女川湾岩礁生態系調査

実施年度

2013

タイトル

女川湾岩礁生態系調査

課題・テーマ

課題1 漁場環境の変化プロセスの解明
代表機関:東北大学
テーマ2 宮城県沿岸域における生態系保全調査
代表者吾妻 行雄
所属機関東北大学
所属部署大学院農学研究科

調査内容

調査期間(調査頻度)
2013/07/01 - 2013/12/31
2013年7月、9月、12月
調査地域・海域
女川湾
調査種別
フィールド調査
調査概要
女川湾内に設定した7つの調査地点で、生物データやサンプル、また環境データを得た。各地点では海図水深0mを基点とし沖に向かって長さ100mあるいは深さ10mに至るまでの調査ラインを設置し、ラインに沿ってあるいは水深1mごとの各水深で1m×1mの方形枠を置いて調査を行った。調査頻度は項目により異なり、多くの項目は7月のみに実施したが、いくつかの項目は9月、12月も調査を行った。

調査実施内容

調査地域・海域の座標一覧
位置情報(点)
名称St. A
座標値38.436117,141.494583
備考ライン基点
名称St. B
座標値38.436467,141.45795
備考ライン基点
名称St. C
座標値38.4123,141.474883
備考ライン基点
名称St. D
座標値38.402533,141.469233
備考ライン基点
名称St. E
座標値38.3974,141.46855
備考ライン基点
名称St. F
座標値38.436117,141.494583
備考ライン基点
名称St. G
座標値38.400833,141.597867
備考ライン基点
調査地点図・航跡図・座標リスト
調査結果
①キタムラサキウニの年級群組成: 前年度の調査で、2012年9月に殻径20 mm前後の加入群が出現し、ほとんどの地点で本群が個体群の70%以上を占めていた。年齢査定の結果、これは震災の約半年後に生まれた2011年級群と査定された。年齢査定結果に基づいた各年級群の推定密度を他の海域のデータや既往の知見と比較し、以下のことがわかった。2011年級群の密度は、津波の規模が比較的小さかった岩手県北部A湾に比べ、津波の規模が比較的大きかった女川湾や宮城県北部B湾で高い傾向があった。とくに女川湾やB湾の一部の地点の値は既往の知見よりも極めて高く、女川湾の地点Aでは2013年3月に最大40個体/m2、平均14.0個体/m2を記録した。一方、2010年以前の年級群の総密度は、女川湾やB湾ではA湾より低い傾向があり、津波による流出が相対的に大きかったことが示唆された。さらに、このうち震災時に生後約半年の稚ウニであった2010年級群の密度は、女川湾でもA湾でも低い傾向があった。これが津波による流出のせいなのか、2010年級群の加入が広範囲にわたって少なかったことによるのかは明らかでない。 ②キタムラサキウニの成長: いずれの地点でも1歳から2~3歳にかけての成長が震災後に速くなった傾向がみられ、特に湾奥の地点で顕著であった。殻径50 mmの漁獲サイズに達する年齢は、震災前はほとんどの地点で3歳以上に対し、震災後にはほとんどの地点で2歳と速まった。震災後に各地で海藻が大量に入植し、食物が保障されて成長が促進された可能性がある。 ③海藻: 海藻被度の経時変化を解析したところ、キタムラサキウニの2011年級群の加入が極めて多かった地点Aにおいて、褐藻エゾノネジモク群落が縮小した。増加したウニの摂食活動に起因すると考えられた。 ④葉上動物: 2012年3月の葉上動物の群集組成について多変量解析を行ったところ、地点の差異による傾向は見られず、アカモクを生息基質とするものとそれ以外とに分けられた。また、全国で震災以前に行われた調査のデータと比較したところ、アカモクにおいては、個体密度が高く多様度が低い傾向が著しく、津波後の葉上動物移入過程に海藻のフェノロジーが関わる可能性が示唆された。 ⑤マボヤの分布: 2012年9月のマボヤの分布状況を解析したところ、キタムラサキウニと同様に、震災後出生群の加入が地点Aで多いことがわかった。 ⑥植食性小型巻貝の分布: 2013年7月の植食性小型巻貝の分布状況の解析から、クボガイは潮下帯直下の浅所に、バテイラは湾口部に、コシダカガンガラは湾奥部に分布する傾向があった。分布密度は三陸沿岸の他海域に比して総じて低かった(平均1個体/m2未満、最大5~13個体/m2)。 ⑦砂泥: 湾奥の2地点では一部の水深で砂泥厚が減少傾向にあった。また強熱減量もわずかな減少傾向が示唆されたため、次年度はTOC・TN含有量を今までのサンプルも含めて分析予定である。

調査項目と取得データ

調査項目取得データ・サンプル
海藻被度各水深における、海藻種ごとの被度データ(%)
体サイズ組成ウニ類3種各種の殻径組成データ、エゾアワビの殻長組成データ
ウニの身入り調査ウニ類3種それぞれの産卵期の生殖巣指数
ウニの年齢と成長ウニ類3種の年齢と成長の解析用のサンプル
水質各ライン1か所における水質(塩分、水温、濁度、溶存酸素、pH、クロロフィル量)の鉛直分布データと、表層・底層の栄養塩分析用水サンプル
底質強熱減量・粒度組成データ(各調査地点1か所)
底質基盤分類ごとの被度ラインに沿って長さ5m×幅1mの区画ごとの、底質基盤分類ごとの被度(%)
砂泥堆積状況各水深における、砂泥被度(%)と砂泥厚(cm)データ
葉上動物調査ホンダワラ科褐藻上の葉上動物のサンプル
巻貝各水深における巻貝サンプル
アラメ生育状況各水深におけるアラメ生育段階や破損状態などのデータ
写真各水深における方形枠内の写真データ
ビデオ撮影ラインに沿った海底の様子のビデオ映像データ
動物密度各水深における、ウニ類3種(キタムラサキウニ・バフンウニ・エゾバフンウニ)、エゾアワビ、その他の大型底生動物の種ごとの密度データ(個体/m2)

関連情報

実施(調査)窓口担当者

担当者名遠藤 光
所属機関東北大学
所属部署大学院農学研究科

データ・サンプルに関する問合せ先

担当者名堀越 彩香
所属機関東北大学
所属部署大学院農学研究科

キーワード

実施年度2013
機関東北大学
調査種別フィールド調査
海域区分三陸南部
分野海洋物理 -> 水温
海洋物理 -> 塩分
海洋物理 -> 透明度・濁度
海洋化学 -> 塩分
海洋化学 -> 溶存酸素
海洋化学 -> 栄養塩
海洋環境 -> 栄養塩
海洋環境 -> 植物色素
海洋生物・生態系 -> バイオマス
海洋生物・生態系 -> 対象生物:海藻
海洋生物・生態系 -> 対象生物:節足動物
海洋生物・生態系 -> 対象生物:軟体動物
海洋生物・生態系 -> その他
地形・地質・地球物理 -> 底質