調査結果(1)マコガレイの全ゲノム配列解読
マコガレイの本来のゲノム量の約33.4倍に相当する(33.4×カバレッジ)約22.41 Gbp(約224億塩基対)のゲノム配列を解読した。得られた約2億本のリード配列をde novo assemblyにより計525,502本のコンティグ配列に連結した(N50 = 1,994)。一方、極端に短いあるいは繰り返し配列を含むことなどが原因で連結することのできなかったリード配列は約1,100万本であった。
(2)RAD-SeqによるマコガレイゲノムのSNPタイピング
各個体から約100?200万本のリードを得、前述のマコガレイゲノムの525,502本のコンティグ配列にマッピングした。その結果、計440のSNP座がすべての個体に共通して認められ、それらについてジェノタイプすることができた。
(3)マコガレイゲノムを用いたマイクロサテライトDNAマーカーの開発
前述のマコガレイゲノムのうち、連結できなかった約1,100万本のリード配列中に見つかったマイクロサテライトDNAに対し、合計で約33万のプライマーペアをコンピュータ上で設計した。そのうち任意の96ペアについて、PCRによる増幅の可否、多型性の有無、およびタイピングのし易さを基準としてスクリーニングを行い、計18座を選定した。女川湾で採集された40?45個体のマコガレイのジェノタイプを行ったところ、選定した18座で認められた対立遺伝子の数は2?25個、平均ヘテロ接合度の期待値は0.04395?0.94557、観察値は0?0.88889であった。これらのことらから、座によって多型性にばらつきはあるものの、ゲノム情報を利用して、本種の集団遺伝学的解析に用いることのできるマイクロサテライトを開発することができた。
今後は得られたマイクロサテライトマーカーを用いて、震災の影響を受けたと考えられる仙台湾を含む日本全国の沿岸から採集したマコガレイ標本約1500個体を分析し、遺伝的多様性を精査する予定である。