トップページ > プレスリリース > 詳細

プレスリリース

2015年 11月 27日
国立研究開発法人海洋研究開発機構

国際深海科学掘削計画(IODP)第360次研究航海の開始について
~南西インド洋海嶺アトランティス海台掘削による海洋下部地殻と
モホロビチッチ不連続面の性質の解明~

この度、国際深海科学掘削計画(IODP: International Ocean Discovery Program)(※1)の一環として、「南西インド洋海嶺アトランティス海台掘削による海洋下部地殻とモホロビチッチ不連続面(以下、モホ面)の性質の解明」(別紙参照)を実施するため、米国が提供するジョイデス・レゾリューション号(※2)の研究航海が12月1日から開始されます。

本研究航海では、南西インド洋海嶺アトランティス海台を掘削し、低速で拡大する海嶺における海洋下部地殻とモホ面の性質を解明することを目的としています。この研究航海には日本から4名が参加するほか、米国、欧州、中国、韓国、オーストラリア、ブラジルから計29名の研究者が参加する予定です。

※1 国際深海科学掘削計画(IODP: International Ocean Discovery Program)

平成25年(2013年)10月から始動した多国間国際協力プロジェクト。現在、日本、米国、欧州(18ヶ国)、中国、韓国、豪州、インド、NZ 、ブラジルの26ヶ国が参加。日本が運航する地球深部探査船「ちきゅう」と、米国が運航する掘削船ジョイデス・レゾリューション号を主力掘削船とし、欧州が提供する特定任務掘削船を加えた複数の掘削船を用いて深海底を掘削することにより、地球環境変動、地球内部構造、地殻内生命圏等の解明を目的とした研究を行う。

※2 ジョイデス・レゾリューション号(右写真)

米国が提供するノンライザー掘削船。我が国が提供する地球深部探査船「ちきゅう」と比べて浅部の掘削を多数行う役割を担う。

別紙

南西インド洋海嶺アトランティス海台掘削による海洋下部地殻と
モホ面の性質の解明

1.日程(現地時間)

平成27年12月1日
コロンボ(スリランカ)にて乗船(数日の準備の後出港)
インド洋西部マダガスカル沖において掘削
平成28年1月30日
ポートルイス(モーリシャス)に入港

なお、気象条件や調査の進捗状況等によって変更の場合があります。

2.日本から参加する研究者

氏名 所属/役職 担当研究分野
阿部なつ江 JAMSTEC海洋掘削科学研究開発センター/
主任技術研究員
岩石物理学
野坂俊夫 岡山大学/准教授 変成岩岩石学
森下知晃 金沢大学/教授 火成岩岩石学
Alessio Sanfilippo 金沢大学/外国人研究員 火成岩岩石学

3.研究の背景・目的

南西インド洋海嶺アトランティス海台(図1)は、中央海嶺でのマグマ活動が活発ではなく、その拡大スピードが他の海嶺に比べて遅い「低速拡大海嶺」の一部をなしています。また、ここでは海洋底が非対称に拡大しており、海底付近に蛇紋岩やはんれい岩などの地殻深部を構成している深成岩類が露出する特殊な海洋プレート構造を持つ海域としても知られています。そのため、この付近の海底下には地殻と上部マントルの境界であるモホ面が、平均的な海洋地殻の厚さ(約6km)のほぼ半分である海底下約3kmの深さにあると推定されており、モホ面に最も近い場所の一つとされています。

本研究航海では南西インド洋の掘削サイト(AtBk-6:水深695m)において、海底下1300mまでの下部地殻を掘削ターゲットとし、低速拡大海嶺における海洋地殻の形成過程を解明すること、さらに下部地殻の側方不均質性や深成岩に記録されている岩石物性などを調べ、非対称海洋底拡大が起こっているプレート境界のテクトニクスを解明することを主な科学目標としています。

本海域では将来的にモホ面までの掘削を目指しており、地球深部探査船「ちきゅう」によって平均的な海洋プレート構造を持つ海域でモホ面貫通を目指す「マントル掘削(Mohole to Mantle)」(通称:M2M)へのマイルストーンともなる掘削プロジェクトです。本掘削航海により、特殊な構造を持つ海洋プレートの深部やモホ面の実体に関する知見を得ることにより、「マントル掘削」の実現に向けた科学的仮説の強化や掘削技術の開発につながることが期待されます。

図1
図1 本研究航海の掘削サイト(南西インド洋海嶺アトランティス海台、AtBk-6)の位置
国立研究開発法人海洋研究開発機構
(IODP及び本航海の科学計画について)
研究推進部 研究推進第1課 担当 梅津 慶太
(報道担当)
広報部 報道課長 松井 宏泰
お問い合わせフォーム