球雲解像モデルの概念図。
図2 (a) 雲微物理過程の概念図 。雲微物理過程の高度化による改善。(b) 台風の周りで方位角平均した降水(mm/hr)の半径分布。(c) 上層雲量の平均分布。
図3 (a) サイクロンPAMの衛星画像。(b)(c) 全球雲解像数値シミュレーションにおける季節内振動とPAMの再現性。
図4 国際集中観測と全球雲解像モデリングの連携。

地球環境部門 環境変動予測研究センター 雲解像モデル開発応用グループ