都市・臨海・港湾域の統合グリーンイノベーション

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研究目標

ヒートアイランド現象・豪雨と適応策のためのデータベース構築とデータ同化技術の開発
 都市域・臨海・港湾域における環境変化の予測とその適応策についての取り組みが遅れた背景には,都市・臨海・港湾域スケールの現状観測による詳細データと予測シミュレーション技術の直接的な結びつきがこれまで希薄であったことも要因の一つです。
 主たる研究対象地域である東京都と川崎市を対象として、都市、臨海、港湾域における超高解像度の気象観測データ、および建物の形状や建材、および土地利用データなどに加えて、超高解像度・内水氾濫シミュレーションに必要な下水道台帳データを基盤としたマンホール位置および下水道管渠網の詳細データを関連機関からの提供および現地調査によって収集します。それらデータのデジタル化およびデータフォーマット統一化を含む、高解像度のシミュレーションに適用可能なデータベースを構築します。また、地球観測衛星や小型飛行機等によるリモートセンシングデータを活用して、市街地に存在するパッチ(公園等の緑地)、コリドー(公園等を結ぶ道路等)と、マトリックス(パッチ、コリドー以外の市街地域)の状況を定量的に把握し、どこに、どんな種類及び量の樹木等(緑)があるかについての構造を明らかにしたデータベースを構築します。これらのデータは解像度も違い、データの種類も異なるデータであり、超高解像度でのシミュレーションと同時並行に推進する適応策シナリオの検討の際にも使用するので、複数の異なる種類の観測データ、収集データに対して必要な情報をすぐにとりだすことが可能であり、多種多様なデータを一括管理することが出来るデータベースを構築します。
 これらの超高解像度の観測データを使用した適応に役立つシミュレーションの予測精度を向上するために、観測および収集データをどのように使用すれば効果的であるかを検討し、超高解像度シミュレーションに適用可能な、異なる時空間分布を持ちかつ異なる種類の観測データを有効に活用するためのデータ同化手法を開発します。加えて、開発した同化手法の有効性を、再現シミュレーションを実施することによって検証します。


図1.臨海・港湾域から都市域への風の道の影響についての概念図。


都市域、臨海・港湾域におけるヒートアイランド現象・豪雨と適応策
 ヒートアイランド、都市型集中豪雨および内水氾濫を、できるだけ現実的な現象に近い形で再現及び適応に役立つシミュレーションを実施するため、都市域の現実的な特性を再現可能な、建物や道路の特性と数メートル規模の熱的対流や渦を表現できるような、超高解像度・大気モデル、河川や運河と陸域の相互影響を表現できる臨海域モデル、加えて、外洋の影響を受けながら内湾の環境を表現できる港湾域モデルを開発し、それら3モデルを連成した超高解像度の都市・臨海・港湾域モデルを開発します。併行して、雨水流出と内水氾濫を統合的にシミュレーションすることが可能な内水氾濫モデルを開発します。さらに、これらモデルの妥当性を検証するため、ヒートアイランド、都市型集中豪雨、内水氾濫を超高解像度で再現シミュレーションを実施し、さらに再現結果と実際に生じた状況との比較研究に基づいて各モデルの性能評価・改善を行い、モデルの高度化を図る。また、高度化された内水氾濫モデル等を活用し、気候変動下における超高解像度のシミュレーションを実施します。
 これらの超解像度シミュレーションの結果は、適応策としてのシナリオを検討する際の根拠データとなる。これらの提案された適応策シナリオを、再度シミュレーションの条件として設定し、ヒートアイランド、都市型集中豪雨および内水氾濫の予測を実施します。このシミュレーションを実施することで、シナリオ自体の定量的な評価が可能となり、その有効性を示すことができる。このサイクルを通して、気候変動条件下において、現在~未来のヒートアイランド、都市型集中豪雨および内水氾濫に頑健な都市のありようを、短期~長期にわたる時空間スケールごとに具体的、現実的かつ有効な適応策として提案します。
 特に、主たる研究対象地域である東京都と川崎市においては、現行の施策、市民・企業活動等の動向を鑑み、地区計画スケールで実現可能な都市環境シナリオに基づいた適応策を提案します。


図2.都市域接地境界層の熱対流シミュレーション結果(解像度は水平,鉛直とも5m)。