トップページ > プレスリリース > 詳細

プレスリリース

ジュニア向け解説

このプレスリリースには、ジュニア向け解説ページがあります。

2014年 3月 31日
2014年 11月 21日修正
(図5および図6を改訂)

独立行政法人海洋研究開発機構

プレートはなぜ動くのか?
~プレート運動の原動力に関する新しい発見~

1.概要

独立行政法人海洋研究開発機構(理事長 平朝彦、以下「JAMSTEC」という。)地球内部ダイナミクス領域では、地球内部の動的挙動(ダイナミクス)を理解するために、海底下のプレート運動や構造に関する研究を推進しています。

今回、海洋プレート活動研究プログラムの小平秀一プログラムディレクターらの研究グループは、北海道南東沖100~700 kmの太平洋プレート上において、地下構造探査システム、及び海底地震計を用いて、地殻と上部マントルの大規模構造調査を実施しました。その結果、海洋プレート生成時において、マントルの流動によりプレート運動が駆動されていたことを発見しました。

この成果は、「プレートはなぜ動くのか」というプレートテクトニクスの本質的な命題を解明する上で有力な手がかりとなるものです。今後は、調査・研究を進めるとともに、地球深部探査船「ちきゅう」によるマントル掘削を実現し直接的検証を行うことで、地球科学に大きな進展がもたらされると期待されます。

なお、本成果は英科学誌「Nature Geoscience」電子版に3月31日付け(日本時間)で掲載される予定です。

タイトル:
Seismological evidence of mantle flow driving plate motions at a palaeo-spreading center
著者:
小平秀一1、藤江剛1、山下幹也1、佐藤壮1、高橋努1、高橋成実1
1. 海洋研究開発機構

2.背景

地球表層部分は、地殻とマントルの最上部からなる深さ約100km程度までの硬い(粘性の高い)岩盤で覆われており、それが中央海嶺(※1)、海溝などにより十数個程度のブロックに分けられています。このブロックがプレートと呼ばれていますが、各プレートは内部で変形や破壊を受けず相互に運動しており、このプレート運動により、大陸移動、海洋底拡大のような大規模な地球の表層活動が生じます。また、プレート同士の相互作用により、その境界で地震・火山活動などが発生しています。このような地球表層のさまざまな地質現象を統合的に説明するモデルが1960年代に確立された「プレートテクトニクス」です。

このプレートテクトニクスが提唱されて以来、海洋底の年代、GPS観測データ、海洋底での横ずれ断層の方向、プレート境界地震の断層運動方向、などからプレートの運動速度と運動方向が明らかになっており、例えば、太平洋プレートは日本周辺ではおおよそ北西方向に年間8~10㎝の速度で移動しています。

一方で、「プレート運動の原動力は何か」という根本的な問題については、大きくは地球内部の熱対流に起因すると考えられているものの、その原動力を示す直接的な証拠は得られておらず、二つの対照的な説が提唱されてきました。一つは、プレートの下にある高温で粘性の低いマントル(アセノスフェア)の運動によって、その上のプレートが引きずられる、という考えであり、マントルの運動がプレート運動の原動力となるという考えです。もう一つは、海溝から地球内部に沈み込むプレートが、プレートそのものの自重によって残りの部分を引っ張るという考えです。この考えに基づくと、プレートがその下の粘性の低いマントルを引きずりながら動いていくことになります。この二つの考えのうち、これまではさまざまな状況証拠(例えば、長い沈み込み帯を持つプレートが早い運動速度を持つ)やモデル計算の結果から、後者の考えが有力とされてきました。

しかしながら、これまでプレート運動の原動力を直接的に示す証拠が得られておらず、この問題を完全に解決するまでには至っていませんでした。

3.観測結果

本研究チームでは、日本海溝、千島海溝、伊豆・小笠原海溝に沈み込む太平洋プレートの構造、運動、活動に関する調査研究を進めており、その一環として2009年6月と2010年7月に北海道の南東沖約100~700kmの太平洋プレート上で、深海調査研究船「かいれい」による地殻・マントル構造調査を行いました(図1)。

この領域の太平洋プレートは、今から1億2千万年ほど前、かつて存在したイザナギプレート(※2)と現在の太平洋プレートの境界に存在した中央海嶺(すでに地球内部に沈み込み消滅)で北西から南東に向かって拡大し生成されたとされており、千島海溝に向かうほどプレート年代が若くなります。(図2)。

今回の調査によって得られた地下構造の全体を図3に、詳細構造を図4に示しますが、この地下構造からは二つの顕著な特徴を見ることができます。一つは、海洋地殻下部に、北西側に20~25°で傾斜した構造不連続面が約2.5km間隔で一定に分布していること、もう一つはその直下の最上部マントルでは地震波の伝わる速度がプレート運動方向とそれに直交する方向で8.5~9.8%も異なること(地震波伝搬速度の方位異方性(※3))です。

4.観測結果から解明されたプレート運動

一つめの特徴である不連続面は地殻とマントルの境界部(モホ面※4)まで伸びていますが、モホ面に段差を作らないことから逆断層や正断層を示す構造とは異なる特徴を示しています。一方、この一連の特徴は、リーデルせん断(Riedel shear)と呼ばれる現象とよく一致します(図5)。リーデルせん断とは、さまざまなスケールにおいてある幅を持った固体領域にせん断応力(※5)を与えた場合、せん断変形がその応力と斜行した方向に一定間隔で集中して発生するものです。もし、観測された不連続面がリーデルせん断によるものだとすると、モホ面を図3aの左から右に向かって(即ち、中央海嶺から離れる方向に)引っ張る力が働いたことを示します。

