調査期間(調査頻度)2014/04/01 - 2015/03/31
毎月1回
調査地域・海域
仙台湾内の河口域、干潟域
調査種別フィールド調査
調査概要2011年3月に起きた東北地方太平洋沖地震と津波により東北地方沿岸域は大きく攪乱された。陸域と海域をつなぐ河口域、干潟は多様性に富む多くの生物が生息し、水産学の観点からは稚魚や仔魚をはじめとする水産資源生物の初期生活史の成育場として、また種々の水産資源生物の餌となるマクロベントスの生息場として、そして生態系や生態系サービスの観点から重要な水域であることが認識されている。地震・津波によって河口域と干潟環境が受けた影響について水質、底質の経時的調査を行い、その水域環境の変化に伴う生物相の遷移を明らかにし、水域の変遷・回復過程を環境学的、生物学的、水産学的に把握する。今後の河口・干潟における水産資源の持続的利用、生態系の安定について検討する。
調査地域・海域の座標一覧
位置情報(点) | 名称 | Stn A |
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座標値 | 38.257828,141.014494 |
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名称 | Stn B |
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座標値 | 38.254911,141.012817 |
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名称 | Stn C |
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座標値 | 38.254469,141.006858 |
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調査結果1 地震直後は、地震とそれに伴う津波に起因する種々の攪乱(地盤沈下、前浜の消失と再形成、河口閉塞)に台風による攪乱(水の流れの変化、新しい河口の形成、干潟域の淡水化)が加わり、河口・干潟域には大きな地形の変化が見られた。その後、導流提の再建等により、外見上、地形は攪乱前の状態に戻ったかのように見えるが、水質、底質、生物相には継続して変化が現れている。
2 水温、溶存酸素濃度には大きな変化が見られなかったが、特に塩分については攪乱前に比べ大きな変化が続き、不安定な状況が続いている。
3 地震直後の干潟ではマクロベントスは壊滅的な打撃を受け、ほとんど生物が生息しない状況から、日和見的な多毛類が出現し、攪乱初期には多毛類が群集中の約90%を占めていた。時間が経つにつれ、次第に底生生物の密度が増加傾向を示したが、2011年8月には河口閉塞と七北田川の出水により干潟内が淡水化し、再び密度が低下した。
4 初期に出現した多毛類の優占種は、ゴカイ科とスピオ科に属し、それぞれが浮遊発生を有する種と直達発生を有する種の2種が存在し、ともに浮遊発生を有する種が先に優占した。
5 攪乱の前後で多毛類群集構造を比較すると、優占種は直達発生を有するゴカイ科のHediste atokaから浮遊発生を有するH. diadromaへ入れ替わっていることが示された。
6 解析の途中で、スピオ科多毛類Pseudopolydora 属において、日本初記録種 Ps. reticulataが発見された。また、本種の発生様式の確認により、これまで混乱していたPs. kempi と Ps. reticulata の発生様式が異なるということが世界で初めて確認され、この結果は11th International Polychaete Conference (Sydney, August 2013)において発表した。
7 多毛類と端脚類が優占する段階から、2012年9月以降、二枚貝類Nuttalia japonica、 Arthritica reikoaeが大量にみられるようになった。現在、多毛類はゴカイ科Hediste属とイトゴカイ科Capitella属が優占し、また、端脚類は減少した。ベントス群集は引き続き変化が観察され、未だ不安定な状況が続いていると考察される。