Chikyu Report
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マクロからミクロの世界へ2012年08月14日

午前0時のヘリデッキ。私たちのナイトシフトの仕事がはじまる暗闇の中、夜空を見上げて流れ星に目を凝らしてみた。昨日の朝が、ペルセウス流星群のピーク。きらびやかにライトアップされたデリックの彼方は、薄い霧がかかっていたけど、一瞬の澄みきった夜空が見えた。最初の数時間はきれいな流れ星が見えたけど、その後はずっと朝霧が立ちこめていた・・・

「ちきゅう」のラボでは、研究者が最初のサンプルが到着するのを待ちわびながら忙しく準備をすすめています。実際の調査はこれからだけど、私の中ではすでに始まっています。

というのも、ここは2006年に行われた「ちきゅう」慣熟試験航海CK06-06で一度掘削されたことのある場所です。その時は,海底下600メートルあたりまで掘削が行われ、私は350mくらいまで採取されたコアサンプルを研究しています。私の専門は微古生物学です。

とくに、ケイ藻(単細胞でケイ質の殻骨格がある)や石灰質ナノ化石(単細胞で石灰質の殻骨格がある)などの植物プランクトンに興味をもっています。海底に埋もれた微化石を調べると、その堆積物がどの時代にできたものなのか、正確な地質年代を読み取ることができます。さらに微化石の情報は、太古の海の環境がどのように変わってきたかを知るのにすごく役立ちます。


ケイ藻の写真:Thalassiosira oestrupiiは、海生種で550万年前までさかのぼって年代を決めることができるマーカー(指標化石)です


何百メートルとつながれたドリルパイプが運んでくる海底下のサンプルに必要なのは、顕微鏡で数百倍に拡大したミクロな情報。そのミクロなものを識別できる目と忍耐も、同じように長い道のり。


掘削された海底堆積物中の「ケイ藻」や「石灰質ナノ化石」を偏光顕微鏡で観察します


この掘削地点の上部350mについて、「指標化石」とよばれる化石がいつ出現して絶滅するのか、そして、地球規模とまではいかないにしても、かつてその種類の生物がどのくらい広い範囲や環境条件に生息していて、この地域の信頼できる地質年代の指標になるかを見たいと思っています。

地球の歴史の中で、ある種の生物が出現し絶滅していく。過去の地球環境とともに変わりゆく生命進化について、もっともっと知りたいと思っています。時間や地球環境とともに繰り返される生命の歴史を調べれば、見えてくるような気がします。「我々はどこからきたのか、そして何処に向かうのか」


海底堆積物を採取するために必要な「マクロ」のドリルパイプ

(日本語訳 高知大学 村山雅史教授)

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