研究領域
領域テーマB
炭素循環・気候感度・ティッピング・エレメント等の解明

温暖化抑制目標達成に必要なCO2等排出削減量を、
地球システムモデルを高度化し用いて評価する

領域代表者 河宮 未知生(海洋研究開発機構 気候モデル高度化研究プロジェクトチーム プロジェクト長)
領域代表者 河宮 未知生(海洋研究開発機構 気候モデル高度化研究プロジェクトチーム プロジェクト長)

 IPCCの第5次評価報告書(2013年)は、人為起源二酸化炭素排出の累積量と温暖化による気温上昇がよい比例関係にあることを示しました。この比例関係から、いわゆる2℃目標の達成のためには総排出量をどの程度に抑える必要があるかを見積ることができます。見積られた総排出量のうち、人類は現時点ですでにその3分の2ほどを排出してしまっています。2℃目標、あるいはパリ協定で言及された1.5℃目標の達成が決して容易ではないことが分かりますが、一方で見積りの不確実性も大きく、結局正確な値はどの程度なのかによって温暖化抑制のコストに大変な違いが生じ、将来の社会像は大きく異なってくることが分かってきました。
 こうした見積りや不確実性の評価は、生物・化学過程を導入した気候モデル「地球システムモデル」(ESM)によって行われます。
 本テーマでは、より精緻な見積りを目指すとともに、気候変動予測において今後重要になるであろう窒素やメタンの循環など新しい生物・化学過程の導入や大気海洋の物理プロセスの改良、人間活動との関係についてESMの高度化を進めています。また、急激な気候変化を避けるために、微小粒子を大気中に散布して太陽光を遮るといった気候の人工制御の有効性の評価にも、ESMによるシミュレーションで取り組みます。さらに南極氷床の崩壊といった、確率は低いものの発生した時の損害が大きな事象についても目配せが必要です。本テーマでは、こうした取り組みから、パリ協定の合意で新しいフェーズに入った気候変動枠組み条約等、温暖化の緩和抑制策の道筋づくりに貢献していきます。

課題 代表者
(ⅰ) ESM の開発・地球システム解析
a ESM 開発・応用 羽島 知洋 
海洋研究開発機構 ユニットリーダー代理
b マルチモデル解析による温度上昇の確率論的評価 筒井 純一
電力中央研究所環境科学研究所 副研究参事
c ESM 開発環境整備 荒川 隆 
高度情報科学技術研究機構 主任研究員
(ⅱ) 地球−人間システム相互作用
a 地球−社会経済システム相互作用 立入 郁 
海洋研究開発機構 ユニットリーダー
b 地球システム−水資源・作物・土地利用モデル結合 横畠 徳太
国立環境研究所 主任研究員
(ⅲ)テーマ間連携のための技術・事務支援 河宮 未知生
海洋研究開発機構 プロジェクト長
図1
図1:地球システムモデルによる人為起源環境変化予測の概念図
人間のCO2排出量や人工的な窒素固定量(大気中の窒素を生物が利用可能なものに変換するプロセス)は増え続けています。これらは気候変動とその予測に関わってくることになるため、窒素循環と炭素循環、さらに気温・降水量の変化と言った物理的な気候変化との相互作用を考慮に入れながら統合的に予測を行うことが重要です。