Chikyu Report
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健康がなにより2012年09月14日

「ちきゅう」で充実した研究生活を送るためには、健康であることがなにより大切です。船といえば「船酔い」を思い浮かべる人がいるかもしれませんが、この「ちきゅう」はほとんど揺れないため、船酔いで体調を崩す人はあまりいません。例外として顕微鏡観察を続けていると船酔いしやすいらしいのですが(実際、研究者のドリスは船酔いしたと言っていたなあ)、私は船酔いしていません。

それでも、二ヵ月間も船内で生活していると、体調を崩してしまうことがあります。ある研究者は、乗船直後から口内炎が発症して、食事や会話に非常に不自由していました。また、ちらほら体調不良を訴える人がいるようです。私も乗船当初はすこぶる健康だったのですが、乗船10日目あたりから、おなかの調子が悪くなってきました。しばらく様子を見ていたのですが、結局症状は改善されず、最後の砦である、「病院」=「Hospital」に駆け込むことにしました。

病院に入ると、何やら一人の看護師さんが急いだ様子で電話をしていました。ちょっと、場違いなところに来てしまったかも。電話が終わるのを待っていると、一枚のシートを渡されました。あっ、普段の健康状態と症状を記入するのですね。すらすらっと書き終わると、「どうしました?」と看護師さん。「あのー、ちょっと○○気味で××なんです」。と症状を表現可能な範囲で詳細に説明しました。数秒の解析ののち、彼女がはじき出した結果は「ちょっと食事を控えてみましょうか?」「ん、食べ過ぎってことですか?」「まあ、そんなところ!」あいや~。3日分の薬を出してくれて終了。ちなみに費用は無料でした。


病院で乗船研究者の井尻さんが相談中


さて、この病院は、あの懐かしき日本の小学校の「保健室」を思い起こさせます。保健室の奥には、救急用のお風呂があり、隣には入院患者用の部屋として3つベッドが並べられているだけの簡素な空間があります。また、いつでも救急対応できるように看護師さんの部屋は「保健室」のとなりにあります。そして、保健室は「健康」にまさにうってつけの、「ちきゅう」一等地である最前列中央部に位置しています。「ちきゅう」で勤務する看護師さんは一人です(*補足:近海の場合)。一日12時間勤務で土日祝日休みなし、二人の看護師さんが一か月交代制で、つまり一年のうち計6か月「ちきゅう」で皆さんの健康を管理しているということです。いや~、大変ですねえ。ちなみに、保健室に駆け込んでくる人の症状のベストワンは「風邪」だということです(看護師さんの印象統計にもとづく)。

健康管理という意味では常に清潔を保つことも大切です。では、下着衣類の洗濯はどうしているのかというと、ここには大規模ラウンドリーが完備されています。システムはこうです。各人に洗濯用衣類を入れるバッグが渡されます。洗濯したくなったら、バックの中に衣類を入れて、自分の居室の扉の前(通路側)においていきます。数時間後、元の場所にアイロンがけされて綺麗に折りたたまれた衣類が重ねられて戻ってくるのです。なんて素敵なシステムでしょう!


廊下に並べられた洗濯前(または後)の衣類


さて、ある日のこと、私が愛用しているボールペンがなくっていることに気づきました(某取材のお礼でいただいた高級ボールペン)。研究室のどこを探しても見つかりません。あいや~!はっ、そうだ、ジャージのポケットにいれていたかも?たしかジャージは20分ほど前に洗濯に出したばかり。急いで居室に戻ってみたが、時すでに遅し。・・・数時間後に返却された衣類の中にも残念ながらボールペンはなく、途方に暮れて、あきらめかけていたところに、洗濯係のお兄さんが目の前に!とっさに「ポケット、ペン、インサイド!」と必死で説明すると・・・「!!ブルー?」・・・「イエス!」お兄さん、ペンに心当たりがあったみたいで、「部屋に後で届けてあげるよ!」と。数時間後、居室の扉の前に、いとしのボールペンとの感動の再会!

さて、今日返却された洗濯物を確認してみると、あれ、見慣れないミッキーマウスのTシャツが一枚。そのTシャツの下に重ねられて自分のミッキーマウスTシャツが一枚。ミッキーが双子に!よくわからないけれど、とにかく、ありがとうラウンドリー兄さん!いやいや、持ち主に返さなければ。さてどうしたことか。

「ちきゅう」には、このように普段我々の目の届かないところで数多くの縁の下の力持ちさんに支えられて、海洋掘削研究が進行しているのです。航海は続く。


ありがとう!ラウンドリー兄さんとランドリー室

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