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プレスリリース

2016年 3月 18日
国立研究開発法人海洋研究開発機構

地球深部探査船「ちきゅう」による
国際深海科学掘削計画(IODP)第365次研究航海
「南海トラフ地震発生帯掘削計画」の実施について

国立研究開発法人海洋研究開発機構(理事長 平 朝彦)は、国際深海科学掘削計画(※1 IODP: International Ocean Discovery Program)の一環として、平成28年3月26日から平成28年4月27日までの間、地球深部探査船「ちきゅう」による第365次研究航海「南海トラフ地震発生帯掘削計画」を実施致します。

·期間:
平成28年3月26日~平成28年4月27日
なお、気象条件や調査の進捗状況によって変更の場合があります。
·海域:
紀伊半島沖熊野灘(別紙 図1参照)
·概要:
別紙参照

※1国際深海科学掘削計画(IODP: International Ocean Discovery Program)

平成25年(2013年)10月から開始された多国間科学研究協力プロジェクト。日本(地球深部探査船「ちきゅう」)、アメリカ(ジョイデス・レゾリューション号)、ヨーロッパ(特定任務掘削船)がそれぞれ提供する掘削船を用いて深海底を掘削することにより、地球環境変動、地球内部構造、地殻内生命圏等の解明を目的とした研究を行う。

別紙

「南海トラフ地震発生帯掘削計画」
及び国際深海科学掘削計画(IODP)第365次研究航海について

1.「南海トラフ地震発生帯掘削計画」の目的

「南海トラフ地震発生帯掘削計画」は、巨大地震や津波の発生源とされるプレート境界断層や巨大分岐断層を掘削し、地質試料を採取するとともに、掘削孔を用いて岩石物性の計測(検層)及び地殻変動の観測(モニタリング)を実施することにより、断層の非地震性滑りと地震性滑りを決定づける条件や南海トラフにおける地震・津波発生メカニズムを解明することを目的としています。

2.「南海トラフ地震発生帯掘削計画」の全体概要

本計画は、全体として以下の4段階(ステージ)に分けて実施し、紀伊半島沖熊野灘において南海トラフに直交する方向に沿って複数地点を掘削する計画です。(図2参照)

ステージ1(平成19年度の第314、315、316次航海):終了

巨大分岐断層やプレート境界断層の浅部などで掘削を実施しました。地層の分布や変形構造、応力状態など、過去の地震時に動いたと考えられる断層の特徴を把握しました。

ステージ2(平成21年度の第319、322次航海、平成22年度の第332、333次航海及び本研究航海)

地震発生帯の直上浅部の地層、及びプレート運動により将来地震発生帯に持ち込まれる海底堆積物を掘削し、その地質学的特徴の把握や地層温度の計測を行いました。また、掘削孔内に長期孔内観測システム(LTBMS:図3参照、以下「LTBMS」)を設置し、地殻変動の観測を継続しています。このLTBMSは平成25年1月に実施された海洋調査船「かいよう」での調査航海により、地震・津波観測監視システム(※2、以下「DONET」)に接続されました。本研究航海では、平成22年度に実施した第332次航海で設置された簡易型孔内観測装置(Genius Plug:図4参照、以下「Genius Plug」)を回収し、新たにLTBMSを再設置します。

ステージ3(平成22年度の第326次航海、平成24年度の第338次航海及び第348次航海)

地震発生帯を目指した超深度掘削を実施中です。巨大地震を繰り返し起こしていると考えられる断層の地質試料を採取・分析することによって、地震発生現場の地質学的特徴を把握します。

ステージ4

地震断層やその周辺の地殻の微小な変動を長期的に観測するため、超深度掘削孔にLTBMSを設置します。将来的には、DONETと接続し、地震発生現場からリアルタイムでデータを取得する予定です。

3. 第365次研究航海の掘削作業概要

C0010A孔(図12参照)において、平成22年度の第332次航海で設置したGenius Plugを回収し、孔井を現状の555mから656mまで掘り増しした後(101m掘進)、LTBMSを設置します。

今回LTBMSを設置し、地殻内流体の圧力・温度変化や傾動を計測することにより、津波発生とも関連する巨大分岐断層近傍での詳細な地殻変動を捉えるとともに、歪みエネルギーの蓄積状態や地震活動の観測も行うことが可能となります。本航海により設置するLTBMSは、将来的にはDONETと接続し、リアルタイムで孔内観測データを提供する予定です。

4. 第365次研究航海研究チーム

共同首席研究者(以下2名)

 Saffer, Demian (米 ペンシルベニア州立大学 教授)

 Kopf, Achim (独 ブレーメン大学 教授)

日本側研究者(以下5名)

氏名 所属・役職
荒木 英一郎 海洋研究開発機構 グループリーダー代理
町田 祐弥 海洋研究開発機構 技術研究員
小林 励司 鹿児島大学 准教授
木村 俊則 海洋研究開発機構 技術研究員
木下 千裕 京都大学 防災研究所付属地震予知研究センター
大学院生

及びIODP参加国から選考された3名の合計10名(3ヵ国)の研究者が乗船。

※2 地震・津波観測監視システム(DONET: Dense Oceanfloor Network system for Earthquakes and Tsunamis)

東南海地震を対象としたリアルタイム観測システムの構築及び地震発生予測モデルの高度化等を目指し、東南海地震の想定震源域にある紀伊半島沖熊野灘に設置した海底ネットワーク観測システム。従来の観測システムではなし得なかった深海底における多点同時、リアルタイム観測の実現を目的としており、一部の各観測装置からのリアルタイムデータは、平成23年3月より、気象庁及び防災科学技術研究所に送られている(全観測点からの送信は平成23年8月より開始)。

図1

図1 調査海域
和歌山県新宮市から南東約85kmの海域(北緯33度13分 東経136度41分)

図2

図2 掘削予定地点
C0001~C0012はこれまで「南海トラフ地震発生帯掘削計画」で掘削した地点であり、今回はC0010地点で掘削作業ならびに、長期孔内観測システム(LTBMS)の設置作業を行う。

図3

図3 長期孔内観測システム(LTBMS)概念図

図4

図4 簡易型孔内観測装置(GeniusPlug)概念図

国立研究開発法人海洋研究開発機構
(IODP及び本航海について)
地球深部探査センター 企画調整室長 花田 晶公
(報道担当)
広報部 報道課長 松井 宏泰
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