Chikyu Report
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ガスモニタリング2012年08月11日

おはようございます。今回は、僕を含め4人の研究者が交代で行う「ガスモニタリング」という研究について紹介します。

この航海では、ライザー掘削という技術を使って、海底下2200mという深いところまで掘削が行われます。ライザー掘削では、孔内の圧力を調整したり、ドリルビットの動きを潤滑にしたりするためなどに掘削泥水と呼ばれる特殊な液体を循環させて掘削を行うのですが、泥水を循環させると、掘り屑やその地層に含まれていた水やガスも一緒に船上まで上がってきます。このガスを分析し、地層中の情報を連続的に得ようというのが「ガスモニタリング」です。

ちなみに、「なんでライザーって呼ぶんですか?」と掘削の専門家に聞いたら、「もともと海洋石油掘削に使われている技術で、泥水や、それこそ石油が海底から上がっていく(Riseしていく)管路だから、Riserと呼ぶんだよ」と教えてくれました。なるほど納得です。今回は、石油のかわりに貴重な科学的情報がRiseしてくるんですね。

地層中の天然ガスは微生物と切っても切れない関係があります。例えば、海底下には、水素と二酸化炭素を使ってエネルギーを得てメタンを生成する微生物が見つかっています。海底下を掘り進んでいくのと同時に、メタンなどのガスの化学組成を分析することで、どのあたりの深さで微生物が活発に活動しているのか?なんてことをすぐに知ることができるかもしれません。


「ちきゅう」に新しく導入されたガスモニタリングラボにて。
左から、昨日、ヘリで飛んできて新しくメンバーに加わったマーシャル ボールズ(ブレーメン大学)、僕、ウェイリー フォン(オレゴン州立大学)


ガスモニタリングラボは、通常の実験室があるラボエリアから遠く離れた、デリック(掘削やぐら)のすぐ近くにあり、数時間交代で一人ずつラボにこもる予定です。実はこのラボ設備は、去年「ちきゅう」に整備され、実際に使用されるのは今回が初めてです。コンテナを改造したこのラボには、ピッカピカの分析装置が所狭しと並んでいて、ガスサンプルが届くのを待ち構えています。僕らも期待と不安が入り交じった気持ちで掘削が始まるのを心待ちにしています。なにしろ、いよいよ掘削が開始されると真っ先に科学データを得ることができるのは、僕たちガスモニタリングチームなのですから!

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