Chikyu Report
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コアと旗と日の出2012年09月03日

みなさん、おはようございます。今は午前0時30分、今日から9月です。時間が過ぎるのは本当に早いですね。乗船してもう36日目になります。

私は、堆積学グループの一員として航海に参加しています。私の勤務シフトは深夜0時に始まりお昼の12時に終わります。毎日、「さぁ、今夜はどんなコア試料に出会えるかな?」とワクワクしながら仕事を始めます。昨夜はゆっくり休めたのでとても気持ちがいい「夜」を迎えています。

さて、私はインドネシア出身ですが、今はオーストラリアのクイーンズランド大学で研究をしています。大学のある都市ブリスベンと日本との時差は1時間しかありません。でも「ちきゅう」船上では夜シフト勤務なので「船内時差」になれる必要がありました。いまでは、新鮮な空気と美しい日の出を楽しめるので、このシフトを楽しんでいます。




船上では、堆積学グループの3人(昼)+3人(夜)の仲間と一緒に研究をしています。採取されたコア試料やカッティングスがどんな岩石で、どんな地層を形作っているか観察し、調査地点の地質学的な歴史を調べています。

乗船研究チームの一員としての分析に加えて、私個人の科学的関心として、インドネシアやオーストラリア、日本における新~古第三紀(約6500万年前から約180万年前の地質時代)の石炭層での微生物活動と、天然ガスの再生過程について比較研究したいと考えています。

さて、海底下深くから採取されたコア試料は、私たちが研究室のテーブルで観察する前に3~4時間の「旅」をしてきます。船上に回収されると、1.5mの長さにカットされ、X線CTスキャンで非破壊検査を受け、微生物分析と間隙水の化学分析のために筒状のままサンプルが切り分けられていきます。

これらの処理と分析が終わると、1.5mの長さに切られたコア試料は、大きなカッターのある部屋に連れて行かれて、ラボテクニシャンが分析用と保管用とに試料を半裁します。

コア試料が保管用に半裁されると、ようやく私たち堆積学グループが観察するコアラボに運ばれてきます。キュレーターは、分析用の試料が研究計画に基づいて取り分けられているか監督します。私たちは、試料が一度に8本も並べられる、2mほどの大きなテーブル(目盛と照明もついています)を囲んで観察を始めます。




堆積学グループの主な役割は、地層ごとの堆積物の観察です。まずは試料全体の色や堆積構造などをざっと観察し、記録用紙に書き込んでいきます。

その後に、細かい部分を丁寧に観察していきます。砂や泥などが海底に降り積もった厚さ、角度、積もる順番、それに掘削によってどのくらい地層が乱されているかをひとつずつ観察していきます。時には顕微鏡で詳細に観察します。

堆積学グループは、船上や陸上にいる各研究者の研究計画に基づいて試料を配分するキュレーターのお手伝いもしています。サンプルの周りは「旗」がいっぱいです。これから分析するサンプルの横に目印の旗を立て、試料の観察を終えたらまた旗を立て、そしてサンプルを採りだした後にも旗を立てます。

旗と言っても、そんなに大きな旗ではありません。つまようじに紙を張り付けたかわいい旗です。担当する研究者の顔写真もちいさく貼ってあります。私はこの小さな旗がとても気に入ったので、「ちきゅう」で一緒に研究した思い出にチームメンバーの旗も家に持って帰ろうと思っています。




研究室で数時間働いた後の休憩は、また格別です。特に、日の出の時間になると、ヘリデッキに向かい、新鮮な朝の空気をいっぱい吸い込みます。本当に素晴らしいひとときです。

この航海が終わり、いつもの陸の生活に戻った時に、「コアと旗と日の出」を必ず思い出すことでしょう。これがわたしの「ちきゅう」での楽しい生活のひとコマです。

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