また、二つめの特徴である地震波伝搬速度の異方性は地殻直下のマントルが流動していたことを示します。一般にマントルを構成する主要鉱物であるかんらん石は高温(1100℃程度)で流動する際、流動方向に結晶がそろう特徴を持ちます。これによって、流動する方向の地震波の伝搬速度が速くなり、それと直交する方向は相対的に遅くなります。このことから、今回確認された地震波速度の異方性は、プレートが生成された中央海嶺近傍でマントル最上部がプレート運動に沿った方向に流動していたことを示します。

仮にプレート(海嶺近傍ではプレートと地殻は同義と考えてよい)が自重によって運動し、その結果マントルが流動しているとした場合、地殻がマントルを中央海嶺から離れる方向に引っ張り流動させることになり、マントルの地震波速度異方性は説明できますが、予想されるリーデルせん断の傾斜方向は観測事実とは逆になります(図6の右図)。一方、マントルが中央海嶺から離れる方向に流動して地殻を動かすモデルでは、マントルの流動により地殻の底が海嶺から離れる方向に引っ張られることなり、この場合生じるリーデルせん断の傾斜方向は南東から北西に下がる傾斜となり、観測事実と整合します。(図6の左図)また、地震波伝搬速度の方位異方性も説明できます。

5.結論

今回の調査で得られた以上の観測事実を総合的に検討すると、約1億2千万年前に太平洋プレートが生成された際、プレート生成域である中央海嶺においては、マントルの流動によって地殻の底が中央海嶺から離れる方向に引きずられていたと結論付けられました(図7)。このことは、少なくとも中央海嶺近傍においてはマントルの流動がプレート運動の原動力であることを示す有力な証拠となります。

また、マントルが地殻を引きずるという今回の観測結果から、地殻はマントルより遅れて動く、つまりマントルの運動速度は海洋底の地磁気異常のデータから決定されたプレートの拡大速度より有意に速いことも示されました。

6.今後の展望

今回の観測データは北海道南東沖で確認されましたが、このような地殻下部の構造不連続面は太平洋プレートの別の場所でも指摘されており、もしその場所においても強い地震波伝搬速度の方位異方性が確認されれば、今回の結論が、一地域のローカルな現象ではないことが証明されます。

そのため、JAMSTECでは、今年6月にマントルまでの深海掘削候補点の一つに挙げられている太平洋プレートの中央部に位置するハワイ北方でも同様の調査を実施し、今回の発見で得られた結論の普遍性の検証を進めていきます。さらに、将来的にはハワイ沖において地球深部探査船「ちきゅう」も用いたマントル最上部までの掘削を実施し、実際のマントルのサンプルを得ることで今回の結論の検証を進めたいと考えています。

また、プレートの自重により運動することを支持する観測データも存在することから、今後はプレート全体の動きが説明できる統合的なモデルを検討していくことも必要となります。

【用語解説】

※1 中央海嶺

大洋のほぼ中央に南北に連なる幅広い海底山脈で、プレートが生成される場所と考えられている。現在存在する代表的なものとして、大西洋中央海嶺、東太平洋海嶺、中央インド洋海嶺などがある。

※2 イザナギプレート

現在の北西太平洋に相当する地域に、かつて(白亜紀~)存在したプレートで、日本列島の原型となったため、日本神話で日本列島を作った「イザナギノミコト」に由来する。約2500万年前にはユーラシアプレートの下に完全に沈み込み、消滅した。

※3 地震波伝搬速度の方位異方性

地震や物理探査等で発生した地震波の伝搬速度が方位によって異なること。例えば同じ領域を地震波が南北に通過する時の速度は 9 km/s だが、東西に通過する時は 8 km/s という場合のことを指す。この異方性は、その場を構成する鉱物の結晶やクラック(亀裂)がある方向に揃うことにより生じる(一般的に揃う方向に速くなる)。どの方向にどのような異方性が生じるかは地球内部の応力や歪み場によって支配されるため、異方性を調べることで逆に地球内部の応力や歪み場を知ることができ、さらにはマントル対流等の地球内部の物質の流れの場に関する情報を得ることができる。

※4 モホ面

モホロビチッチ不連続面。地殻とマントルの境界であり、これを境に地震波の伝播速度が急に変化する。

※5 せん断応力

物体内部のある面の平行方向に、すべらせるように作用する応力。
図1

図1 調査領域。黒線が調査を実施した測線

図2

図2 Nakanishi et al. (1989)による太平洋プレート拡大を示す図。上が北を示す。(a) 1億5500万年前。(b) 1億4800万年前。(c)1億3900万年前。(d)1億2300万年前。

図3

図3 全体構造。上図:プレート運動方向に沿う測線。下図:プレート運動と直行する方向。上図の枠内の詳細構造を図4で示す。

図4

図4 詳細構造

図5

図5 2010年 ニュージーランドダーフィールド (カンタベリー)地震(M 7.1)の際、地表で確認されたリーデルせん断(Riedel shear)の例。Quigley et al. Geology 2012のFig,2に加筆・修正。RはRiedel shearの方向、R’ はconjugate Riedel shear(共役リーデルせん断)の方向を示す(本研究成果の説明のため、原図を回転・左右反転させている)

図6

図6 マントル・地殻の運動と予想されるリーデルせん断。

※図5および図6について、本成果をより正確に表現する図に改訂しました。(2014年11月21日)

図7

図7 今回確認された観測事実とプレート運動の原動力を示す模式図

独立行政法人海洋研究開発機構
(本研究について)
地球内部ダイナミクス領域 海洋プレート活動研究プログラム
プログラムディレクター 小平 秀一
(報道担当)
広報部 報道課長 菊地 一成
お問い合わせフォーム
広報部 報道課
press[at]jamstec.go.jp
国立研究開発法人海洋研究開発機構
〒237-0061 神奈川県横須賀市夏島町2番地15 [交通アクセス]