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プレスリリース

2016年 1月 29日
国立研究開発法人海洋研究開発機構

国際深海科学掘削計画(IODP)第361次研究航海の開始について
~南アフリカ気候変動とアガラス海流との関連性の解明~

この度、国際深海科学掘削計画(IODP: International Ocean Discovery Program)(※1)の一環として、「南アフリカ気候変動とアガラス海流との関連性の解明」(別紙参照)を実施するため、米国が提供するジョイデス・レゾリューション号(※2)の研究航海が1月31日から開始されます。

本研究航海では、南アフリカ大陸南方沖を掘削し、500万年前以降の南アフリカの気候変動を明らかにするとともに、周辺を流れる海流との関連性を解明することを目的としています。この研究航海には日本から3名が参加するほか、米国、欧州、中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランド、ブラジルから計30名の研究者が参加する予定です。

※1 国際深海科学掘削計画(IODP: International Ocean Discovery Program)

平成25年(2013年)10月から始動した多国間国際協力プロジェクト。現在、日本、米国、欧州(18ヶ国)、中国、韓国、豪州、インド、NZ 、ブラジルの26ヶ国が参加。日本が運航する地球深部探査船「ちきゅう」と、米国が運航する掘削船ジョイデス・レゾリューション号を主力掘削船とし、欧州が提供する特定任務掘削船を加えた複数の掘削船を用いて深海底を掘削することにより、地球環境変動、地球内部構造、地殻内生命圏等の解明を目的とした研究を行う。

※2 ジョイデス・レゾリューション号(右写真)

米国が提供するノンライザー掘削船。我が国が提供する地球深部探査船「ちきゅう」と比べて浅部の掘削を多数行う役割を担う。

別紙

南アフリカ気候変動とアガラス海流との関連性の解明

1.日程(現地時間)

平成28年1月31日
ポートルイス(モーリシャス)にて乗船(数日の準備の後出港)
南アフリカ共和国沖において掘削
平成28年3月31日
ケープタウン(南アフリカ共和国)に入港

なお、気象条件や調査の進捗状況等によって変更の場合があります。

2.日本から参加する研究者

氏名 所属/役職 担当研究分野
窪田 薫 東京大学大気海洋研究所/特任研究員 堆積学
山根雅子 海洋研究開発機構/ポスドク研究員 堆積学
Francisco J. Jimenez-Espejo 海洋研究開発機構/研究員 岩石物理学

3.研究の背景・目的

アフリカ大陸南東側を南下するアガラス海流は世界でも有数の強海流であり、インド洋から大西洋への熱塩輸送(※1)を担う重要な海流として知られています。さらにこの熱塩輸送は大西洋子午面循環(※2)に大きな影響を与えることから、全球規模の気候変動とも関連していると考えられています。

本研究航海では、モザンビーク海峡からアフリカ大陸南方沖にかけての6地点(図1)において掘削を行い、過去約500万年間のアフリカ大陸高緯度域及び全球的な気候変動とアガラス海流の相互作用を明らかにします。主な科学目標は、温暖な時期、寒冷な時期、その移り変わりの時期それぞれにおいてアガラス海流がどのような状態だったのか、すなわち過去の気候変動に対するアガラス海流の感度を明らかにすること、インド洋と大西洋をつなぐ重要なゲートウェイであるこの海域における海水循環の原動力を解明すること、そしてアガラス海流と大西洋子午面循環との関連性を理解することです。

【用語解説】

1.熱塩輸送
熱や塩分濃度等海水の密度の変化によって生じる地球規模の海水の流れ。高緯度海域で表層の海水温が下がり、また塩分濃度が高くなることにより海水が深層に沈み込むことによって起こる。

2.大西洋子午面循環
大西洋における主要な海洋大循環。表層で北向きの高温・高塩分海水が低緯度から高緯度に流れ、底層で南向きの低温海水が流れる。地球の気候システムの中で重要な役割を果たす。

図1
図1 本研究航海の掘削サイトの位置(IODP第361次研究航海科学計画書より改編)
サイト名 水深 掘削深度 掘削作業日数
MZC-01C 2,157m 300m 8
ZAM-05A 416m 207m 3
LIM-01B 450m 180m 3
NV-02C 3,040m 350m 10
APT-01B 2,691m 300m 9
CAPE-01C 2,648m 350m 8

表1 本研究航海の掘削サイトの一覧(掘削順)
最初のサイトでの掘削開始はポートルイス出航後7日後を予定しています。

国立研究開発法人海洋研究開発機構
(IODP及び本航海の科学計画について)
研究推進部 研究推進第1課 担当 梅津 慶太
(報道担当)
広報部 報道課長 松井 宏泰
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