調査期間(調査頻度)2014/04/01 - 2015/03/31
サンプリングは年数回、分析は随時
調査地域・海域
岩手県唐丹湾・越喜来湾
調査種別その他(フィールドでの採集および研究室内での分析)
調査概要エゾアワビ、マナマコおよびキタムラサキウニは、三陸沿岸漁業を支える重要種である。これらの漁業は天然資源に依存しており、東日本大震災が天然海域に及ぼした影響を調べることは重要である。津波の影響により親集団の個体数が減少し、その結果遺伝的多様性の減少が予想される。本研究では、集団の衰弱を引き起こす遺伝的多様性の低下をモニターするために、マイクロサテライトDNAおよびミトコンドリアDNAを指標として、遺伝的集団構造を震災前後の年齢群間で比較検討した。
調査結果マナマコ、エゾアワビおよびキタムラサキウニのマイクロサテライトDNA座およびミトコンドリアDNA領域を用いた集団遺伝学的なデータを得た。マナマコに関しては、震災後の集団で極度な近交または遺伝的異集団の大量移入はなかったと考えられた。しかしながら震災後に生まれた群でアリル数の減少傾向が見られた。また、ハプロタイプ多様度の値は、震災前に比べて震災後の集団で減少する傾向が見られた。以上より、津波により従前集団個体の大量死または分散により集団が縮小した可能性が示唆された。エゾアワビの親集団においては、震災後3年経過した時点での津波による強い瓶首効果の影響は受けていないことが示唆された。一方キタムラサキウニに関しては、震災前集団でホモ接合体過剰が見られ、既に近交の傾向を示していた。今後これら3種について、震災後のデータを加えつつ詳細に検討していく予定である。