牡鹿半島岩礁生態系調査

実施年度

2013

タイトル

牡鹿半島岩礁生態系調査

課題・テーマ

課題1 漁場環境の変化プロセスの解明
代表機関:東北大学
テーマ2 宮城県沿岸域における生態系保全調査
代表者吾妻 行雄
所属機関東北大学
所属部署大学院農学研究科

調査内容

調査期間(調査頻度)
2013/04/01 - 2014/03/31
月1回
調査地域・海域
牡鹿半島狐崎沿岸
調査種別
フィールド調査
調査概要
牡鹿半島狐崎沿岸の2つの調査区域(エリアA、エリア B)を設け、震災による地盤沈下の後の個体群あるいは群集の動態変化をモニタリングした。エリアAでは褐藻エゾノネジモク群落とウニ各種の分布や生物季節データから、これらの種間相互関係を地盤沈下や海洋環境の変動との関係で明らかにした。エリアBでは、褐藻アラメ群落におけるアラメ各個体の生残と成長過程の追跡を行い、地盤沈下後の本群落の動態を環境との関係で明らかにした。また、植食性巻貝のコシダカガンガラの分布パターンの変動や生残・成長なども調査し、アラメ群落の動態との関係を調べた。

調査実施内容

調査地点図・航跡図・座標リスト
調査結果
(1) エリアA 本エリアでは、震災の前からエゾノネジモクとウニの個体群動態をモニタリングしている。地震前の実験区におけるエゾノネジモク群落は周年潮間帯にのみ形成され、7月以降キタムラサキウニの発芽期に相当する群落(8-11月)への索餌移動によって群落の潮下帯への拡大が阻害されていると考えられた。地震後に地盤沈下によって潮下帯となった群落の下限域において、キタムラサキウニは地震3~4ヶ月後の2011年6月と7月にみとめられず、津波により流出したと考えられた。また、極めて高い水温で経過した2012年の夏季以降、2013年も周年生息がみとめられなかった。同所におけるバフンウニは2013年の秋季より密度が上昇した。群落最上部から下限域までの距離は、地震前がSt.AとBでそれぞれ3mおよび1.5m未満であった。St.Aでは発芽期の2011年8月以降群落下限域以深において幼体の不連続な斑状の加入により、生育水深が3m以上に拡大し、2012年7月から10月には4mから6mに拡大して2013年8月まで維持された。群落の拡大は、キタムラサキウニ密度の低下と密接に関わっていると考えられる。個体数が満たされた礁底部のキタムラサキウニとバフンウニのピーク時の生殖巣指数は震災後が震災前よりも高い傾向があった。狐崎浜沿岸では志津川湾と女川湾と同様にキタムラサキウニの2011年級群の加入が多くみとめられていることから、今後は、潮下帯へ沈下したエゾノネジモク群落が増加したキタムラサキウニの摂食活動によって崩壊するか否か、無機環境条件との関係でその動態を継続してモニタリングする必要がある。 (2) エリアB 本エリアでは、震災直後からアラメの個体群動態をモニタリングしている。調査区は、地盤沈下前はアラメが生育していなかったZ-1(岸)、地盤沈下後もアラメの生育可能水深であるZ-2(中)、地盤沈下によって震災前からのアラメの生育下限よりも下に沈下したZ-3(沖)に区分された。 アラメ幼体の加入数には2回の大きなピークがあった。第1回は2011年8-10月、第2回は2013年5-7月であり、2回目は1回目の加入規模を大きく上回った。加入は主にZ-1 からZ-2にかけてみられ、Z-3にはほとんど認められなかった。加入のタイミングは栄養塩濃度の上昇によく同調していた。また、2回目の大量加入時の直前には海水温の低下も認められており、栄養塩類濃度の上昇との相乗効果が働いた可能性がある。加入幼体が成体に至るまでの生残率は平均して30-35%であり、成体になった時点での密度は平均5個体/m2 だった。茎や葉部の成長形質の増大には明らかに Z-1 > Z-2 > Z-3 の傾向が認められ、Z-3では成長が抑制されているうえに新規加入もないことから、沈下した沖側個体群は生残してはいるもののやがて衰えて消滅すると予測される。調査区内にはウニの密度が低く、植食性巻貝類であるコシダカガンガラは全域に、クボガイは岸側区画のみに出現した。巻貝類の摂餌圧がアラメの幼体および成体の生残と成長に影響を及ぼす可能性がある。今後は、アラメ群落の回復過程におけるイベントをさらに追究し、沖合側への幼体の加入を妨げる要因や岸側寄りに加入したアラメ幼体の初期死亡要因を明らかにするため、引き続きのモニタリング調査を行う。また、植食性巻貝類の排除区や囲い込み区の設置による野外操作実験によって、植食性巻貝類の摂食強度と摂食圧が働くタイミングについて調査する。

調査項目と取得データ

調査項目取得データ・サンプル
エゾノネジモクエリアAにおけるエゾノネジモク群落の現存量や生物季節データ
ウニエリアAのエゾノネジモク群落におけるウニ2種(キタムラサキウニ、バフンウニ)の密度や体サイズ、年齢、成長、生殖巣の発達と色彩など
アラメエリアBにおけるアラメ個体群の動態データ
巻貝エリアBにおけるアラメ個体群の動態データにおけるコシダカガンガラの現存量や体サイズ組成、生残など
環境エリアBにおける、光量子・塩分・水温データ(データロガー使用)、濁度データ

関連情報

実施(調査)窓口担当者

担当者名青木 優和
所属機関東北大学
所属部署大学院農学研究科

キーワード

実施年度2013
機関東北大学
調査種別フィールド調査
海域区分石巻湾
分野海洋物理 -> 水温
海洋物理 -> 塩分
海洋物理 -> 透明度・濁度
海洋化学 -> 塩分
海洋化学 -> 溶存酸素
海洋化学 -> 栄養塩
海洋環境 -> 栄養塩
海洋環境 -> 植物色素
海洋生物・生態系 -> バイオマス
海洋生物・生態系 -> 生態
海洋生物・生態系 -> 対象生物:海藻
海洋生物・生態系 -> 対象生物:軟体動物
海洋生物・生態系 -> その他
地形・地質・地球物理 -> 底質