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プレスリリース

2015年 9月 29日
国立研究開発法人海洋研究開発機構

国際深海科学掘削計画(IODP)第359次研究航海の開始について
~モルディブ海底堆積物の掘削による新第三紀地球寒冷化に伴う
インド洋北部の古環境変化の解明~

この度、国際深海科学掘削計画(IODP: International Ocean Discovery Program)(※1)の一環として、「モルディブ海底堆積物の掘削による新第三紀地球寒冷化に伴うインド洋北部の古環境変化の解明」(別紙参照)を実施するため、米国が提供するジョイデス・レゾリューション号(※2)の研究航海が10月1日から開始されます。

本研究航海では、インド洋北部に位置するモルディブの海底7地点を掘削し、コア試料の回収・分析を行うことで新第三紀地球寒冷化に伴うインド洋北部の古環境変化を明らかにするため、日本から4名が乗船するほか、米国、欧州、中国、韓国、オーストラリア、インド、ブラジルからも含め、計29名の研究者が参加する予定です。

※1 国際深海科学掘削計画(IODP: International Ocean Discovery Program)

平成25年(2013年)10月から始動した多国間国際協力プロジェクト。現在、日本、米国、欧州(18ヶ国)、中国、韓国、豪州、インド、NZ 、ブラジルの26ヶ国が参加。日本が運航する地球深部探査船「ちきゅう」と、米国が運航する掘削船ジョイデス・レゾリューション号を主力掘削船とし、欧州が提供する特定任務掘削船を加えた複数の掘削船を用いて深海底を掘削することにより、地球環境変動、地球内部構造、地殻内生命圏等の解明を目的とした研究を行う。

※2 ジョイデス・レゾリューション号(右写真)

米国が提供するノンライザー掘削船。我が国が提供する地球深部探査船「ちきゅう」と比べて浅部の掘削を多数行う役割を担う。

別紙

モルディブ海底堆積物の掘削による新第三紀地球寒冷化に伴う
インド洋北部の古環境変化の解明

1.日程(現地時間)

平成27年10月1日
ダーウィン(オーストラリア)にて乗船(数日の準備の後出港)
インド洋北部モルディブ沖において掘削
平成27年11月30日
コロンボ(スリランカ)に入港

なお、気象条件や調査の進捗状況等によって変更の場合があります。

2.日本から参加する研究者

氏名 所属/役職 担当研究分野
井上麻夕里 岡山大学/助教 無機地球化学
中國正寿 創価大学/大学院生(博士課程) 有機地球化学
新野 薫 山形大学/大学院生(修士課程) 微古生物学(放散虫化石)
Santi Dwi Pratiwi 秋田大学/大学院生(博士課程) 微古生物学(石灰質ナノ化石)

3.研究の背景・目的

インド洋北部に位置するモルディブ諸島付近の海域には、造礁サンゴなど石灰質の殻をもつ生物の遺骸から構成される石灰質堆積物が堆積しています。これらの生物は生息当時の環境(古水温、古水深など)に大きな影響を受けることから、石灰質堆積物には古環境変動解明の鍵となる様々な情報が記録されています。この掘削航海では、これまでほとんど明らかにされてこなかった約2300万年前(新第三紀)以降の世界的な寒冷化に伴うインド洋の古環境変化を明らかにするため、モルディブ諸島を横切るように7つのサイトを掘削し(図1表1)、堆積物コア試料や間隙水の採取を行います。

本掘削航海の主な科学目的は、モルディブ諸島付近の海底堆積物から、新第三紀の海水準変動や付近を流れる海流(モルディブ海流系)の発達・進化などの環境変動の記録を読み取ることです。特に、モンスーンに伴う海流の変化によって形成される特徴的な堆積物に着目して分析を行い、モルディブ諸島付近における地層の堆積過程を理解することで、インドモンスーンの発達史の解明が期待されます。

図1
図1 モルディブ諸島の位置(A)と本研究航海の掘削サイト(B)(IODP第359次研究航海科学計画書より改編)。
表1 掘削予定地点の概要(掘削順)
最初のサイトでの掘削開始はダーウィン出航15日後を予定しています。
掘削サイト 水深 掘削予定深度 掘削作業日数
MAL-07A 430m 710m 6
MAL-06B 390m 604m 4
MAL-05A 391m 420m 3
MAL-01A 523m 1060m 9
MAL-02A 494m 560m 8
MAL-03A 531m 532m 4
MAL-09A 499m 714m 4
国立研究開発法人海洋研究開発機構
(IODP及び本航海の科学計画について)
研究推進部 研究推進第1課 担当 梅津 慶太
(報道担当)
広報部 報道課長 松井 宏泰
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